山の写真集 > 谷川岳・越後・信越 > 春近い谷川岳
  • -春霞みの眺望-
  • 天神平-熊沢穴-トマノ耳
    • 谷川連峰
    • 群馬県
    • トマノ耳(1963m)
  • 2021年3月27日(土)
  • 6km
  • 3時間55分
  • 644m(天神平-オキノ耳)
  • -
  • 谷川温泉 湯テルメ谷川
  • マイカー, ロープウェイ
天気1

 

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2021年3月27日(土)
練馬IC 4:40
  関越自動車道
水上IC 6:25
  国道291号
7:05 土合口駅 8:15
  ロープウェイ
8:25 天神平 8:40
9:35   熊沢穴
10:52   肩の小屋
11:05 トマノ耳 11:15
11:20 肩の小屋 11:45
12:25   熊沢穴 12:35
13:20 天神平 13:35
  ロープウェイ
13:45 土合口駅 14:00
  国道291号
谷川温泉立寄り
16:05 水上IC
  関越自動車道
18:55 練馬IC

 

緊急事態宣言が明けると季節はもう春間近になっていて、都心では桜も開花した。今シーズンは雪山は無理かと思っていたが、運よく3月の最終土曜日、晴れてくれたので出かけることにした。
昨年も2月に登っている。思えばこのとき、天神平スキー場の客がいやに少ないのを不思議に思った。コロナ禍の始まりだった。あれから1年、まさか同じ状況で再び谷川岳に登ることになるとは。

3月下旬となるとさすがの谷川岳も、雪解けが進んでいるだろう。例年のような雪山が見られるのか、行ってみるまで分からなかった。


肩の小屋付近にて、谷川連峰の越後側の雪山を望む [拡大 ]

ロープウェイ土合口駅

ロープウェイ駅

天神平駅から登山開始。白毛門や朝日岳を望む

登山開始

天神平駅を背に、雪道をひたすら登っていく

ひたすら登る

谷川岳を正面に、伸びる尾根道に登山者の列

人の列

森林限界を越え、ただ白い雪原を行く

雪原を行く

最高点を目指し、一直線に登高

山頂へ一直線

苗場山の平頂

苗場山

肩の標識は、厳冬期であればエビのしっぽで真っ白になる(2018年3月3日の状態

エビのしっぽなし

トマの耳直下より、肩の小屋と上越国境稜線を見下ろす

国境稜線を一望

トマの耳山頂

トマの耳山頂


水上ICから見上げる谷川連峰は、白っぽい空の中にぼんやりと、霞んでいる。3月特有の眺めだ。
みなかみ町を車で走る。道脇にはほとんど雪はない。湯檜曽温泉を抜けて土合駅付近に近づいて、ようやくまともな量の積雪が見られるようになった。

ロープウェイ土合口駅に着く。ロープウェイは8時からで、40分ほどロビーで並んで待つ。もう50人くらい並んでいた。皆この日、このタイミングを狙っていたようだ。スキー・スノボ客は数えるほどで、ほとんどが登山者である。
行列は密になるのでできれば避けたいが、仕方がない。なるだけ壁の方に顔を向けて切符売り場が開くのを待った。
天神平駅に上がる。やや黒い筋が多いものの、白い谷川岳はいつも通りの姿で迎えてくれた。バックの空までもが白いのは残念だが、今日はここに来れただけで、この眺めに出会えれば文句はない。

冬ルートはまず、尾根筋に上がるまで急登である。人の背中を見ながら、ダブルストックで息を弾ませて登る。
ところで、今日は今年初めての雪だ。歩くどころか、見るのも最初である。それで谷川岳に登るのも無茶かもしれないと思ったが、何とか行けそうである。やはりこれで冬は4回目なので、足が覚えているようだ。

歩く人は、前々回、前回からさらに増えている。白い斜面に人影が黒い1本の筋を作っている。雪質はザラメで重い。小ピークからの急な下りは、前3回と違い岩がかなり出ていて、アイゼンをひっかけやすい危険個所となっていた。
熊沢穴避難小屋は標柱だけ雪の上に出ている。そこからは森林限界を越えた雪原登りとなる。雪の天神尾根のハイライトである。空が白っぽく興覚めだが、風がないのが幸いしている。天候悪化の兆しもない。

