山の写真集 > 日本アルプス > 立山から薬師岳、黒部五郎岳
タイトル
五色ヶ原-スゴ乗越-太郎兵衛平-黒部平-双六
山域北アルプス
地域富山県、岐阜県
標高立山(雄山)(3003m)、越中沢岳(2591m)、薬師岳(2926m)、北ノ俣岳(2662m)、黒部五郎岳(2840m)、三俣蓮華岳(2841m)、双六岳(2860m) 他
標高差581m(室堂~雄山)
山行日2011年8月4日(木)~8月9日(火)天気1天気2天気3天気4天気5天気6
沿面距離1日目:8.1km、2日目:6.4km、3日目:7.4km、4日目:11.5km、5日目:5.8km、6日目:12.0km
歩行時間1日目:6時間25分、2日目:4時間20分、3日目:5時間15分、4日目:6時間30分、5日目:3時間35分、6日目:4時間50分
宿泊五色ヶ原、スゴ乗越、薬師峠、黒部五郎小舎*、双六池(*のみ小屋泊、他テント泊)
温泉中崎山荘(新穂高温泉)
交通高速バス、富山地方鉄道、ケーブルカー、路線バス、中央線特急
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晴れのち雷雨
5:40薬師峠
6:00太郎平小屋6:05
6:10太郎山6:15
7:30北ノ俣岳分岐
7:47北ノ俣岳8:00
9:08中俣乗越
9:352578mピーク9:40
10:45黒部五郎岳の肩
10:55黒部五郎岳11:15
13:00黒部五郎小舎
(小屋泊)


関連リンク
[記録]笠ヶ岳から薬師岳
立山黒部アルペンルート
濃飛バス
富山地方鉄道
太郎平小屋、スゴ乗越小屋
五色ヶ原山荘
双六小屋、黒部五郎小舎
北アルプス山小屋交友会


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北ノ俣岳山頂へ向かう、たおやかな稜線

8月7日(4日目)


薬師峠 (約2298m)
北アルプスの後半。4泊で下りたい思いも頭の片隅にあり、できれば黒部五郎小舎から先の三俣山荘まで行きたい。
ここから先は距離は長いが、今までのような大きなアップダウンは黒部五郎岳くらいだ。なだらかな稜線と高山植物の「ダイヤモンドコース」。今日中にどこまで行けるかは天気次第である。

太郎兵衛平へ
太郎山
雷鳥
ダイヤモンドコース
イワショウブ

太郎平小屋、太郎山 (2373m)
太郎平小屋を過ぎて太郎山に立ち寄る。富山側に広大な雲海が形成。またしても雷鳥を見る。
北ノ俣岳への道は木道が敷かれているが、雨烈状態だったり、ところどころ裸地化しているのが気になる。しかし高原状の緩やかな登りは気持ちいい。
イワショウブが咲くのを見る。これもどちらかというと晩夏の花である。

北ノ俣岳分岐 (約2630m)
2578mピークに上がると北ノ俣岳への緩やかな緑の稜線が目に飛び込む。
青空もいっぱいになってきたが、黒部五郎岳、薬師岳、水晶岳、赤牛岳といった名山は頂上が雲で隠されている。
北ノ俣岳へは雲上の楽園といった風情。ハクサンイチゲやチングルマの大群落がここにも。

北ノ俣岳 (2662m)
神岡新道への分岐を見ると、5分ほどで北ノ俣岳山頂に着く。ゆっくり展望を楽しむのは今日はここまでとなる。
緩やかな起伏の稜線。先月の北海道のようだ。北アルプスというと岩のイメージを強く持つ人は、雲ノ平~黒部五郎周辺 を歩くとここが北アルプスか、と思う。その中でもさらにこの北ノ俣岳あたりは一番北アルプスらしくない場所に映るだろう。

中俣乗越 (約2460m)
正面の黒部五郎岳は、山頂部が見えたり、雲に隠れたり。周囲もにわかに雲が多くなってきた。振り返ると北ノ俣岳にも大きな雲が。
中俣乗越で大人数の団体と行き交う。今日はどちらの方向も人通りが多い。
黒部五郎岳への長い登りが待っている。天気は持つだろうか。

黒部五郎岳の肩 (約2781m)
遠目から見るときついのぼりに見えたが、取り付いてみるとそうでもない。しかし何しろ、長いのでしまいには休み休みになる。
岐阜県側からガスがどんどん入ってくる。たちまちのうちに周囲は真っ白に。気温も下がってきた。岩の斜面を伝って、黒部五郎岳の肩に着く。カールを初めて見下ろす。下のほうは日が差し込んでいて明るい。


