ブナ探索山行 第17回
尾瀬(福島/群馬/新潟県) 会越の豊かな自然を育む水源
尾瀬は広大な山上湿原や高山植物のイメージが強いが、ブナ林もすばらしい。
この山域は広く見れば、群馬県はみなかみ町湯の小屋、新潟県の魚沼、福島県の檜枝岐、さらには奥日光の山と接続しており総面積はかなり広い。多くは湿原となっているがその周囲にはブナをはじめダケカンバ、シラビソなど随所にある樹林帯がいいアクセントになっており、尾瀬の個性的な景観を形作っている。
尾瀬のブナ林はだいたい標高1500mより下で見られ、場所で言えば鳩待峠~山の鼻間、裏燧林道、小沢平、ブナ平、咲倉尾根、富士見平から竜宮十字路にかけての樹林帯、などとなる。
燧ヶ岳の東斜面に広がるブナ平は大昔、燧ヶ岳が噴火したことによって出来上がった溶岩台地の上に成立したと言われる。ここには御池古道と沼田街道という2本の歴史ある歩道がつけられており、登山道として歩くことができる。
今回は七入の駐車場に車を停めその御池古道を登ることにする。
なお、御池古道~裏燧~尾瀬沼のルート詳細は
一般のページに記している。
御池古道・ブナ平のブナ [拡大]
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ブナ平の御池古道
御池古道はバス停側にあり、「尾瀬自然観察の森遊歩道」の標識に従って入山する。100mほどの伐採地を過ぎるともう深い森である、すぐにブナの大木と幼木が並んで生育していた。
その先もブナ林が続く。枝は低い位置から出ており大きな葉をたくさん茂らせている。久しぶりに見る日本海型のブナである。ネズコと思われる針葉樹が現れ、ミズナラとともに背の高い巨木ばかりが目立つが、ブナは巨木から稚樹までバラエティがあり、この森の優占樹であることがわかる。
モーカケの滝から先も歩きやすい道が続く。鞍部ではブナの密度が増し、純林のようなところもある。
車の音が大きくなったと思うといったん車道に出た。すぐまた登山道に戻るが、以降しばらくは車道に沿う平坦な道が続くこととなる。
御池と沼山峠間のバスから見下ろすブナ平はだだっ広い平原なのだが、御池古道はブナ平のへりをなめるようにつけられており、あの広大なブナ原生林の真ん中を歩いているわけではない。沼山峠と七入を結ぶ沼田街道もブナ平の南東面側を回り込むようにつけられている。ブナ平には中央にモーカケ沢という谷筋が通っているので、ここを横断するには沢を渡るか、または残雪期に道なき道を歩くことになる。たやすくはこの深い原生林に入れないことがわかった。
それは残念だったが、ブナ平は端っこを歩いていても十分に原生の森の深さを味わうことができた。登山道としては遊歩道並みで変化に乏しく物足りなさはあるのだが、樹林をじっくり見るにはこういうほうがいいだろう。
尾瀬の登山道としては珍しく、木道がほとんどないのもいい。
裏燧林道と只見川沿いのブナ林
御池登山口から「裏燧林道」を歩く。いくつかの湿原を縫って西に進んでいくといくぶん高度が下がり、ブナの多い道となる。今は通行止めとなった渋沢温泉小屋跡への分岐を過ぎたあたりからブナがいっそう増えてきた。
威圧するような巨木や老樹は見当たらないが、スラリとした白い木が多く、稚樹もよく生育している。
風が吹くと、あちこちでポトポトとブナの実の落ちる音がする。落ち葉をかき分けて探すがなかなか見つからない。ブナの実は殻斗が割れて中身だけが地面に落ちるのて、枯葉に隠されやすい。
三条の滝分岐から三条の滝に下り、只見川沿いの登山道を行けばさらにブナ林に囲まれた山行ができそうだ。今回は時間の関係で段吉新道のほうを下るが、只見川付近のブナ林もすばらしいらしい。奥只見湖に通じる自然豊かなこの川一帯はブナの宝庫であり、浅草岳、御神楽岳、日尊の倉山など多くのブナ山を抱えている。只見川の源流は尾瀬であり、三条の滝や平滑の滝を経て川となっていく。
会津地区で阿賀川(阿賀野川)に合流し日本海に流れ出る。越後や会津の豊かな自然はこの尾瀬の水ではぐくまれたと言っていいかもしれない。
小沢平からの道を歩いてみたいのだが、渋沢温泉小屋が廃業となって以来、登山道の手入れがなされず、川に橋がかかっていないため渡渉が必要となっている。
歩けないことはないらしいが、やはり一般的な登山としてブナ林を見たいため、川に橋がかかることを期待したい。
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2018年9月23日(日) 探索
ルート:七入-御池古道-尾瀬御池-裏燧林道-元湯山荘-見晴-尾瀬沼(沼尻)-沼山峠
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