2008年8月10日(日)~13日(水) |
主稜線への登路は直登コースではなく、オツボ峰回りとする。まだ薄暗い池のほとりを50mほど行くと、すぐに登りの道となる。直登コースよりは緩やかとはいえこちらも初めから急登だ。 少々ぬかるんでいてギャップもある、東北の山道らしいブナ林のタフな登り。しかしつらい道はそう続かず、1時間ほどで次第に傾斜は緩み始める。 ダケカンバや低潅木が目立ち始めると頭上が明るくなり、右手に以東岳のゆったりした山稜がせり上がってくる。 小さなピークを越えるとすでに森林限界、草付きの斜面にニッコウキスゲが咲く。このあたりが三角峰だろうか。 道は緩やかなカーブを描くように、以東岳へ続く稜線上を辿っていく。小さなピークに上がるとタカネマツムシソウが群落をなしている。久しぶりの対面に何度もカメラを向ける。同じような色合いのオヤマリンドウも咲く。 朝日連峰の見応えあるお花畑の、ここは単なるスタート地点に過ぎなかった。
指導標が水場を示す鞍部に下りる。水場には行かず先に進む。水は各所で取れるということもあり、1.5リットルを持っているがまだほとんど消費していない。 さあここからたおやかな縦走路の始まり。緩やかに高度を上げていくと稜線の東側が初めて視界に入る。一面の雲海になっていた。月山と、そして少し遠くに鳥海山が雲海の上に姿を現している。 天狗小屋への分岐があるオツボ峰(1582m)からコースは南下していくのだが、反対の北側にも茶畑山などの比較的大きなピークが並んでいる。それらには登山道は作られていないようだが、ここには戦国時代、朝日軍道と呼ばれる軍事用の長い道路が形成され、それははるか葉山まで続いていたということだ。 これ以降、現在の登山道の下のほうに朝日軍道が見られる場所もあるとのことだったが、よくわからなかった。 朝日に照らされた、笹原の気分よい道を進む。日本海側から爽やかな涼風が届き、暑さはほとんど感じない。しかし道が尾根の東側を巻くような場所は風が遮断され、暑い空気がよどんでいるようだ。 ひとつひとつ、ピークに上がっていく。その度に眺望は雄大になる。そして右手に大鳥池が大きい。 以東岳頂上は、もうすぐ手の届くところにありそうで、なかなか着かない。目の前の斜面を一気に登り、以東岳(1771m)に着く。 360度の展望。北側には大鳥池が、まるで熊の皮を広げたようで面白い。昨日はあの池のほとりからここを見上げていた。そして頂上の直下には以東小屋、脇にまだかなり大きな残雪がある。 今まで見え隠れしていた南方向の縦走路も全貌を現す。稜線はここ以東岳からは少し下がった位置に伸びているが、きつそうなアップダウンはなく歩きやすそうに見える。 そしてこの稜線を最後に締めているのが最高峰の大朝日岳。尖がった姿が印象的だが、ここからはまだまだ遠い。今日・明日とあの尖峰を目指してひたすら南下していく。
以東岳から緩い斜面を下って行く。タカネマツムシソウ、そしてハクサンイチゲがあちこちに大きな群落を形成している。季節的に少しずれているこの2種の花が同時期に盛りになっているとは、さすが東北の山だ。 またここのハクサンイチゲは北アルプスなどに咲くものよりも茎が太いように見える。また、一本の茎に咲く花の数が少なく、1輪しかつけていないものも多い(北アルプスなどでは3~4輪が多い)。これはより厳しい条件の下でしっかりと花を咲かせるための対応であろうか。 それにしてもこのハクサンイチゲの群落が実に多い。朝日連峰がハクサンイチゲの山とは全く知らなかった。 そしてその先はお花畑のオンパレード。タカネマツムシソウ、オオバギボウシ、シラネニンジン、ハクサンフウロ、トウゲブキ、ハクサンシャジン、ヨツバヒヨドリが至るところで大群落をなす。そしてウメバチソウ、ミヤマリンドウ、アキノキリンソウ、ヨツバシオガマ、アザミなど次から次へと現れる。日本アルプスや秋田駒、谷川岳に劣らない、いやそれ以上の花の名山との印象を持つ。 また、6月末頃の初夏に歩けばヒメサユリなどまた違った顔ぶれにお目にかかれるだろう。 小さな起伏を経ていくと、稜線上に狐穴小屋が現れる。北寒江山への登路の湿原状の場所にあり、ここではヒナザクラを久しぶりに見た。 小屋の前には水が豊富に出ていて、ここで補給する。朝日連峰の稜線上の小屋はみな自炊・寝具なしの避難小屋だが、小屋のすぐ近くに水場が用意されていて宿泊者には大変ありがたい。近くに水源がない小屋は下の沢から引水してきている。他の山域ではありえないことだ。 |