home
ブナ探索山行 第19回
飯豊連峰(福島/山形/新潟県)   スケールの大きなブナ林が随所に

豪雪地帯の山、飯豊連峰は山麓から中腹部にかけて豊かなブナ林を抱えている。
高山植物とダイナミックな縦走路が多くの登山者を惹きつける飯豊連峰であるが、ブナ林もすばらしいという側面にもっと注目が集まっても不思議ではない。豪雪地帯の山はブナ以外のスギやミズナラが育たず、雪と相性のいいブナが古来からこの山域の優占樹となってきた。



鏡山登山道のブナ巨木 [拡大]


弥平四郎登山口から鏡山へ

福島、山形、新潟と3県境にまたがったこの山塊は、その広大さからブナの森の占める面積も半端でなく、各山麓に名の知れたブナ林がある。山形県は「白い森の国おぐに」小国町の温身平や鍋越山付近、新潟は奥胎内の足の松尾根や十貫平など。
一方、福島県側も各所にある。飯豊の登山は川入から登ることが多く、その登山道でも多くのブナを見ることができるが、福島県側でスケールの大きなブナ林を上げるならば実川(大日岳の登路)、湯の平(北股岳への登路)、そして今回歩いた弥平四郎ルートということになりそうだ。

弥平四郎は西会津の小さな集落で、新潟と福島を結ぶ国道459号が近くを通っており、過疎地にしては登山としての交通の便はある。季節によっては磐越西線の野沢駅からデマンドバス利用での登山も可能である。しかし集落から林道に入って4kmほど、登山口の祓川まで来るとそこはもう深い森だ。駐車場の標高は680mにして、周りはブナばかりである。

鏡山の登山口には番人のように立つブナ巨木があった。上ノ越までは急登が続くが、ミズナラが主の痩せ尾根でもブナは多い。巨木もあちこちに見られ、深山の趣がある。飯豊の各登山口から稜線に至る登山道はどこも険しい。ここは急であるけれども他よりはずっと登りやすく感じる。
上ノ越で三国岳、疣岩山からの稜線に出る。南方の鏡山に行く道は細かなアップダウンが多い。この1200m前後というのは飯豊ではブナにとって居心地のいい標高のようで、ブナ林が発達している。豪雪地帯のブナ林帯としては意外と高い気がする。ただ痩せ尾根であるためかヒメコマツやツツジも生育していた。


紅葉進む弥平四郎登山道のブナ林 [拡大]


ブナの密度高い祓川山荘付近
鏡山から先も登山道が伸び、高陽山へ通じているようだ。「ブナの山旅」の坪田寿人氏が訪れた1990年ごろはまだ踏み跡もはっきりしなかったようだが、今は登山道も敷かれ歩かれているようだ。
上ノ越から巻岩山にかけては標高が上がり、ミヤマナラやオオカメノキ、ミネカエデなどの低木帯となる。

この一帯のブナ林の白眉はやはり、松平峠から秡川にかけての斜面である。至る所でブナの純林が成立していた。のびのびと生育し、巨木も多い。
秡川山荘付近の沢沿いの平坦地は一面ブナの森になっており、どこまで広がっているのかわからないくらいだった。

今回歩いた弥平四郎ルートは、飯豊連峰の持つブナ林のほんの一部分である。小白布沢登山道には巨木ブナが多く、また三国岳以降の主稜線上にも標高1600m以内であれば、低潅木に姿を変えたブナがたくさん見られる。
飯豊山荘の前庭に植えられている(もとからあったのかもしれない)ブナはそう背も高くなく、建物の2階に上がると、窓越しに林冠に種子をいっぱいつけた様子が間近に見られた。



2018年10月13日(土) 探索
ルート:弥平四郎登山口-上ノ越-鏡山-巻岩山-疣岩山-松平峠-祓川山荘-弥平四郎登山口




標高の低いところはまだ緑が優勢

下部はまだ緑濃い

豊かなブナ林(鏡山への登路)

豊かなブナ林

登山道はほとんどがブナの落ち葉で埋め尽くされていた

ブナの落ち葉

白い枝を四方に広げる

白い枝

巻岩山への稜線を見上げる

稜線で展望

松平峠下の重厚なブナ林

深いブナ林

老齢の巨木も点在

巨木も

夏の小白布沢登山道。巨木が多い

小白布沢登山道(夏)

6月の足ノ松尾根(えぶり差岳への登路)。白いブナが印象的

足ノ松尾根(初夏)

梶川・丸森尾根の登山口にある飯豊山荘から。2階に上がると庭のブナの林冠がよく見え、種子を成長させていた

飯豊山荘から(夏)