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2010年9月26日(日)
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◇ | 栂海山荘 | 6:05 |
7:10 | 水場分岐 | 7:25 |
7:40 | 菊石山 | 7:50 |
8:20 | 下駒ヶ岳 | ◇ |
9:40 | 白鳥山 | 10:10 |
11:05 | シキ割 | ◇ |
11:50 | 坂田峠 | 12:05 |
12:40 | 尻高山 | 12:50 |
13:25 | 二本松峠 | ◇ |
13:40 | 入道山 | ◇ |
14:30 | 国道登山口 | ◇ |
14:35 | | 親不知海岸 (親不知観光ホテル 入浴立ち寄り) | ◇ |
送迎バス
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◇ | | 親不知駅 | 16:06 |
北陸本線
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16:17 | | 糸魚川駅 | 16:37 |
特急はくたか
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17:52 | | 越後湯沢駅 | 18:10 |
上越新幹線
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19:40 | 東京駅 | ◇ |
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岳人の切り開いた登山道 (9/26 犬ヶ岳~白鳥山~坂田峠~親不知)
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夜半、トタン板の屋根を激しく叩く音で目が覚めた。最初は何の音だかわからなかったが、雨が降っているようだった。
音は夜明け近くまで続いた。3日目は雨の中の縦走なのか、と思い外に出てみたら、雨どころか満天の星空である。
どうやら雨はほんの少しの時間だけで、あとはたまった雨粒が屋根を伝って、何かの板切れに当たる音だったようだ。
朝は冷えた。おそらく0度近かったのではないかと思う。妙高山あたりから昇るご来光を拝む。北アルプス方面を含め、全方位快晴の朝である。剱岳がここからもよく見えた。
白鳥山から見る日本海はすぐそこだ。しかしまだ4時間近くかかる
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今日も長い1日になりそう。同宿の人は先に出発した。足の速そうな方なので、荷物の重い自分が追いつくことはないだろう。今日も登山者に会うことはなく、黙々と歩き続ける自分の姿が思い浮かぶ。
栂海山荘からは、真正面遠くに控える白鳥山を見ながら、大きく下っていく。
白鳥山まではだいたい、平均の標高が1200mあたりの稜線を歩くので、犬ヶ岳からは300m近く下ることとなる。緑濃い、樹林帯の中の歩きが多く、ひんやりした朝の空気がおいしい。小さなピークの黄蓮山を越えさらに下っていくと、黄蓮の水場の分岐に出る。
水はほとんどなくなっていたので補給しに行く。数分で小さな沢身に出会った。
| ご来光は頚城山塊から |
| 今日歩く稜線 |
| ブナ林 |
| 白鳥小屋 |
| 剱岳がまだ見える |
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水場分岐からしばらくは、なだらかなブナの林が続いていた。昨日の後半からタフな道の歩きどおしだったので、ホッとする。菊石山(1210m)への登りもそれほど急でないものだった。
しかしだんだんと、暑さとザックの重さが身にしみるようになってくる。大気はカラッとしていて、そよぐ風は冷たいくらいであり、それが救いである。
昨日のサワガニ山付近の登山道とは雰囲気は違うが、ここもまた、全てのピークを丹念に踏んでいく登山道になっている。
目の前に大きなガレのピークがたちはだかる。この登りが急斜面で大仕事。下山路でこれほどのきつい登りをさせるとは。
栂海新道は、その高低差と長いというイメージが強いが、アップダウンの激しさも特筆ものである。
奥多摩や大菩薩、奥秩父の峠道から発達した登山道は、地形によってはピークを巻くことが多く、歩いてなるべく疲れないように道がつけられている。すなわち合理性が優先しているのだが、栂海新道は反対である。
