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快晴の雲の平の朝。地平まで続いているような木道を進む。時々通る登山者の物音も吸い取ってしまうような凛とした静寂が漂う。 祖母岳(ばばだけ)からは再び、槍ヶ岳を始めとした北アルプスの展望。薬師岳もぐんと近くなってきた。 アラスカ庭園を過ぎて高度を下げ、北アルプスの峰々にしばしの(数時間の)別れをする。木道は濡れていて滑ってしまう。 その後の薬師沢への直降の道も濡れた石ゴロゴロと木の根の連続で、歩行には油断がならない。足を置くところ全てが滑りそうな気がする。集中していないと思わぬ怪我をしそうだ。 ストックを使うのをやめて、下りなのにさながら三点支持の体勢で行く。登りのつらい道と言われるが、下りはさらに向かないと思う。 急降下で薬師沢に下りた後今度は太郎兵衛平への登り返し。カペッケガ原でニッコウキスゲが少し咲く。直射日光をまともに受け、後頭部がジリジリと焼けるよう。 橋で沢を何度か渡り急登となる。背後に水晶岳などの山々が再びせりあがってくる。食糧も減り荷物は軽くなってきてはいるのだがまだ腰へのダメージが強い。しかし大きな荷物を背負っての登りは今回これが最後。太郎平小屋に着いたときは「やったー」と思わず声が出た。 太郎平小屋はお昼時は食事ができるので、やっと自炊食以外のものが食べられると思いうれしくなる。ずっと食事の量は押さえ気味で来ていたので、小屋でカップラーメンとカレーライス大盛りを一度に食べる。なお、ここの食事の大盛りはラーメンでもカレーでも、大盛りというより二人分である。身も心も久しぶりの満腹感に酔いしれる。
太郎平小屋付近は、人もそれなりに大勢行き交っている。梅雨明け10日前後は、北アルプスは土日も平日も関係ない。 しかし小屋泊まりの人はみな中高年のそれも高年層、若い人はテント山行と棲み分け?の傾向がますます強くなっていると感じる。 小屋から15分ほどで薬師峠テント場。この日は20張りほど張られけっこうな盛況ぶり。 トイレ、水場と設備が充実している上に受付所でビールも買える(ただし受付所が開かれている時間は限られている)。 日差しがギラギラと強く、テント設営したあとはハイマツの下の日陰で休憩する。標高2300mに満たない場所なのにハイマツがこれだけ茂っているのには驚く。 今夜が北アルプス最後の夜、ついにテントで5夜を泊まり抜いた。3日連続で満天の星空だった。 |