新潟市のビジネスホテルから出発。朝日眩しい中を正面の山に向かって車を走らせる。
3年前の同じ日、大蔵山から菅名岳に登り豊かなブナ林を満喫した。もう一度見てみたいと思い、今年の新潟行のメインとした。今回は反対側の鳴沢峰から登り、菅名岳まで稜線縦走する。
新緑のブナ林(丸山尾根)[ 壁紙サイズ(1806×1200) ]
|
小山田の住宅地に入って細い林道を進み、小山田ヒガンザクラ樹林駐車場に着く。早朝のせいか他に車や登山者は見られない。
もう5月なのでヒガンザクラはみな葉桜になっている。前回も来ているが、園地につけられた急な斜面を上がっていくことから、今日の登山は始まる。
小山田から鳴沢峰への登頂には、五葉コースという一般コースがあるが、今日取るのは尾根伝いに登っていくルートである。途中、大谷山という眺めのよいピークを通る。
シラネアオイの群生地がある。花はもう終期だった。周囲に見られる一面の白い花はシャクだそうだ。
あずまやの立つ休憩地を過ぎ、薄暗い樹林帯を抜ける。尾根に上がるとしばらくして若干見通しがよくなり、鉄塔の基部に立つ。背後に新潟平野が見下ろせるようになった。しょっぱなからきつい登りが続くが、ユキグニミツバツツジやオオタチツボスミレなど花も多く見られて気が紛れる。
2つ目の鉄塔、さらに登っていくとブナ林に突入。もうすでに新緑、グリーンシャワーの森になっていた。新潟、特にこの下越地方の山では、標高およそ400~500mがブナ林帯となっていることが多い。1000mを越えてようやくブナの見られる東京周辺の山を見慣れていると、植生の違いに驚く。
その上、東京周辺は下部が杉や檜の植林帯になっている山が多く、ブナやミズナラなどの広葉樹が芽吹くのは5月の中旬になってからなのが普通である。新潟の山のほうが新緑を楽しめる時期が早いのは興味深い。
道はよく踏まれている。そして登れば登るほど、ブナの密度は増す。上部が明るくなってくると、大谷山の山頂となる。649m三角点と鐘があり、展望はすばらしい。北側に五頭山塊の菱ヶ岳が大きく、その後ろに飯豊連峰も春霞の中に浮かんでいる。
進行方向には、てっぺんが丸く突き出た鳴沢峰や、その稜線上に菅名岳の姿がクリアに眺められた。雪の時期は、ここ大谷山のみを目的で登ってくる人も多いと言う。
再びブナ林へ。いったん大きく下って緩く登り返す。イワウチワがあちこちで花をつけているが、開花のピークは過ぎている。雪解けした直後に歩くと、一面の花畑になっていることが多いので、このあたりは雪が解けてしばらく時間が経ったのだろう。今年の新潟の山は雪解けが早かったようだ。
鹿返道(しかがえりみち)という平坦地で、馬下(まおろし)保養センターからの道を合わせる。ここで今日初めて指導標にお目にかかる。足元にはピンクのイワウチワがたくさん咲いていた。
そしてさらに長い急登となる。木々の緑が淡い色になり、このあたりで初めて登山道に残雪を見る。
右手に見える尾根は、隣りの菅名岳に直接突き上げる丸山尾根だろう。ところどころに白いものが見える。2時間ほどの歩きの中だけで、季節がいっぺんに逆戻りしていくのが面白い。
右手から五葉コースの道が合流する。そちらは「小山田へ」という標識がつけられていたが、自分の登ってきた方向には特に何もなかった。鳴沢峰から下山して、馬下の道を下る人は多いと思うのだが。
上部はすっかり冬木立となって、さらなる登りで待望の鳴沢峰に到着する。登山口から3時間かかった。なかなか登りごたえのある道だった。
五頭山塊や飯豊、また川内山塊の山々がパノラマで眺められる。春霞みでくっきりと見えないのはしょうがない。晩秋から初冬に来たらドキドキしそうな展望が広がっているのだろう。
菅名岳への稜線へ歩を進める。低潅木が茂るが展望のいい、気持ちよい尾根歩きとなる。
残雪はたまに踏むのみ。3年前の大蔵~菅名間は、同じ日であったにもかかわらず50cmくらいの残雪がずっとあったので、年によってこんなにも違うのかと驚く。ネットの報告などで何となく察しはついていたが、こうも雪が少ないとは思わなかった。
GWの新潟の山を歩くのなら、雪はもう少しあったほうが楽しい。昨日の中越の山も思ったほど雪はなかった。
展望のいい道を緩やかにアップダウンし、菅名岳の山頂に到着する。鳴沢峰までは2人に会っただけだが、ここはさすが主峰の頂上、大勢の人が休憩していた。やはりここにも残雪はなく、山頂の半分が白かった3年前とは大違いである。
大蔵山経由で登ってきた人が、水を汲みに沢に下りたらヒルがいた、と言っていた。大蔵・菅名を始め、川内の山域はヤマヒルがいるところである。5月初旬ならまだ大丈夫と思っていたが、沢筋ではやはり活動を始める時期に入るようだ。今日のコースはずっと尾根伝いなので、問題はないと思う。
丸山尾根を下山する。これは3年前と同じだ。前回はしばらく残雪を踏んでの下りだったが、今日はぬかるんでいるものの雪はない。雪があるほうが歩きやすい。
高度を落とすとブナの芽吹き、淡い新緑が復活する。途中からは見ごたえのあるブナ純林である。樹林越しに登ってきた尾根の方角を見ると、残雪と新緑のコントラストが実にすばらしい。登る人も下る人も、瑞々しい新緑に酔いしれながら歩いているように見える。
椿平、どっぱら清水への分岐を見送り、さらに尾根を直進。広葉樹の混合林となると、右手に小山田に下る急な階段道が伸びていた。転落しないように慎重に下りる。
林道に下り立ち、10分ほどで駐車場に戻ってきた。車が10台ほど停まっていた。
やはり期待にたがわぬブナの山だった。紅葉の秋も歩いてみたい気がする。リピーターになりそうな山である。
明日は雨予報なのだが、とりあえず明日登る予定の山の麓まで行くことにする。仮に明日登れなくても、朝のうちに帰京できれば渋滞にも巻き込まれず済みそうなので、宿泊することにした。