急斜面を登っていくうち展望もどんどん広がり、右手に尾瀬や上信越の山々、左に谷川連峰の主脈、いつもの姿が現れた。雪がやはりかなり解けてきているので、薄い雪の下に岩角が透けて見え、そのせいかいつもより筋骨隆々としたイメージがある。
斜面も雪で全面真っ白というわけではなく、多くの部分がくすんだ氷の色で覆われている。

天狗の留場を過ぎると雪質もよくなり、あとはひたすら、白い斜面を登るのみ。体力は例年と比べかなり落ちている。体全体で息をしながら登る。
左のオジカ沢ノ頭、爼倉のピークが目線の下になってくるといよいよ登りの最後。肩の小屋に到着する。小屋は2月のような白いマンモス状態にはなっていない。標識にもエビのしっぽはついていなかった。
日差しは薄いが、どこか暖かささえ感じる中、最後のひと登りでトマの耳へ登頂する。

トマの耳より、オキの耳と巻機山を望む

巻機山方面

トマの耳より、至仏山(手前)と燧ヶ岳

尾瀬の山

熊沢穴避難小屋付近。平坦で広々とした尾根道

広々とした尾根

ブナの冬芽が膨らみ始める

ブナ冬芽

標高を落とすと、灌木や土の見えるところも多い

黒い部分も

冬の谷川岳を象徴する、2つの大きな猫の目がギロリと睨んでいる

猫の目大きい

天神平駅に下山。スキーヤー、ボーダーに交じって観光客も

天神平駅から


豪雪で知られた上信越の雪山の眺め、やはりすばらしい。ただ、今回はやはり真っ白ではない。
昨年は記録的な少雪で、登山した2月15日の天神平の積雪は160cm。今回は240cmなので、昨年よりはまだ雪はあるだろうと思っていた。だが実際見てみると、山稜のところどころに黒い岩が覗いていたり、谷筋は雪がかなり解けていた。昨年はそんな眺めはなく、見渡す限り白だった記憶がある。
やはりスキー場で計測される積雪量と、山の上のそれとは単純に比例するものではなさそうだ。スキー場は雪が積もりやすい地形にあることが多いので、そういう数字上の不釣り合いがあるのだろう。

今年初めての雪山で、体力もいっぱいいっぱい。オキの耳への往復は止めて、肩の小屋の前で休憩することにした。
登ってくる登山者は後を絶たない。谷川岳は雪山初心者向けの山として広く知られるようになったようだ。上越国境の雪山を目にしっかり焼き付けて、下山とする。次はいつ見られるだろうか。

水っぽいザラメの雪は、下りで難儀する。こういう雪質は奥多摩など南関東の少し高い山でおなじみだ。ただそういう場所は木が茂っていて、急な下りでも意外と恐怖感がない。しかし今日のこの下りは雪しかない。転倒したらそのまま滑り落ちてしまいそうだ。
いつものモフモフ雪質なら、そんなことはなくスイスイと下れる。
場所によっては体を横向きにして慎重に下る。傾斜が緩くなるたびにホッと一息つく。避難小屋付近まで来るとブナも現れ、ようやく落ち着いて歩けるようになる。

谷川主脈や国境の山々の姿は、はるか上になってしまった。天候はぐっとよくなり、いっぱいに広がった青空に、絹雲がたなびいていた。
ただ日足が伸びたせいか、雪山への光の当たり方はこの時間になっても斜光にならず、立体感が乏しい平板な眺めになっている。2月のときは、ちょうど下山の時間になると斜光が谷川岳に当たり、質感のあるいい見え方をするのだ。
今日のは雪山というより、残雪の山と言った方がいいかもしれない。こんな雪いっぱいの山でも、季節が春に向かって走り出したことを実感できた。

天神平スキー場まで下りる。スキー客がまばらなのは昨年と同様。コロナ禍が収束して初めて、ここ天神平にもいつもの賑わいが戻るのだろう。
ロープウェイで下りる。久しぶりに長い距離を車で来たので、帰りはゆっくり温泉に入っていく。 帰りの関越自動車道では、これもまた久しぶりの試練、20㎞の激しい渋滞に巻き込まれてしまった。