●横岳を越えて展望の縦走路を行く (国見温泉~横岳~湯森山~笊森山)
横岳から、岩手山を正面に見据えての縦走が始まる
|
朝食はおにぎりにしてもらい、国見温泉登山口を6時20分に出発する。昨日下った道を今日は登る。
少し雲が出ているが熱くもなく寒くもない爽やかな空気。今日はかっこうの登山日和となりそうだ。
ブナ林からカエデ、カンバの低木の登りへ。上部はかなり紅葉が進んでいる。正面上方には横長根が壁のように見える。
40分ほどで横長根(国見分岐)に上がる。昨日は気づかなかったが、女岳(めだけ)の展望がいいところだ。男岳(おだけ)がその名の通りのダイナミックな山容なら、この女岳もまさに名は体を表す、お椀をかぶせたような優しい、乳房の形の山である。
なお女目岳(おなめだけ)の女目とはメカケの意味だそうだ。これが秋田駒の最高点であり主峰なのだから面白い。
国見分岐から女岳
|
砂礫の道を横岳へ
|
草紅葉
|
岩手山が大きい
|
|
|
|
|
国見分岐からは紅葉の尾根道。頭上もすっかり青空となって、快適な歩きが始まる。ただ風が強い。第二展望台は風の通り道で、真っ直ぐ立っていられないほどだ。
男岳(火口原)分岐から先は大焼砂で、砂礫の歩きにくい登りがしばらく続く。歩道が柵で囲われていて、ちょっと万里の長城みたいだ。
右手に岩手山がせりあがるように姿を見せる。東面には姫神山や早池峰もよく望める。
ハイマツ帯にはミヤマダイコンソウの赤々とした草紅葉。横長根の終点、一番の高みに登り着いたところが横岳(1583m)だ。5年前は国見温泉側が雲で隠されていたが、今回は360度の大展望である。女目岳や昨日の男岳も大きい。しかし何と言ってもここからの主役は岩手山。そしてこれから歩き始める乳頭山までのたおやかな稜線が目の前いっぱいに広がる。
稜線の草紅葉はカエデの赤やオレンジ色が多く、ダケカンバなどの黄色が少ない。少し収まっていた風がまた強まり出し、焼森に着く頃は体重77kgの自分でも小走りにさせてしまう猛烈な風。
前回は腰を下ろしてのんびり休憩した山頂に止まることなく下りに入る。
秋田駒(女目岳・男岳)
|
振り返れば秋田駒
|
錦繍の道
|
千沼ヶ原を見下ろす
|
|
|
|
|
低潅木やU字溝の道にもぐったりもするが、視界は良好。前方の湯森山は山というよりは広大な丘といったほうがいい。笹の緑の中に鮮やかな赤のパッチワークが映える。丘のようなピークは今にも頂上に達しそうでなかなか着かない。関東でもアルプスでも、上越でも味わえない北東北ならではの登山道である。
振り返ると秋田駒が大きく、これを越えてきたという充実感に浸る。いつの間にか風も弱まっている。
湯森山(1471m)ももちろん展望がよい。昨日歩いた笹森山に通じる稜線も惹かれる。
八合目から秋田駒-横岳-湯森山-笹森山-八合目という周回コースも、あまりにも贅沢な日帰り山行になるだろう。もちろんそのコースをとる登山者もいるが、この好天に誘われてか、今日は乳頭山へ縦走する人のほうが多いようだ。
再び緩斜面の下りになり、熊見平という湿地帯を通過。少し登ると宿岩で、ここも眺めがよい。
足を止めてのんびりしたい場所が多すぎる。しかし今日は8時間近い長丁場。各所であまりゆっくりもできない。次の笊森山(ざるもりやま)で時間を取ることにして休憩はほどほどにする。
長い緩斜面の登りとなる。笊森山(1541m)もまたまろやかなピークではあるが、頂上に立てばそこは頂上らしく、高度感がある。展望も素晴らしく岩手山が真正面に大きい。そして眼下に千沼ヶ原(せんしょうがはら)。乳頭山も目の前だ。
西遠方に目をやれば、一番存在感のあるのが森吉山。地元秋田県の登山者にとってはこの山に思い入れがあるのか、その端正な姿を見て感激している人が何人かいた。
岩手と秋田の県境にあるこの縦走路を歩くと、秋田県の人は森吉山、岩手県の人は岩手山が気になるのだろう。そして秋田駒は両者に共通する名峰ということだ(本当は「秋田」駒という呼び方は公平でなく、単に駒ヶ岳と言うべきだろう。雫石町の登山ガイドにもそう書かれている)。
また千沼ヶ原の先にわだかまる三角山というピークは、頂上部が紅葉で真っ赤である。まるで赤いシロップをかけたようだ。
|