岳人がこしらえた道らしく、少々遠回りでも、見えているピークは全部通っていく。それも一番高いところを歩くように。
豪雪地帯の山という背景もあるが、比較的安全なピーク通しの道が続き、峠道という考えはない。登りきった1241mピークには、下駒ヶ岳という名前がついていた。
ここで道は、再び大きく落ち込み、1100m以下まで下ってしまう。白鳥山へは標高差200m近い登り返しとなる。これはさらにきつい登りだ。
コースタイムを見たら、犬ヶ岳~白鳥山間は今歩いている方向のほうが時間が長いのは、ここの登りがあるからだろう。
しかし登らないわけにはいかない。ほとんど最後の力を振り絞り、水場への分岐も顧みずに、ひたすら高度を取り戻す。着いた白鳥山頂上は、犬ヶ岳からもよく見えていた白い小屋が立つ、静かな場所だった。
犬ヶ岳から見た感じではすぐに着きそうだった白鳥山まで、3時間半もかかってしまった。
ザックを放り出し、とにかく胃の中に何か入れる。しばらくは体力の回復を待つ。
回りの景色を見る余裕が出てくる。樹林の背が高く、そう展望のいい頂上ではないが、朝日岳や剱岳、北信五岳の眺めがすばらしい。そして海も、すぐ近くにやって来た。
もう少し、ゴールはすぐそこまで見えている・・・と思いたいのだが、時間的にはまだ今日の半分も達していないのだ。
やがて、一人の登山者がやってきた。坂田峠からの往復だそうだ。登山道に特にきついところはないと言う。
白鳥山を後にする。何名かの登山者とすれ違う。ぬかるみの多い道だが広葉樹がきれいで、新緑の時期にはよさそうだ。5月の山開きの旗がまだ残っていた。
シキ割の水場で再び水を汲み、さらに下る。ナラの高木が目立つようになると、補助ロープのついた急降下の道が続き、険しさが一段と増す。きついところはないという話だったが、このあたりは地元の人との感覚の違いなのか。
「スズメバチに注意」の標識。落っこちるような急坂で目の前にスズメバチを見る。一匹だけでも足がすくむ。じっとしていたのが幸いしたのか、攻撃はせずにすぐに行ってしまった。
下れど下れと峠は見えない。これでもかの急降下で足元もヘロヘロである。車道の通じる坂田峠に下り立った時は、お昼近くなっていた。
坂田峠は、越後と越中を結ぶ山回りの街道として歴史は古い。かつては、海沿いの北陸道が荒れたときのバイパス路としての役割は大きかったようだ。その後廃れてしまい、車道が乗っ越した現在、古道は草にうもれている。
峠の説明板には、「最近は栂海新道の縦走者が、峠に新たな足跡を残し始めている」と記されていた。
峠からはまた登り返しとなる。ただし今までのきつい道とは違って、ブナ林のゆるやかな登りである。尾根に達するとすぐ下に海が見えるようになった。
尻高山(677m)を過ぎ、杉林の下りとなる。車道をまたいだ先の二本松峠まではゆるやかな尾根道で、完全に里山の雰囲気となった。ゴールは近いと確信する。残りは入道山というピーク1つを残すのみ。
しかし、ここから海までの間にも、いくつもの登り返しがあった。まず入道山(445m)への登り。すぐ着くと思っていたので長く感じる。そしてその先、進んでいくと目の前に大きな高い尾根が横たわっていた。かなり遠いところにあるので、まさかあれは越えないだろう、と思っていたが甘かった。見えたピークは必ず越えていく、栂海新道の鉄則を忘れていた。
登り返して尾根を乗っ越すと、さらにもう1本、越えるべき尾根が現れた。もう地形は安定しているから、巻いてしまえばいいのに。呆れるやらの気分で、力を振り絞って登る。その416mピークを越すと、ようやく下り一方の道となってくれた。
木々の間から海が大きい。白い波まで見えるようになってきた。
しかし標高差はまだ400m近くある。右手に見えている、さっきまで歩いていた尾根が心なしか近づいてきた。また登り返しなどしないだろうな、疑心暗鬼になるも、さすがにそれはなかった。
が、またしてもスズメバチ。今度も一匹だけで助かる。9月はスズメバチの季節なので、山は注意が必要である。
杉林の下りとなったら、もう国道登山口も目と鼻の先である。鉄塔基部を2つ過ぎて、一直線に下る。トラックの走る国道登山口に下り立った。
栂海新道の起点となる親不知の海岸へは、さらに標高差80m、距離にして400mを下らねばならない。階段にザックを置き、海水をさわりに降りた。岸辺に打ち寄せてくる波はちょっと恐い。
日本海の水でおそるおそる、顔を洗う。標高2400mから0m、トラブルにめげず、重荷を背負って歩き通せた感慨が湧いた。
海岸沿いの「親不知観光ホテル」で入浴し、帰途に着く。長い3日間が終わった。
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