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ブナ探索山行 第23回
番屋山(新潟県)   水面に映るブナの山肌

番屋山は、八十里越えの新潟側の起点となる吉ヶ平(よしがひら)が登山口になっている。林道を歩いていくと、番屋山の登山道と八十里越えとの道とが分岐しており、そこには八十里越えのシンボルともいえる石標が立っている。
八十里越えは新潟県の三条市から福島県の只見町を結ぶ街道であり、吉ヶ平はかつては宿場町として人々の往来もあって、越後と会津の文化交流の場として賑わいを見せていた。

番屋山の山行記録は一般のページに記している。


番屋山山頂付近から雨生ヶ池を見下ろす [拡大]


伝説の雨生ヶ池

現在は新潟と会津を結ぶ幹線道路は他の国道にとって代わり、八十里越えは廃れてしまった。それでも、登山道に準じた峠越えの道として、数少ないながらもコアな登山者を迎えている。
目下国道289号が新八十里越え道路として建設中であるが、開通は大幅に遅れている。

守門岳と浅草岳を背にして歩く道はブナの宝庫であることは間違いない。ブナ100として間違いなく入れたいのだが、険しい道と聞き、交通の便も悪いので自分で歩けるかどうかわからない。
ここは八十里越えの代わりということで、今回歩いた番屋山をブナ100に挙げておくことにする。番屋山には雨生ヶ池という深いブナ原生林を抱えている。

雨生ヶ池は大蛇が住むという伝説のほか、「この池に金属を投げ入れると大雨になる」という雨にまつわる言い伝えがある。水面に映るブナの木々とあいまって、その神秘的なたたずまいが印象に残るブナ林である。

池のほとりを起点に、水面のブナを見ながら進む。奥に進むにつれ立派なブナが何本も現れた。かなり太いのもあって、もうかなりの樹齢のようだが新緑の葉をいっぱいにつけ、元気そうである。
大木をメジャーで計ってみると、幹回り4m10cmだった。池の入口にはもっと太い木があったのだが、もうぼろぼろになっており寿命尽きる寸前で、計ることはしなかった。



樹皮の美しい白ブナ [拡大]


そうした何本かの老樹を除けばここには壮年層の木が多く、樹皮は白くスラッとしている。前の週に見た伊豆山稜線歩道のず太いブナがまだ脳裏に焼き付いているので、よけい日本海側のブナが白く、気高い印象を受ける。

まさに若葉色をした葉も美しく、人間の手のひらに近いくらい大きい。伊豆のブナの3倍はある。太平洋側と日本海側のブナ、本当に同じ樹種なのか。遺伝子解析すると同じものなのだろうが、いつものことながら疑問に思ってしまう。

雨生ヶ池のブナ林は小さいが山深く、秘境の雰囲気を感じた。番屋山は県道が開通する6月以降、紅葉の時期まではそれなりに入山する人もいるようだが、他の新潟の山に比べればずっとマイナーな部類に入る。
こんなところだから、今日こそは絶対熊に会うかもしれないと半ば覚悟してきた。八十里越えの会津までの道はずっとこんな道が続いているのだろうか。想像が膨らむ。



2019年5月4日(土/祝) 探索
ルート:遅場-吉ヶ平-雨生ヶ池-番屋山(往復)





遅場からの県道を40分ほど歩くと、ようやく番屋山が見えてくる

県道から番屋山

吉ヶ平山荘

吉ヶ平山荘

雨生ヶ池沿いの登山道

池を見ながら

ブナの大きな若葉がまぶしい

若葉まぶしい

幹回り410cmの巨樹

巨樹

空に向かって伸びやかに枝を伸ばす

伸びやか

番屋山山頂から、守門岳を望む

山頂から

ブナの大木の根元にイワウチワが咲く

イワウチワ咲く

ブナの白い樹肌と萌黄色

新緑の森