2013年の山で印象に残ったのはやはり二王子岳、えぶり差岳(「えぶり」は木へんに八)に登れたことであろう。特にえぶり差岳はアプローチ方法や登り方(麓泊日帰りとか山中一泊とか)をどうするかなど迷いどころが多く、長年の課題だった山である。費用のかかる山行になってしまったが期待にたがわぬ山だった。今度は飯豊連峰縦走の最後の峰としてもう一度訪れたい。
他に八海山、聖岳・茶臼岳などが思い出深い。浅間隠山の紅葉も印象に残った。
山行回数や歩行距離は前年並みで、加齢による体力の衰えはマイカー利用によるアプローチの短縮で補った形となったようだ。
今年最後の山は31日、外秩父の破風山(はっぷさん)をちょっとひねったルートで登った。
破風山は小さい山にもかかわらず四方から登山道が伸び、またあまり知られていない昔からのコースもいくつかある。山頂からの展望もよく登って飽きない山だ。
今回は、破風山の西にある西立沢(たつざわ)集落から登る。東西に尾根を伸ばす破風山だが、ハイキングコースとして整備されているのは天狗山までで、それより西側は謎だった。西立沢集落から明瞭な尾根筋が伸びているので、道はあるだろうと思ってはいたところ、ここを歩いた記録がネットで見つかった。西立沢バス停からスタートし、小峰山という山を経て天狗山に接続するものである。参考にさせてもらった。
西立沢から尾根に至る登りには道はないらしい。何もこんな大晦日にヤブ山に登るのもどうかと思うが、普段休日も働いているハンターさんもさすがに家でゆっくりしているだろう。道のない山を歩くのにはいい機会である。
西立沢から右方の小峰山~破風山の山稜目指して坂を下って行く |
皆野駅から歩いて2分ほどのバス停から、日野沢線の路線バスに乗る。終点が西立沢である。
城峯山の登山口である西門平で下車しなかったので、運転手さんにどこで下りるのか、と聞かれた。西立沢から破風山に登ると言ったら、そんな道あるのかなあと言っていた。地元の人もあまり知らないようなので、やはり最初は道がなさそうだ。
西門平から少し標高を下げた、見晴らしのいいところに西立沢バス停があった。展望台をかねたあずまやがあり、武甲山の三角形がいい形で見えている。
バス停前から東に伸びる坂を下る。突然民家の犬が何頭も吠え出す。年の瀬の静かな山村を、朝っぱらから歩いている人を警戒しているようだ。破風山に続く尾根は右手に見えており、取り付きまでは舗装された林道をかなり下ることになる。
阿熊川の流れを耳にし、城峯山キャンプ場に続く道にいったん合流し、すぐ左横の小道に入る。この林道は小前集落に続いているようである。右側の植林帯の斜面を登っていくことになるが、なるほどどこにも道はない。緩やかそうなところを狙って取り付くが、それでも途中までは両手を使うような急登が続く。ヤブっぽくないのが救いだ。
15分ほど悪戦苦闘ののち、左から薄い踏み跡が伸びてきているのに気がつく。さっきの場所で取り付かずもう少し林道を上がり、小前近くまで行けばわかりやすい取り付き口があったのかもしれない。
やがてピンクテープも見つけ、若干尾根状になった斜面を登る。取り付きから30分ほどで傾斜が緩くなり、510m圏のピークに着く。片側が雑木林で、枝越しに麓の民家が見下ろせる。ここからは薄いなりにも踏み跡を辿っていけそうだ。
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雑木林の尾根 |
破風山山頂。北側の木が一部伐採され眺めがよくなった
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北面が開けた |
破風山山頂は南面が大きく開けている。荒川の流れる秩父盆地を前景に、右から武甲山、武川岳、二子山、刈場坂峠などのピークが連なる [ さらに拡大 ]
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南面のパノラマ |
風戸(ふっと)集落は破風山を取り囲む山上集落のひとつ
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風戸集落 |
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いくつかのコブを越えていく。樹林の間から武甲山など秩父、奥多摩の山のシルエットが横たわっている。一方北側の眺めも悪くなく、610m圏と思われる石積みのあるピーク付近では城峯山の大きな山体があますところなく見えた。
ところどころ岩交じりだったり、潅木を手で払っての登り下りが続く。少し暗がりになった場所に小峰山の山名標識が立ち木にかかっていた。三角点があるが展望はない。小休憩して先に進む。
尾根はこれよりもう1本北側にある小前からの尾根と天狗山で合流するようだ。植林の急な坂を下り、いったん明るい鞍部に出ると再び下った分を登り返す。整備された登山道ではなく、けっこう急である。植林を抜け出してヤセ尾根を進むと、前回使った小前からの道が上がってきた。自分が今歩いてきた道は木で通せんぼがしてあった。
このすぐ先が天狗山の山頂だった。樹林に囲まれているが、木の枝を透かして山が見える。東に大前山、さらにその向こうに破風山らしき山がよく見え、意外に遠いと感じる。
ここから先は破風山登山道として整備された道になる。ヤセ尾根や鎖のかかった岩場もあるが、ほどよいスリル感のある楽しい道である。
天狗山から急降下の後、大前からの道を合わせる。鎖で岩場を登ると奥秩父の甲武信岳方面がよく見える。大前山、左右がきれ落ちた稜線を通過して鞍掛山、もうひとつ鎖場を通過する。随所で眺めが開け、両神山や二子山も遠望できる。
ニョッキリを過ぎると登山道もはっきりして、登山者も見るようになる。アシビの多い登山道を下る。12時の村内音楽が聞こえてきた。
やがて札立峠に到着。古い石標とお地蔵様を見て、破風山に登り返す。もともと展望のいい山頂だが、北側の樹林の枝が切られてさらに眺めが広がった。
南面は甲武信岳をはじめ奥秩父から奥多摩・奥武蔵の山々がパノラマだ。眼下に広がる秩父盆地や荒川の流れもくっきりとしている。風もなく気持ちのいい山頂だ。大展望を前にゆっくりと休憩する。
風戸(ふっと)方面へ下山する。猿岩を経て「山靴の道」への尾根道を分ける。西立沢から登ってこの山靴の道コースを歩けば破風山を西から東へ完全縦走することになり、充実した歩きができるだろう。今日のところは温泉に惹かれて秩父温泉に下る。
ヒカゲツツジ(花期は4月下旬から)の北限地と言われる風戸集落ののどかな佇まいを見ながら秩父温泉へ下る。町営の温泉は火曜日が定休日だったためやっていなかった。満願の湯のほうは平日のため料金が少し安かった。
今日は大晦日でさすがに人は少なく3人くらいに会っただけだったが、麓の温泉は家族連れ含め、大いに賑わっている。身を切るような寒さの中入る露天風呂が絶妙に気持ちいい。静かな山里のお湯につかって今年の山を締めくくった。