先週に続いて奥多摩の山へ足を運ぶ。シロヤシオは三ツドッケより高いところでも見頃を迎えただろう。
また、長沢背稜のシャクナゲはどうだろうか。雲取山へはもう何十回も登っているのに、ここのシャクナゲはまだ見たことがない。何と言っても、東京都で唯一自生のシャクナゲが咲くところだ。
天気もよさそうなので、山頂の避難小屋泊で奥多摩の最深部をぐるっと回ることにした。
新緑のグラデーションがきれいな石尾根
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奥多摩駅発峰谷行きのバスは、東日原行きに比べてそう混むこともないが、出発時には立ち客も出た。乗客の8割以上は峰谷まで乗っていた。
緑濃い谷間の道を歩き出す。朝から気温が高く、奥の登山口に着くころにはかなりの汗をかいていた。日差しを遮る植林帯に入るとホッとする。まだ梅雨入りの気配はなく湿度はほどほどで、時々そよぐ風も心地よい。
浅間神社を過ぎ、カラマツと杉の植林帯の急登を詰める。緩やかな尾根状となり、ミズナラとブナの広葉樹の森に入る。久しぶりの重装備も、この清々しい緑の光の中では重さが違うようだ。
ヤマツツジはまだ少ないが、トウゴクミツバツツジが至るところで満開の花を広げている。先週の都県境尾根では、シロヤシオに主役を明け渡していたが、今日はトウゴクミツバツツジの番のようである。
尾根を進んでいくと、あたりはエゾハルゼミの鳴き声に満たされるようになる。鳥のさえずりをかき消さんばかりに元気よく鳴いている。これを聞くともう、初夏どころか夏の入口のような感じがする。
緩やかな尾根歩きが少しずつ傾斜をおびてきて、木々の葉の色が軽くなってきた。少し下り気味の道の先の水場はよく出ていた。今日のルートは丁度いい間隔で水場があるので、携帯する水はペットボトル1本で十分。ただ雲取山への最後の登りは、その日の晩の水を担ぎ上げる必要がある。
鷹ノ巣避難小屋に到着。ベンチで休憩している人、鷹ノ巣山に登る人、下ってきた人、テントを張ってる人で賑わっている。
今日は鷹ノ巣山には登らず、このまま石尾根を行く。すぐ分岐する日陰名栗ノ峰へも取り付かず、巻き道を選ぶ。今年最初の重い荷物であり、やはり無理はせず雲取山まで行き着くことを第一に目指す。
日陰名栗ノ峰は東西に長い稜線を持っていて、南面を巻くのにもかなりの時間を要する。このあたりは新緑もまだ初々しく、足元にもスミレ、クワガタソウ、ミツバツチグリ、ワチガイソウ、ミヤマハコベなど様々な花が見られる。
もちろんトウゴクミツバツツジもあちこちで花をつけていた。ただ石尾根の稜線ではツツジはまだ若干早く、ヤマツツジは蕾だった。
高丸山も巻き、次の千本ツツジへは尾根通しに登ることにする。見通しのよい緩やかな草原帯には、コンビニの袋を片手に山菜採りを楽しんでいる人が多い。知識のない自分にもワラビくらいは何となくわかる。が、採ってきょうの自炊のおかずにするくらいまでの自信はない。
千本ツツジ山頂の先にある展望地からは、緑の赤指尾根がよく見えるが、もやがかかって遠望は効かず富士山など影も形もない。七ツ石山からの雲取山、石尾根、奥秩父主脈稜線の眺めもぼんやりしたものだった。
トウゴクミツバツツジの咲く中をブナ坂まで下りる。やはりここから先は登山者が増える。
石尾根は今が芽吹きから新緑に色合いを変えていく時期で、萌黄色のグラデーションが美しい。奥多摩小屋のテント場はこの時間から大盛況だ。テント人口はここのところ急激に増加し、休日であればどの山のテントサイトも午前中で満員近くなってしまう。
水場で今日1日分の水を調達し、ザックにくくりつける。荷物が3キロ近く重くなったここからの標高差150mの登りが、毎度のことながら1日目の行程のキモである。
ヨモギの頭を巻き、小雲取山の肩への急登。歩くスピードは落ちても、止まらなければ前に進む。時間をかけて登り肩に着く。避難小屋が見える。スミレはここ標高2000mまで咲き上がってきていた。
雲取山山頂を前にして、親子鹿を見る。子どもの方が登山道を横断するのを、複数の登山者が見守っていた。皇居お堀のカルガモ親子の引越しを思い出す。
さらにその先でも別の鹿がいたようだ。鹿は餌を求めて人間に寄近づいてきているのだろうか。山中でなく、人の多い山頂付近で鹿を見るのはあまり良い状況とは言えない。
通算32回目の雲取山山頂に到着。空は相変わらずもやっているが、暖かく明るい。今日は過ごしやすい日となりそうだ。山頂のトイレは改築され、外観は下界の公衆トイレと何ら変わらなくなっている。
テント場は混んでいたが、避難小屋は10名程度で比較的空いている。これは意外だった。紅葉の時期や雪の降った日は避難小屋は混雑する。季節によりずいぶん違うようだ。
頑張って水を持ってきたおかげで、今日の飲食には不自由しない。明日は朝一で山荘に下るので、水は今日中に使い切っても大丈夫だ。
以前、水は担ぎ上げずに山頂まで登ってしまい、すぐに雲取山荘まで下って水を汲みついでにビールも調達して登り返したこともあった。最近は山頂に着いた途端バタンキューでもう歩く気力は湧いてこないので、水は持ち上げることになる。
食事を済ませ、7時過ぎに外が暗くなり始めたところまでは覚えている。いつの間にか眠っていた。