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雲ノ平から水晶岳、双六岳 2000.8.5.~8.
1 2 3 4 5 6 花のスライドシアター 文章のみ

鷲羽岳と三俣山荘 鷲羽岳と三俣山荘

●祖父岳・水晶岳・鷲羽岳を縦走、三俣山荘へ

今日月曜日は、予報ではさらに大気の状態が不安定になるとのこと。昨日よりさらに早い4時過ぎ、まだ星の見える時分に出発した。

祖父岳から三俣蓮華岳、右奥に笠ガ岳 祖父岳から三俣蓮華岳、右奥に笠ガ岳
祖父岳から槍ガ岳・穂高連峰 祖父岳から槍ガ岳・穂高連峰
今回、まだ明確なピークに立っていない。3日目にして最初の頂、祖父岳に登る。
雪渓をまたぎハイマツ帯を越える。朝からきつい登りだが、その甲斐あって山頂では360度のパノラマが得られた。

特徴的カール地形の黒部五郎岳。三俣蓮華、双六岳、槍、穂高、笠ガ岳、水晶岳、ここからもなお大きい薬師岳。足元には黒部源流の深い谷。残雪。
そして、今までこの祖父岳に隠れて見えなかった鷲羽(わしば)岳が全容を現した。本当に鷲が羽を広げているようだ。

食事を済ませ縦走に入る。祖父岳からの下りはお花畑と残雪のコントラストが美しい。
イワギキョウやウサギギク、タカネツメクサも目立ってきて、思わず歩みが遅くなる。

岩苔乗越を過ぎワリモ岳分岐への登りは、この先の行程を考え、バテないようにじっくりと行く。このへんはコースが多く、鷲羽越えをするか、黒部源流に行くか、選択に迷うところだ。

ワリモ岳分岐にザックを置き、水晶岳方面に進むと、赤土の多く混じる岩屑の道が多くなり。今までの牧歌的な雰囲気とは多少変わってくる。まだ好天でとても気持ちいい稜線だ。
植生も幾分変化があり、キンコウカやヨツバシオガマが見られるようになる。


気持ちよく進んでいると、前の方から人に呼び止められた。「そこは登山道ではないです。引き返して下さい」明確な道を歩いていて、道をはずした覚えは全くなかったので意外だった。
言われるまま5分ほど引き返すと、踏み跡のはっきりしない岩屑の斜面に、かすかな分岐らしきものがあった。ここで間違えたらしい。声をかけてきたのは水晶小屋の人で、私が間違えた場所を自分でも歩いて確認していた。
聞くと、昨晩の水晶小屋は、定員20名そこそこに対し60名が泊まったそうだ。3、4人で1畳だ。

水晶岳(左)から北に伸びる稜線 水晶岳(左)から北に伸びる稜線

水晶小屋に着き、フィルムを交換しようとして大ショック。ザックから1本取り出して来た交換用のフィルムは撮影済みのものだった。
まさかフィルムを取りにワリモ岳分岐まで戻るわけにはいかないし、水晶小屋にリバーサルフィルムは売ってないだろうし...。結局、写真撮影無しでの水晶岳往復となった。ザックを置いた場所が少し遠すぎた。

水晶岳直下の岩尾根は少し険しい。百名山のビデオを見て登りたいと思った水晶岳、やっと頂に立てた。山頂からは本当に360度、山しか見えない。まさにここが北アルプスのど真ん中だ。
赤牛岳、読売新道へ続く稜線や隣りに伸びる裏銀座縦走路、どちらも魅力的で歩きたい衝動を覚える。日本の尾根の奥の奥まで来た印象を強く持つ。昨日、スイス庭園から見上げたあのピークに今いると思うと感動的だった。

山頂には若い女性が一人で来ていた。聞くと、三俣山荘の従業員の人だった。今日は休みで、水晶岳から雲ノ平まで行くとのこと。どうりで足の早い人だと思う。
三俣山荘、水晶小屋、雲ノ平山荘は同じ経営者による小屋で、従業員同士でも交流があるように思えた。
鷲羽岳の方を指差し、「あそこに着くころまで、天気は持ちますかね?」と聞いてみた。あっこれは答えにくい質問をしてしまったな、と思った。

しばらくして20人くらいの団体が登ってきたので、入れ替わりに山頂を後にする。

ワリモ岳分岐まで戻る。先ほど道を間違えた分岐のところには、真新しい赤ペンキで「×」と描かれた石が置いてあった。

鷲羽岳 鷲羽岳

ザックを背負い鷲羽岳を目指す。ワリモ岳は山頂直下を巻き、いったん下り登り返しとなる。かなりきついが昨日の薬師沢~雲ノ平間の急登を思えば何くそこれくらい、だ。それよりも、いつのまにか空を覆いつくしていた雨雲を見上げて、焦りを感じる。

鷲羽岳山頂に着くと空身の人が多い。三俣山荘を拠点に、黒部源流と組み合わせて登って来る人が多いのだろう。

しかし山頂や他の山もガスに包まれはじめていた。時間をおかず雨が降ってきた。雨脚は早まる一方で、雨具を来て早々に下りる。鷲羽池もガスでぼんやりだった。
キャンプ場付近から祖父岳下 鷲羽岳の稜線から黒部源流付近

どしゃ降りの中、三俣山荘へ飛び込む。展望レストランで食事、ビール、そしてケーキセットを注文してしまった。何か甘いものが食べたかった。
ここは山小屋というよりもロッジと呼びたいくらい、小ぎれいで設備も整っている。ジェットヒーターで雨具はすぐ乾く。
この日はさすがに小屋にも余裕が出来、1人に1畳が割り当てられた。

夕方、雨も小降りになり黒部源流のほうまで下ってみた。今回初めてシナノキンバイを見る。
ハクサンイチゲ、ミヤマキンポウゲ、クルマユリ、ハクサンフウロなどにぎやかだ。祖父岳と鷲羽岳間の狭い谷間に手付かずの自然が保たれている。

雨は夜8時頃止み、天の川がきれいな満点の星空となった。

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