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ブナ探索山行 第25回
奥多摩・都県境尾根(東京都/埼玉県)   尾根通しに大木がズラリ

東京と埼玉の県境、東西に伸びる尾根でを広い意味で都県境尾根と言う。
雲取山から発するこの長い尾根は東端の棒ノ嶺~黒山~小沢峠に至るが、一般には三ツドッケより西の部分を長沢背稜、東側を都県境尾根と呼び分けている。天目尾根と呼ぶ人もいるようだが、あまり一般的ではない。一帯は東京都の管理する水源林道として維持管理されてきた。
ここでは長沢背稜も含めた都県境尾根をブナ100としてとり上げる。
今回の全体山行記録は一般のページに記している。


尾根側に細い枝を伸ばしているブナが多い [拡大]


尾根上の薄い踏み跡を辿る

都県境尾根は標高でいうと雲取山の2000mから小沢峠の400mまで、かなりの幅があるが、ブナの生育するのはだいたい標高上限が1700m、下限が1300mあたりまでとなる。山で言えば酉谷山から日向沢ノ峰、踊平付近までだろう。もっと下にあってもよさそうだが、まだ確認できていない。

川苔山周辺は標高的にはブナがあってもおかしくないが、見られないのはおそらく過去に伐採があって、その後他の樹種が優占したのではないか。
赤杭尾根にブナノ山という小ピークがあるらしいが、これも確認していない。
一方、日向沢ノ峰から有間山に向かう埼玉県側の1200m前後の尾根筋は、ブナが見られる。

今回は三ツドッケから蕎麦粒山までの間を歩いた。登山道は尾根の南側を巻いている部分が多く、ブナが見られる場所は限られる。
しかし、薄い踏み跡のある尾根通しを歩いてみると、そこはブナばかりの深い森だった。登山道とそう離れてはいないのに、雰囲気はかなり違う。
特に多いのは棒杭ノ頭付近から仙元峠にかけてだ。尾根上も多いほか、尾根北側に緩やかな鞍部地形となっているところがあり、そこにも多くのブナが密集する。仙元峠から埼玉の浦山大日堂に下山するルートがあり、これも上部はブナが豊かであることが、仙元峠からもよく見える。



枝抜けも見られる [拡大]

若いブナも生育

都県境尾根のブナの姿を観察すると、稜線北側の縁に根差して、長い枝を南側に伸ばしているものが多い。北側は風の影響で枝が発達しないのだろうか。または、北側は急斜面のため、枝葉をつけても落ちた種子が成長しにくいことから、比較的穏やかな南斜面を狙っているのかもしれない。こういう樹姿は他の山でも結構見られる。

他の特徴としては、太平洋側としては細い(若い)木が多いことだ。直径10㎝くらいの、まだ枝も多くつけていないブナがあちこちに伸びている。三頭山や伊豆の山で見られたように、後継樹が育っていないわけではないようだ。
ただ、大木の幹を見ると枝が抜けたような穴が目立つ。そのため内部がウロ(空洞)になった木が多い。一度伸ばした枝が何かしらの事情で折れたか、枯れてしまったのだろう。

一方、三ツドッケから西側、長沢背稜の部分はどうだろう。ブナ生育に適した標高の上限である酉谷山付近までは、ブナ以外にも多くの樹種を抱えている印象だ。
雲取山から長沢背稜、都県境尾根への縦走は長いが、これほどきれいな新緑や紅葉が東京で見られるのは貴重なことである。



2019年5月18日(土) 探索
ルート:東日原-一杯水-三ツドッケ-棒杭ノ頭-仙元峠-蕎麦粒山-笙ノ岩山-川乗橋





柔らかな新葉

柔らかな新葉

ヨコスズ尾根もブナ巨木が多い

ヨコスズ

都県境尾根のブナ巨木

都県境

三ツドッケへの登りにて

三ツドッケ

都県境尾根は直径10cmに満たない細い(若い)ブナが生育

若いブナ

堂々とした枝ぶりの都県境尾根のブナ

枝ぶり堂々

枝が抜けたか、鳥の仕業か

ウロ

ピンク色のきれいな虫こぶは、おそらくブナハアカゲタマフシというもの(越後白山の項参照)

虫こぶ

都県境尾根は少ないが雄花も確認

開花もあり

笙ノ岩山付近のシロヤシオ

シロヤシオ