~裏銀座からダイヤモンドコースへ、北アルプス展望と花の旅~ |
●頂上から稜線コースを下る ここから頂上へは、右手の草地の急登に取り付く。かなりきつい登りではあるが、背後に広がる展望はみるみる大きくなっていく。 最後は石が散在する場所を、落石に注意しながら登り切る。先ほどは見上げるくらいだった、あの大伽藍の縁に立つと、当たり前ではあるのだが反対側の岐阜・富山方面の展望が広がっている。眼下に太郎兵衛平、北ノ俣岳からの道が上って来ている。 石のガラガラしたハイマツ帯の道を登って行く。天空に上っていくような雰囲気である。 石の積み重なった黒部五郎岳山頂(2840m)からは360度の大展望であるが、今日は全体にもやのようなものがかかり、山々の姿ははっきりしない。穂高はぼんやりしていて、槍の先は見えない。 下りは稜線コースを行く。この道はあまり歩かれていないらしく、小舎の人も悪天候の時は薦めていないようだ。 しかし、どこから見ても特徴的なあの伽藍の縁を、1度は巡ってみたいものだ。歩き出すとすぐに、大岩の割れ目からさっきの雪渓を今度は上から覗き込む。その向こうには広大なカール地形が横たわっている。他の山では味わえない、ちょっと独特な眺めである。 黒部五郎岳は、こんな近くで見れば意外にも、普通のいかつい岩の塊である。 稜線の道は大岩が積み重なって、歩きにくい場所も多い。よいしょと体を持ち上げねばならない所も出てくる。ただ、数十mごとに岩に赤マークが印されているので、よほどの悪天候でなければ迷う危険は少ないであろう。 目立ったピークは2箇所のあり、2つめの2518m峰を越えればようやくはっきりとした下りとなる。振り返れば、黒部五郎岳は、雄大なカールを従えたいつもの姿で捉えられるようになっていた。 雪田を通り、テント場のような広い更地を経て高度を落して行く。かなり蒸し暑くなる。ようやく沢が現れ、冷たい水にありつく。傍らに、黄色いつやつやしたミヤマキンポウゲの花びらが鮮やかだ。
小舎でリンゴを買いほおばる。さてテントに戻ろう。朝下った道の登り返し。さっきは気づかなかったがキヌガサソウがたくさん花開いている。もう花期は過ぎている。 もやっとした展望の中を黙々と登り、三俣の巻き道へ入る。「残雪が溶けず夏道が出ていませんので矢印に沿って進んで下さい」とある。 平坦な巻き道が続き、北側がハクサンイチゲ、シナノキンバイの群落地となる。やがて雪渓を渡る。その後直進する道は通行止めになっていて、右へ行く道は三俣蓮華岳方向への登りとなる。巻き道なのに、山頂まで行ってしまいそうな急登で、最後に汗をかかされることになった。 三俣山荘に着いたのは14時過ぎ。展望レストランで生ビールとラーメンを注文する。山で生ビールが飲めるとは贅沢極まるが、中ジョッキ(というよりこのサイズは下界では小)が1000円と値段も相当のもの。 今日は黒部五郎岳から下るあたりから、高度2500mとは思えないほどの暑い1日になった。夕食時になるまでビールの量が増えた。 |