~草原から岩稜へ、初夏の花の山旅~ たにがわれんぽう ばていけいじゅうそう 2008年7月12日(土)~13日(日) 白毛門~朝日岳~清水峠~谷川岳 |
●快晴の青い空と千島笹の緑 外が白んできた。テントの撤収がないので朝の作業は食事だけ。4時半に清水峠を出発する。 今日は長丁場だ。なお昨日の人は1時間前のまだ暗い時間帯に出て行った。もちろん自分と同じコースである。 朝露が多そうなので雨具の下を履いていく。
まずは冬路ノ頭(1590m)への登りだが、笹が思った以上に深い。3年前の6月下旬にここを歩いたときは、千島笹もまだ茶色がかっていて歩きやすかったが、7月になると笹は生え代わって緑色を帯び勢いを増すようだ。 歩きにくいが雨具をつけていて正解だった。それでも雨具はすぐに、腰の当たりまで泥だらけになってしまう。 もうひとつのやっかいものはブヨなどの虫の大群だ。湿度が高いせいか、自分にまとわりつく虫は半端な数ではない。やはりCO2を発する物体を好むのだろうか。 虫は容赦なく顔に当たるし、後ろを見たらザックを中心にして、おぞましいほど飛び交っていた。 笹と虫、2つの問題点をかかえながらも、周囲の景観はそれを補って余りあるものだった。 ガス一色の昨日とはうって変わり、見事としか言いようがない360度の眺めである。歩き出しの時こそ少し雲が出ていたが、日が昇るにつれみるみる快晴の空に。
七ツ小屋山(1675m)で、蓬峠の小屋からの縦走者と会う。ここから先も笹が多いという。しかし晴れてよかったとも。今日ここを歩く人たちはみな思いを共有しているだろう。 やがて空気もカラッとしてきて虫がいなくなった。そしてニッコウキスゲ、オオバギボウシ、ウツボグサ、タカネニガナ、ムシトリスミレ、ヨツバヒヨドリ、タテヤマリンドウなど高山植物のオンパレード。 やはり7月はここ谷川連峰の一番の花の季節である。ダイモンジソウ、ハクサンフウロなど盛夏の花も咲き、6月に見る顔ぶれとも少し違っている。 やはり山は緑色がいい。一面の千島笹の緑と絹雲たなびく青い空、今日は上越国境最高の山日和となった。 蓬峠で一休みしたのち、さらに高度を上げていく。武能岳への登りは頑張りどころだ。 振り返ると昨日歩いてきた笠ヶ岳、朝日岳の大きな姿が見守ってくれている。その奥には巻機山へ続く稜線、さらにその先に残雪をしたためた平ヶ岳も。 そろそろ笹の背も低くなり、雨具を脱ぐことにする。そして上もTシャツになる。
重い荷物がつらいが、最後のひと踏ん張りで武能岳(1760m)へ。振り返ってさっきの七ツ小屋山よりも高いことを確認する。しかし茂倉岳・一ノ倉岳の稜線がさらにまたダメ押しで高い。 いったん下って、茂倉への300mの高度差の登りとなる。南の赤城山、北の苗場山の眺めに励まされさらに上を目指す。前回、下りにとったときは楽させてもらった道だが、天気は今日のほうがずっといい。 登るにつれ傾斜は増すが茂倉岳避難小屋が同じ高度のあたりに見え、苦しい登りももう少しと感じる。力を振り絞って茂倉岳(1978m)の頂上に立つ。谷川連峰とそれを囲む上越の峰々が勢揃いで出迎えてくれた。それとトンボの大群。下界の暑さを避けて高いところに集まってきている。 上越国境稜線の要所に位置する茂倉岳は、この馬蹄型の山脈を見渡すには最高の展望台である。 正面に笠~朝日岳が大きく、その手前の清水峠から、うねうねと曲がりながらここまで続く千島笹の稜線が素晴らしい景観を形作っている。 清水峠のJR巡視小屋もここから見える。苦労してここまで登ってきたのにそれは意外なほど近くに見え、ちょっと夢でも見ているような感覚にとらわれる。 昔の人々も、やはりこの眺めに感動しながら峠越えしたのだろうか。それとも、今のように整備された道ではなかったろうから、背丈以上に伸びる笹に苦悶し、展望を楽しむどころではなかったのだろうか。 そしてはるか眼下の湯檜曽川や土合地区付近、そして南方にはこれから向かう谷川岳の非対象山稜がダイナミックだ。もちろん万太郎山や仙ノ倉山など主脈の峰々、苗場山は雲に隠れてしまったが朝日岳の奥には平ヶ岳、そして尾瀬の至仏山も高くそびえている。 さすがの好天気も、次第に大きな雲が谷川岳付近を覆うようになる。時折自分のいる場所が日陰になり、暑さがしのげるのでホッとしたりもする。 そよぐ風は涼しく爽やかだが、無風になると暑さがこたえる。左腕を見ると二の腕あたりが真っ赤だ。日焼け止めの塗り方が甘かったようだ。 |