~展望広がる西上州南部のミニ岩峰~ 2002.11.2.(土)晴れ時々曇り 藤沢10:30-11:30住居附11:35-12:30笠丸山13:30-13:55地蔵峠14:00-14:20林道-14:35住居附-15:35藤沢 歩行時間:3時間55分 |
●静かな山里から笠丸山へ 高崎線の新町駅からバスに揺られること2時間。バスは小型のタイプで、自分の他に乗客は2,3人。途中で地元の人も数人乗り込む。 新町からの2人、群馬藤岡駅からの1人は喪服姿だ。何かお葬式でもあるのだろうか。
万場を過ぎ、バスは山間の道を走って行く。両側から山が迫る。二子山らしき岩峰群も見える。 2時間座りっぱなしで、尾てい骨が痛くなってくる。野栗入口で喪服姿の人は下車する。 しばらくして藤沢バス停。ここから林道(舗装路)を歩いて上がって行く。 時刻はすでに10時を過ぎている。谷間にも日が差して来て、紅葉の始まった周囲の木々を柔らかく照らしている。 しばらく歩いて、舗装路を離れ沢沿いの旧道に入るはずであったが、旧道は通行禁止のロープが張られていた。構わず入っていこうかとも思ったが、やはり安全を考え、そのまま舗装路を行く。少々遠回りになるが、おかげで、途中で笠丸山のピークを眺めることが出来た。 バス停から1時間ほどの歩きで住居附(すもうずく)の笠丸山登山口に着く。住居附とは不思議な集落の名前だが、付近には他にも「~附」という地名がある。 そういえば都心にも「赤坂見附」がある。見附とは、城郭の外側にある見張り場所のことを言う。言われてみれば、西上州の岩山には城郭を連想するものがあり、この地名はそのへんから来ているのかもしれない(全くの想像)。 笠丸山は古くから、雨乞いの山として信仰を集めていた。地図によると南登山口近くに笠丸神社があるとのことであるが、それらしきものは見つけられない。しかし登山口は大きな看板が立っており、見過ごしようが無い。 小さな石灯篭の間を登って行く。さっそく、踏み跡薄い急な登りである。 木に掴まって体を引き上げるような箇所もすぐに出てくる。笠丸山頂までは1時間ほどなので、樹林帯の中を踏ん張って登り続ける。 いったん緩やかになるがすぐまた急登。目の上に大きな岩が立ち塞がって来る。これを右から巻き気味に進む。進行方向から人の声が聞こえる。そろそろ山頂近しだ。 周囲は岩がちとなり、おそらくツツジ類であろう低い潅木が多くなる。なおも、後ろへひっくり返りそうになる急坂を詰め、ようやく前方が明るくなる。祠のある東峰に登り着く。 樹林で眺めは乏しいが、一段下りたところからは南面の展望が得られる。
●展望の山頂から紅葉まぶしい稜線へ 山頂部は東西に長く、さらに岩がちの部分を西進する。頭上がどんどん開け、目の線より少し下は赤く紅葉したツツジの木で一杯だ。 展望のよい岩場に、先ほど声が聞こえたグループがいる。どうやらもうひとつの登山口(と言っても歩いて5分ほど)から登って来たらしい。 自分の取付いた登山口付近のことを聞かれた。どことなく市毛良枝さんに似ているようにも思えたが、多分思い違いだろう。来年今頃の山雑誌に載るかどうかで本物かがわかるであろう? グループのいるところからさらに先を行く。ロープのかかる下り口を分け、ツツジの潅木を越したところが、三角点のある西峰頂上だ。ほぼ360度の素晴らしい展望が広がっている。 南面には両神山、それに続くゴツゴツした赤岩尾根とおそらく天丸山。さらに西にひときわ高い丸いピークは三国山か、埼玉県の最高峰三宝山か。八ヶ岳や浅間山方面は厚い雲で覆われている。 北側に目を転じれば西上州鏑川流域の山々。御荷鉾スーパー林道が山腹を横切っている。 標高が低いせいか、ここから望まれる西上州の山は御荷鉾山などの近場の山が見えるだけで、荒船山や毛無岩、立岩などに代表される西上州のゴツゴツした山姿は望めない。しかしもう1度南を見ると、二子山の怪異な姿もあり、その手前には、セメント材料として上半分を削られてしまった叶山も見える。 真っ白い石灰岩をむき出しにした叶山は、もはやそれ自体が大きな建物のようにも見え、武甲山以上にショックな姿である。
それにしても、けっこう人の声は聞こえるのに、この展望の山頂には誰も来ない。ロープで登った所に東峰方面を示す矢印の板が掲げられているからか、それとも、上州名物のからっ風を避けているのかもしれない。ちなみにこの日は、東京では木枯らし1号が吹いたそうである。 滑り易いロープの箇所を慎重に下り、昨日の雨でややジメッとした山道を下りて行く。 やがてあたりは明るくなり、ツツジの紅葉の中を気持ちよく下る。小ピークを越えると日がいっぱいに当たって暖かい。 いつしか傾斜はゆるやかになり、周囲は紅葉の真っ盛りである。登りのつらい道とは全く異なる雰囲気だ。 もっとも、あっちのほうは下りにとってもかなり難儀しそうではある。 ショベルカーの残骸のようなものを見て、なおも気持ちのよい尾根を進むと地蔵峠に下り立つ。大木の下にお地蔵さんがひっそりと佇んでいる。風情のある佇まいでほっとするところだ。 住居附へは、右にスイッチバックするように下って行くのだが、この峠にはもう1本、左にはっきりした踏み跡が下りていた。指導標には「楢原・楢沢へ」と書かれている。今日は楢原に泊まるのでこの道を下ってみようかとも思ったが、調べてもいなかったし確実に下りれる確信が持てない。 迷ったあげく、予定通りに住居附に下りることにする。初めての山ではあまり冒険心を起こさない方がいいだろう。 なお、峠から尾根を真っ直ぐ行く方向にも道形らしきものがあり、これはどこに続くのか興味のある所だ。 ●再びバスに乗りさらに奥の集落へ 緩く下って行くと沢が現れ、その後は沢沿いの薄暗い静かな道になる。 導標もそこそこあるがやはり、奥多摩や大菩薩に比べると、道は細い。しかも落ち葉で埋め尽されているので、ところどころある赤テープを無意識のうちに頼りにしている。
林道に下りればすぐに住居附の集落(北登山口)へ。正面に天狗岩の岩塊がでかい。南登山口を過ぎ、再び車道を下って行くことになる。 民家はみな一段高い所にあり、農作業をしているおじいさんと目で挨拶する。小さい女の子が着物を着てはしゃいでいる。七五三の時期だ。 小さいけれども満足度の大きい岩山だった。春はいっせいに咲き揃うツツジを見に混雑するそうであるが、そうとわかっていても、ぜひその時期に再訪してみたいと思った。 藤沢バス停に着く。5分遅れて来たバスに乗って、さらに奥地に入って行く。「学園入口」で下車し徒歩3分、神流川沿いの民宿「ときわ荘」に入る。 |