今年の雲取山は標高年ということもあって、ずいぶん人気があるようだ。雲取山荘も土日は予約でいっぱいになることもある。
また、登山人口の若年化で雲取山を一泊でなく日帰りで登り降りする人の割合も多くなっており、混雑に拍車をかけている。
雲取山山頂には、標高年記念の標柱が立つ。後ろは飛竜山
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自分も一度タクシー利用で鴨沢(小袖)から日帰りピストンしたことはあるが、標高1300mを超える行程はさすがにきつく、余裕がなくなってしまう。最近は甲武信岳を山梨県側から日帰りするケースも増えているようである。
日曜、月曜と6月にしてはかなり冷え込む予想だが、雨は降らなそうなので避難小屋泊の装備で出かけた。
奥多摩駅からのバスを留浦で下車。8分歩いて鴨沢から登る。小袖の駐車場は満杯、登山者がうようよいる。
登山道入口には、標高年記念の丸い大きなプレートが飾られていた。百名山にしては今まで地味な登山口だったので、このくらいがいいのかも。
登山道に入る。今日は6月とは思えないカラッとした陽気で、蒸し暑さがないので快適だ。その代わり蝉の声は全く聞かれず、鳥のさえずりも心なしか少ないようだ。
今日は日曜なので、前日に雲取山荘に泊まったと思われる人がどんどん下ってくる。早い人は8時にもう鴨沢の民家付近ですれ違った。おそらく4時台のご来光を山頂で見て、そのまま下ってきたのだろう。
それにしても下山者がひっきりなしに来る。水場から堂所、七ツ石分岐あたりまでで100人近く見たかもしれない。
登るにつれて空は雲が覆いはじめ、富士山は姿を見せていない。上部は新緑がまだきれいで、巻き道から奥秩父の稜線を見渡すあたりは葉の緑もまだ淡い感じだ。明日目指す飛竜山は頭に大きな雲を被っている。
ブナ坂に着く。登山者だけでなく、トレランやMTBの人も行き交う石尾根に入る。緑に染まる防火帯を歩くのは気持ちがいい。
南の空には高度2500mあたりに長大な雲の帯ができ、富士山は雲に隠れてしまっている。が、大気が乾燥しているせいか遠望がきき、かなり遠くの山でも山肌まではっきり見える。丹沢、奥秩父そして南アルプスもくっきりだ。晩秋から冬によくある眺めであり、今の時期は珍しい。
奥多摩小屋では500mlだけ水を汲む。避難小屋泊のときはここで1日分の水を担ぎ上げるのだが、今回は明日飛竜山への縦走を考えているために、2日分が必要となる。飛竜山の稜線には水場がないためだ。
そのため、今回は山頂に着いてから雲取山荘に下ってそこで水を得る。また山頂に登り返すことになるが、空身で往復できる上に山荘で飲み物も買える。
備忘録的に記しておくと、奥多摩小屋のほうは必ずしも飲み物を買えるとは限らない。この日ビールを買おうとしたら、売り切れだったと言っていた人がいた。
水を大量に担いでいないため、いつもより軽い装備でヨモギの頭から小雲取山への急登をこなす。それにしても今日は鹿をあちこちで見る。奥多摩の山域は増えすぎた鹿の頭数調整をしているとの話も聞くが、見る限りではさらに数は増している。
涼しく快適な中を登れたおかげで、雲取山へは正味4時間と少しの歩程で到着できた。山頂は涼しいを通り越して、寒い。小屋前の寒暖計は10度そこそこだった。
展望盤のある山頂部に行く。新しい山名標と標高年記念の木柱を初めて見る。「二千十七年記念」と書かれた木柱のほうは、見られるのはどうやら今年だけのようだ。
ザックを空にして、雲取山荘へ水を汲みに下る。土曜日は満員だったようだ。受付でビールを買い、水は6リットル汲む。これだけ涼しければそんなにいらない気もするが、明日の天気がどうなるかわからないため、念のため多めに持っていく。
ザックの重量は水分だけの6キロ少々だが、それでもけっこう重く感じる。
雲取山北面はシラビソなどの針葉樹林のしっとりした雰囲気がいいのだが、ここのところ倒木が目立つような気がする。そのため、芋木ノドッケや両神山の眺めが得られやすくなった。木の世代交代が進んでいないのか、気がかりなところである。
山頂へは30分弱で戻った。
日曜の避難小屋にはベテランさんや、すでに引退した年配の人がよく泊まりに来ている。土曜だとやはり若い人が多い。
ベテランさんの話は参考になることも多いのだが、うっかり付き合っていると結局は今まで山行の自慢話とかを聞かされ続けるはめになり、他の人が休んでいるのに自分だけいつまでも聞き役になっている。この日はこういうベテランさんが2人もいて、ちょっと参った。
時々外に脱出をする。厚い雲の帯から真っ赤な夕日が落ちてきた。甲武信岳、三宝山の稜線の右側、十文字峠付近に落日する。普段見えているのか気にも留めなかった御座山の丸い山体が、印象的なシルエットを形作っている。
冬であればもっとずっと南西方向の奥秩父国師ヶ岳付近に日は沈むが、日の長い時期だとこんな奥のほうに沈むのかと、あらためて季節による景観の違いを実感する。
夜はかなり冷える。外には鹿が何頭も山頂まで登ってきていた。5頭ほどいる。2つの目を光らせ闇の中を移動していくので不気味である。
食事もとっくに済ませ、することがないので早めに寝ることにする。