黒部五郎岳 (2840m)
ザックをここにおいて往復すればよかったのだが、疲れていたのか、そこまで頭が回らずに重いザックを担いだまま山頂への15分を登る。周囲に眺めはもはやない。
昨日の薬師岳同様、黒部五郎岳2度目の頂はガスの中だった。居合わせた人に頼まれて写真を撮る。眺めはないけれども、のんびりしたい気分だ。
肩へ下る途中、またしても雷鳥。今度はつがいとヒナの4羽である。これで今回6つの場所で雷鳥を見たことになる。 カールを下りはじめると、ポツ、とついにきた。すぐに止んだが、しばらくしてまた降り出す。
今度は本格的な降りのようだ。急いで雨具を出し上下着る。
たちまちのうちにどしゃぶりとなる。カールの底に着くと、すでに登山道が沢のような状態と化していた。
それでも、登ってくる人がいる。また、ひとり、傘をさして不安げにうろうろしている人もいる。雨具を持っていないのだろう。こんな状態で、これからいったいどうやって下山するのだろうか。
樹林のないむき出しの台地なので、雨をしのぐ場所は皆無である。

ハクサンイチゲ
チングルマ
黒部五郎への登りにて
カールの底
雨上がりの小舎

閃光、そして雷鳴が。急ぎ足になる。川のようになった登山道を早足で下る。下のほうに行けばダケカンバの小さな樹林帯があるので、とりあえずそこを目指す。
と、後ろのカールの上のほうでものすごい音と光が。近くに落ちたに違いない。振り向くこともできず、ただひたすら下る。何年かぶりのムシトリスミレも、立ち止まってじっくり見るわけにはいかない。
ようやく樹林帯に着く。雨脚が激しさを増し、ものすごい勢いで降ってきた。先に進むのがためらわれたため、傘をさしてその場で雨が弱まるのを待つ。
立ち止まって、15分ほどで雨は少し弱まる。樹林帯を抜け再びむき出しの稜線。高度を落すにつれ、雨もずいぶん弱くなる。ほっと一息といったところ。しゃにむに歩き続け、ようやく黒部五郎小舎が遠くに見えてきた。

黒部五郎小舎 (約2348m)
雷鳴に命縮まる思いだったが、どうにか黒部五郎小舎に到着。ベンチでラーメンを注文する。
雨はほとんど止んでいるが、大気はまだ湿っぽく、もうひと波乱ありそうな雰囲気。三俣山荘方面、長野側からはまだ雷鳴が轟く。先に進むか、ここでテントを張ろうか迷う。三俣山荘に向けて出発した若いグループもいた。
予感が的中、しばらくして再び大雨となった。テントを張ろうとしている人が小屋に逃げ込んでくる。30分位してもまだ降り続く。あきらめて今日は、ここの小屋に泊まることにし、素泊まりで申し込んだ。
三俣山荘を目指していたグループが戻ってきた。再びの大雷雨に危険を感じ、引き返してきたとのこと。
しかししばらくして、雨は止む。黒部五郎岳方向から、眩しすぎるほどの日差しが届く。大気の感触が一変した。もう降らないだろう。この天気の変わりようは信じられない。わかっていたら小屋でなくテントにしていただろう。でもこればかりはしょうがない。

濡れねずみになって到着する人はみな疲れきった表情。顔面蒼白の人も。よほど雷が恐かったのだろう。道も完全に川になっていたようで、沢下りをしてきました、と言う人もいた。
山小屋にはひとり、よく気の利く女性スタッフがいて好感触。切り盛りのうまい旅館のおかみさんのようだ。この日は布団1枚に一人。混雑はなかった。

ところで山小屋のことを話すとき、必ず最初に食事がおいしいかまずいかを口にする人がいる。そのことが山小屋の評価を果たしてあげたり下げたりするのだろうか。食事に期待して山小屋を選ぶ人がいるのだろうか、いつも疑問に思う。
自分の場合、費用を抑えるために山ではほとんどが自炊なので、あまり山小屋の食事をとることはない。たまに食べることがあっても、おいしいとかまずいとか、考えたことはない。むしろスタッフが限りある食材を、工夫して一生懸命作ってくれていることに頭が下がる。その日の天候や登山者の疲労度を推し量って、塩分などの調節をしているところも多いと聞く。

最近の山小屋は、従業員が毎年固定しているわけではないし、混雑の度合いによってサービスの質も変わるだろう。昨年おいしかった食事も、今年は口に合わないかもしれない。
でも1日山を歩いたあと、食卓にご飯が用意されているのはありがたい、というか贅沢過ぎると思う。こんな人も住めないような場所に家があって、一晩泊めてもらうのだということを忘れてはならない。山小屋は旅館ではないのだから。

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