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ブナ探索山行 第26回
天水山(新潟/長野県)   多雪地域のブナ林は白く整然と

信越トレイルは新潟県と長野県の県境につけられた縦走ルートで、起点・終点は天水山と斑尾山になる。多雪地帯で標高1000m前後の尾根道が続くため、ブナの生育には適地となる。
トレイルを縦走したことはなく、一昨年の秋に関田山脈の鍋倉山、そして天水山に単独で登った。いずれもブナのすばらしさに心を打たれる山だったし、また登降に長い時間を要しないため、手軽にブナを見られる山として価値が高い。
しかし、いかんせん東京からは遠い。
今回の全体山行記録は一般のページに記している。

残雪上の踏み跡を拾いながら

今回の天水山は2度めの登頂となる。信越トレイルの起点となっているためアプローチの林道もしっかりしているのだが、新緑の早い時期はまだ残雪があり、林道は車で上がれない。松之山登山口まで車が使えるのは、例年ならもう緑の濃くなり始める時期だろう。
今年は雪解けが少し早いようで、登山口の手前50mくらいまで車で入れた。


新緑眩しい天水山 [拡大]

登山口に入ってすぐ登りとなる。残雪の斜面に、ブナはすぐに現れる。というかブナ林以外の植生が周囲にはない。樹皮の白い、スラっとした姿が特徴の、日本海型のブナである。
一瞬人工林かとも思ってしまうくらい、木々は斜面上に整然と、等間隔に近い形で立っている。大木も若木もあり、原生の姿が残されている。

主稜線に上がるとブナのバリエーションは増し、あらゆる世代の木が気ままに伸びていた。イワカガミ、イワウチワといった、春のブナ林を象徴する花も咲き続いている。腰から上の位置にはユキツバキ、タムシバ、オオカメノキと木の花も盛んだ。

天水山山頂から西へ、信越トレイルの縦走路に少し入ってみる。隣りのピーク、西ノ峰までは深いブナの原生林となっており、残雪も多い。気づきにくいが天水山は双耳峰であり、西ノ峰は西側のピークである。
ブナの海は信越トレイルの反対側にも続いている。松之山登山口より東側には津南登山口があり、林道をさらに東に進むと山伏山という山がある。無印良品キャンプ場の裏手の山であり、ここもまたブナ林がすばらしいらしい。
今回は到着した時間が遅かった上、林道がまだ雪に覆われていたので山伏山には登らなかった。
また、主稜線に上がった地点から東側の尾根道を進むと、1043mピークを経て南麓の森宮野原駅(飯山線)に下山できるようである。

オトシブミとなった若葉
気温の上昇で残雪が溶け、雪圧でひれ伏していたブナがどんどん起き上がり始めている。周囲の新緑の木々とは流れる時間が違い、それらは今が芽吹きの時期である。出てきたばかりの葉は瑞々しく、柔らかい。そして産毛でおおわれている。

小さく畳まれたり、クルクルと巻かれたり [拡大]

それらをよく見ると、葉が小指程度の大きさに小さくたたまれて、枝についているものがあった。意識して初めて見たことになるが、オトシブミというものだろう。小さな虫が葉を器用に畳み、中に卵を産みつけるという。
同じ枝に、畳まれている途中のものもあり、葉を裏返してみると黒い小さな虫が這っていた。それも葉1枚ごとに1匹ずつついている。この小さな虫が、時間をかけて5㎝四方はあるブナの葉を1㎝に畳むとは面白い。

畳まれたもののほかに、単にクルクルっと縦に巻いて葉巻状になったものもあった。これはオトシブミになる途中のものか、それともハマキガというガの一種による仕業のものか、わからない。春のブナ林は虫こぶやオトシブミなど、いろんな虫の生活の現場が見られて興味深い。

天水山周辺はバードウォッチングの適地でもあるようで、この日もカメラを構えた人が登山口近くの林道に何人かいた。キョロロ・・・とさえずるアカショウビンが人気の様である。そういえば今回登った天水山や当間山でそのような鳴き声をよく聞いた。



2019年5月25日(土) 探索
ルート:松之山登山口手前の除雪地点-稜線-雨水山-西ノ峰(往復)





トイレのある松之山登山口。この少し手前まで車が入れた

松之山登山口

標高900mあたり。根明けの進んだブナ林

根明けのブナ

発芽したてのものもよく見られる

モヤシ発芽も

稜線のブナ林

稜線のブナ林

ずっしりとしたブナの大木

大木

豪雪に磨かれたか、樹皮の白いブナが多い

樹皮は白い

ユキグニミツバツツジ

ユキグニミツバツツジ

稜線に立つ巨木

稜線にて

登山口からすぐのところにある巨樹

斜面

芽吹きまもない新葉

芽吹きまもない新葉

幹回り270cmの巨木

幹回り270cm