4年間続いた雪の雲取山に今年は登っていないせいか、春を待ち遠しく思う気持ちがいつもより強くない。けれど山で花を見るとやっぱり心が踊り、さあ始まるぞという実感が湧いてくる。
日影バス停付近の梅林
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裏高尾の小下沢林道ではハナネコノメがそろそろ咲く時期と思い、「山と渓谷」3月号の記事を参考にして出かけた。
日影バス停を下りてガードをくぐり林道に入ると、まず満開の梅林が目の前に広がる。三脚を構えたカメラマンやハイキングの団体で賑わっている。山に人々が戻って来る季節になったことを実感する。
左に小下沢(こげさわ)の流れる平坦道を行く。右側の日当たりのよい斜面には、ところどころアオイスミレやタチツボスミレが咲き出している。ポカポカした陽気は春そのものだ。
ハナネコノメ [クリックて超拡大写真]
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林道と沢の高さが近くなると、沢に下りる踏み跡がついているので下りてみる。石伝いに対岸に渡り、大きな岩の表面を覗き込むと、小さなハナネコノメがいっぱい付いている。
まだつぼみのものが多いが、丹念に見回ると咲いているのも見つかる。ハナネコノメはそれは小さな花だ。前回見たときもあまりに小さくて驚いたが、今日もまたその小ささにびっくりする。米粒くらいだと覚えておいたほうがいい。
デジカメではどうにか撮れたが、フィルム一眼レフカメラでは被写界深度(ピントの合う範囲)が狭く、なかなかピントが合わない。それこそミクロの世界での微調整だ。
野営場までの30~45分コースを2時間半かけて歩いた。その間にヨゴレネコノメやニリンソウ、ヤマルリソウ、ユリワサビなどもあちらこちらで見られた。が、群落というほどのものはない。季節はまだ春のほんの入口である。
ハナネコノメ [超拡大]
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ユリワサビ
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ニリンソウ
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ダンコウバイ
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同じアオイスミレ
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同じエイザンスミレ
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休憩ののち、景信山へ向かう。沢を離れるとつづら折りの急登となり汗をかく。
斜面に500円玉ほどの大きなエイザンスミレを見つける。一眼レフとデジカメで同じ花を撮るが、あとで現像したものを見ると色が全然違う。デジカメのほうは青味が強く、フィルムは逆に赤っぽい。アオイスミレはデジカメ、エイザンスミレはフィルムの方が実体により近い。しかしどちらも「本当の」色とは間違いなく別の色だ。
スミレは、その赤とも青とも言えない微妙な色合いが奥ゆかしくていいのだが、その系の色を忠実に写真で再現するのは至難の技で、小さい花のピント合わせ以上に難しい。光の角度や絞りを調節して克服するのだろうが、自分の知識と技量では到底及ばないようである。
梅咲く裏高尾の町
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ところどころぬかるんでいる斜面を登りきり景信山頂上に着く。たくさんのグループで賑わっている。頂上にはダンコウバイが咲き、東京郊外の町並みが遠望された。
小仏(こぼとけ)に下りる道は、アセビや雑木が混ざる気持ちいい尾根だ。ここでもダンコウバイが咲いている。
しかし今年は何となくではあるが、これまで樹の花を見る頻度が少ない気がする。例年なら今頃にはもうダンコウバイやアブラチャン、マンサクなどを既に何度か見ていたように思う。
都心は桜が彼岸前に咲くようだから、それもたまたまなのだろう。
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