玉原(たんばら)高原はスキーなどウインターリゾート地として、また小尾瀬とも呼ばれる玉原湿原の高山植物で多くの観光客を呼び込んでいる。
また、ブナを中心とした広葉樹の森も見事で、ブナ平から尼ヶ禿山、鹿俣山への登山ルートはブナの精に触れることのできる白眉のコースとなっている。関東のブナ林の名所と言えば、玉原高原は間違いなく3本の指に入る。
今日は午前中に武尊山の田代湿原でブナを見てきたので、そのついで(といってはあまりにも距離が離れているが)に玉原にも寄っていこうと思った。
みなかみ町の「奥利根湯けむり街道」から、その玉原高原の山をぐるっと回り回って沼田市に入る。再び高度を上げていき、田代湿原から1時間半かけて登山口のセンターハウスに到着する。
歩き出しは15時を過ぎてしまった。時間が時間なのであまり長い距離は歩けない。
大木がひしめくブナ平
行く場所はひとつ、センターハウスからひと登りでブナ平である。紅葉シーズンに歩いて、もう10年以上経っている。緑の時期のブナ平もすばらしい。武尊田代と同じような濃密なブナ林が広がっていた。
名前の通り、ここは斜度のない広い台地上の樹林帯である。ブナは傾斜のある尾根筋や地盤のもろい場所よりも、こういう平坦地や鞍部を好むと言われるが、実際山を歩いていると、そういう場所はありそうでなかなかない。ブナ平はまさにブナ安息の地と言えるだろう。
また、ブナのほかにここにはミズメやシナノキの大木も多く、いずれも沼田の名木百選となっている。
ブナももちろん負けずと大木が居並ぶ。ブナ平の分岐点には幹周り330cmの巨樹が立ち、少し歩いたところにあるブナ地蔵にも、シナノキ巨樹と競り合うように堂々とした風格のブナが鎮座している。
ブナにしても他の木にしても、ブナ平に茂る樹木は背の高いものばかりで、葉や花の様子をじっくり観察することはかなわないが、どこまでも続いていそうな深い森は静けさに満ち、登山者にも安息の地を提供してくれている。時が止まっているような錯覚を覚える。
このまま鹿俣山なり、玉原越えから尼ヶ禿山に向かうのがいつもの登山コースなのだが、今日はここブナ平を最終到達点として、下山に入る。
雨季を経てブナ林は夏へ
水源ルートを下って玉原湿原経由でセンターハウスに戻ろうと思ったが、あいにく湿原の木道が整備中で通行禁止となっていた。そのため、玉原越え方向にいったん戻るように歩き、玉原湖沿いの管理車道に下り立つことにした。
途中の登山道には2次林ではあるが、樹皮の白いブナが林立していた。ここも見ごたえがある。
かなり遠回りになってしまったが、あたりの開けた車道を歩いたおかげでブナの林冠に実がなっているのを確認できた。また、この車道は玉原湖にかかる橋を通る。湿原に敷かれた木道からは玉原湖は見えない。また、ホオノキの花も初めて見ることができたのでこのルートも捨てたものではない。
玉原湿原の一角は木道の取替えが済んでおり立ち入ることができたので、寄り道していく。
コバイケイソウ、ワタスゲのほかオゼタイゲキ、ヒオウギアヤメが咲いていた。
オゼタイゲキはナツトウダイによく似ている。湿原を彩る花としては地味だが、尾瀬や玉原湿原くらいしか見られないそうでなかなか貴重なものを見れた。
ブナの葉も緑濃くなり、雨の時期も来た。薄暗い林床のもと、しばらくはブナに目立った変化は見られないかもしれないが、内部ではひたすら結実の作業と冬芽の成長が進んでいくのだろう。
一方、湿原には夏の花がそろそろ顔を出し始めている。夏山シーズンはもう、すぐそこまで来ているようだ。
センターハウスに戻ってきたのは17時を過ぎた。日の一番長い時期に入ったがもう薄暗い。駐車場にも自分の車だけになった。
今日は複数の湿原やブナ林を巡り、さすがに疲れた。望郷の湯で汗を流し帰京する。
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2018年6月8日(金) 探索
ルート:センターハウス-ブナ平-水源コース-管理車道-玉原湿原(入口)-センターハウス
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