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ブナ探索山行 番外編
後山ブナ林公園(新潟県)   山でなくても見られるブナ林

太平洋側に比べると、日本海側のブナ林は標高のより低いところに分布している。特に新潟県は標高数100メートルくらいで成立するブナ林が随所にある。
「ブナ林へのいざない~新潟県ブナ林百選」(新潟日報事業社)には、山だけでなく丘陵地のブナ林も多く紹介されており、新潟県でブナと言ったら高い山のものではなく、もっと身近な存在となっているのがよくわかる。


今年最後のブナ林を見に、新潟魚沼へ足を伸ばした。下越の低山に行きたかったのだが、当日朝まで所用があったため山はあきらめざるを得ない。そういう時に山でないところにブナ林があるのはいい。兼ねてから訪れたかった後山ブナ林公園へ向かう。

後山ブナ林公園は関越道の六日町ICから西へ車で30分ほど行ったところにあり、住所としては南魚沼市市野江である。コシヒカリで有名な南魚沼の田園地帯から丘陵地へ入っていく。後山トンネルを抜けると広々とした棚田状の農地が広がっていた。民家の前庭には雪国ではよく見る屋根が丸っこい曲線をした倉庫が立ち並ぶ。短い坂を上がると時計台が印象的な後山小学校があった。建物の背後はもうブナ林で、赤茶色の衣をまとっていた。
六日町IC付近では大雨だったが、少し西にずれると嘘のように雨は上がった。

遊歩道沿いにブナがたくさん [拡大]


駐車スペースに車を置き、少し登ると杉の木が数本、その奥はもうブナ林になっている。道は遊歩道のように幅広だが、山で見るブナ林となんら変わるところはない。もちろん植林ではなく、自然に近いブナ林である。
ブナはみな、さっきまで降っていた雨で幹はしっとりと湿っている。こういうブナの姿もいいものだ。
持ってきた案内板のコピーを手に、遊歩道を一周してみる。一帯はそれほど広い場所ではなく、ものの5分程度で一番高いところに登りついてしまう。そこは意外にも崖状になっていて、眺めがよかった。駐車スペース付近で標高はすでに500mくらいだが、一番高いところでも標高10mくらいしか登っていない。

ブナはすらっとした高木が多い反面、一番太いもので胸高直径1m弱と、それほどの老樹は見当たらない。地面は茶色のブナの葉で敷き詰められ、その葉を少しどけてみるとたくさんのブナの実が殻と一緒に落ちていた。茶色がかった黄葉に混じってハウチワカエデの鮮やかな赤が眩しい。
普通なら10分くらいで一周できてしまいそうな遊歩道を、30分以上かけて入口まで戻ってきた。ブナの梢越しに後山小学校の時計台が覗く。日の傾き始めた西の空には、ようやく青空らしきものも見えてきた。
小さいブナの森だったがその中は別の時間が流れているようだった。



後山小学校の裏にある


新潟にはこのような小さなブナの山がいたるところにある。先に紹介した新潟ブナ林百選の本に、この後山ブナ林公園は実は掲載されていないのである。
ここからならさらに二六公園や松之山の美人林などもそう遠い距離ではない。美人林は標高200m程度のところに端正なブナ林が発達していて、観光スポットとなっている。このあたりは低地でも積雪が多く気温が低いので、ブナが生育しやすい状況になっているようだ。

また、下越村上市の臥牛山にある「お城山のブナ林」の標高は135m。標高の低いブナ林として学術的にも貴重な場所とされている。山に登らないで歩けるブナ林がしかも車道沿いにあるとは、太平洋側に住んでいるものにとってはうらやましい限りだ。
今日はもう日没近いのでこれで帰るしかないが、新緑の時期にこれら平地のブナ林も、ブナ100名山への訪問とは別に楽しんでみたいものである。


2018年11月10日(土) 探索
現地までのルート:練馬IC-[関越自動車道]-六日町IC-[国道17号,県道58号]-後山ブナ林公園





県道沿いの民家には雪の多い地にある造りの建物が建つ

豪雪の地

ブナ林公園に入ると、木の間から後山小学校の建物が見える

学校の裏山

遊歩道には植物名を記した表示がある

説明書きあり

地面は紅葉した落ち葉で染め上げられている

秋色の路面

落ち葉をどけるとブナの殻や実がたくさん落ちていた

ブナの実

遊歩道の傾斜はこの程度

緩い登り

標高は低くても、雪の重みで根元曲がりした木も

根元曲がりも

上部に来ると眺めが開ける

展望地あり

黄葉したハウチワカエデ

ハウチワカエデ

ブナらしいきれいな樹皮 [拡大]

きれいな模様

紅葉残る

紅葉