今年は高尾山に足を運び続け、山頂を経なかった時も含めれば今回で11度めの登頂となる。他の山に行くペースが落ちたわけではなく、高尾山へは空いた時間を埋めるように登りにいった。
計画をしなくても気軽に歩け、しかもいろいろなコースがあるので飽きない。
今回初めて、陣馬山まで縦走した。距離は長いが危険なところはなく、足任せに行ける。名残の紅葉をあてにしつつ歩いてみる。
小仏峠付近から相模湖を見下ろす [拡大]
|
陣馬山から取りついたほうが縦走が下り勾配となり体力的には楽かもしれない。しかし体にムチを入れたいためあえて高尾山側から登る。
高尾山に登るにしては珍しく早起きして、早朝の電車で高尾山口駅まで行く。最近は午後からの歩き出しというのも多かった。取りつきはいつもと同じくろくざん亭コース(金比羅道)とする。下部の林はまだ緑の部分が多い。金比羅台に上がるとイロハモミジがきれいに紅葉していた。そして、スカイツリーがいつにも増してくっきりと見える。早起きしたご褒美の眺望だ。
モミジの紅葉はあちこちで見られる。先月5日に来たときは、色づいていたのは山頂付近くらいで、このあたりはほとんど緑の森だった。高尾山の紅葉の見ごろは、最近は12月に入ってからになったようだ。
4号路を歩く。北斜面だからか、すでに落葉した木が多い。吊り橋を渡ると、夏は橋の手すりまで枝葉を伸ばしてきていたカラスザンショウは、樹冠が下のほうに行ってしまっていた。折れたのだろうか。いろはの森は通行できるようになっていた。下りてきた人が、山頂付近は風が強いと言う。
階段を上がって1号路に合流し、高尾山山頂へ至る。山頂付近はモミジの紅葉はピークを過ぎていた。すっきり晴れ渡った青空で富士山もよく見える。丹沢や御坂の山々も。
山頂のカシワの木は、きれいとは言えないが葉が黄色から茶色に変わっていた。カシワは落葉樹でありながら、冬も葉を枝につけていることが多く、それ故海岸などで防風林の役割を果たしているという。
山頂を辞し、尾根道の縦走に入る。果たして陣馬まで行けるか。
茶店のある紅葉台、イロハモミジがきれいに紅葉していた。前日に登った破風山の艶やかな紅葉が目に焼き付いているが、ここのモミジも負けていない。そしてここ紅葉台は山頂以上に富士山の眺めがいい。よみうりランドの観覧車もよく見える。
階段道を大きく下る。一丁平も素晴らしい展望台で、富士山はじめ丹沢の山も勢ぞろいだ。御坂の山の向こうに南アルプスの稜線もかろうじて見えた。
気持ちの良い稜線を歩いていくと、右手に日影沢林道方面を見下ろす場所に出る。日影沢林道は台風19号の影響で寸断され、いまだに通行できない。また、この先の小仏峠や景信山も、下山路の小下沢林道が台風で通行禁止となっているため、高尾山から縦走する場合は下山コースの選択がかなり狭まっている。
階段で下った分以上を登り返して城山に着く。木のベンチが山頂いっぱいに並べられているが、さすがに今日は人は少ない。紅葉はこの辺りまで来るとピークを過ぎている。
相模湖へ下山するルートは通行可能だが、まだ縦走を続ける。小仏峠付近で、左手に相模湖がいい形で見下ろせる。
45年くらい前、小学校のハイキングで高尾山に登った時、山の上から相模湖を見た記憶があり写真にも残っている。おそらくここから撮ったのだろう。その時、どのコースを歩いたのか記録がない。リフトに乗っている写真もあるので、もしかしたら高尾~陣馬縦走をしたのか。陣馬までは子供には大変かもしれないので、途中までだったろう。
小仏峠は相模湖への下山ルートは問題なさそうだが、小仏へは下れない。
景信山への登りは、今日一番の頑張りどころとなる。登りついた景信山山頂は昼時でもあり、結構な人がいた。モミジの紅葉が残っており、山頂からは都心方面が一望され、ぎりぎりながら富士山も見える。ベンチのある位置は山頂より少し下で、実際の山頂は一段上がったところにある。
景信山も、小下沢林道を使っての下山はできないようになっていた。
階段状の長い下りを経て、再び穏やかな尾根歩きとなる。この縦走路は、高尾山を離れると人工林の割合が多くなり、右左どちらかが決まって杉・ヒノキの薄暗い林となる場所がほとんどである。モミジが減りコナラ、アカマツが増えて低い笹も現れ、東京周辺の低山ではおなじみの景観だ。南高尾山稜、北高尾山稜も基本的に同じである。
一方、高尾山本体は江戸幕府や明治政府による禁伐期が長く続いたため自然が色濃く残され、林業を目的とした人工林もほとんど見ない。もっとも、それまで生活の拠りどころとしていた山が御料地になったり禁伐地とされてしまうと、麓の住民による反発が強くなり、かえって盗伐が増えて山が荒れたという歴史が各地である。高尾山周辺もそういうことがあったのかもしれない。
中央線沿線の山がどこも同じような風景が展開するのは、過去に広範囲で木が伐られ、はげ山同然になってしまった時期があり、その後同じような植生復活の経緯をたどってきたからだと思う。
いずれにしても高尾山は照葉樹始め多くの樹種、他ではあまりないような山野草も見られる。高尾山は歩けば歩くほど、謎が多く奥深い山であることが分かってくる。
堂所山を巻き、ススキの原の広がる伐採地を経て緩やかだが高度は上がっていく。底沢峠で陣馬高原下に下ることができるが、麓が台風19号による被災でバスが不通となっている。
明王峠には茶店があり明るい雰囲気だ。相模湖へ下る道もよさそうである。ここの読み方は「めいおうとうげ」だと思っていたが間違っていた。最近は外国人向けに、各所でローマ字綴りの標識を見かける。それを見て今まで読み方の間違いに気づかされることも少なくない。
奈良子峠から陣馬高原下に下る道も同様に、事実上使えない。もう陣馬まで行くしかない。
少し傾斜がきつくなる。高度も800mを越えてきた。明るい雑木林となり、右方に陣馬山の緩やかな山体が見えてくる。風が再び強くなってきた。山頂はどうだろうか。
芝地の階段を上がって、もう何年振りになるだろうか、白馬の像の輝く陣馬山山頂である。眺望は言うことなし。富士山もまだ見えており、三国山から始まる甲武相の稜線、奥多摩の山々の眺めが広い。この山に木がないのは、またいずれ考察したい。
山頂の至る所にあるベンチはほとんどがそれぞれの茶店を利用した人が使うもの(または優先席)となっている。茶店に寄らない人が座れるのは一番高いところにある数個のベンチのみである。今日は空いていたのでそれでもよい。風は意外にもなく、日差しがあれば暖かいくらいだったのがよかった。
高尾~陣馬縦走を果たせ、充実した気分で下山する。一ノ尾根を使う。伸びやかで歩きやすい尾根道で、長い距離を歩いてきた足に優しい。コナラの黄葉もかなり残っており、早くも傾きかけてきた秋の日に照らされて幻想的な眺めを見せてくれている。
バスの時間が気になったので、途中で尾根を外れ上沢井に下る。駅まで歩けない距離ではないが、今日は長かったので最後は楽をしたい。
藤野駅で中央線、高尾駅で京王線に乗り換えて帰る。