山の写真集 > 谷川岳・越後・信越 >入叶津から浅草岳
  • -紅葉とスケールの大きなブナ林-
  • 入叶津登山口-平石山-浅草岳-ブナ平
  • 越後/会津
  • 新潟県/福島県
  • 浅草岳(1586m)
  • 2018年10月21日(日)
  • 14.2km
  • 7時間35分
  • 1141m(入叶津登山口-浅草岳)
  • (前夜車中泊)
  • 見晴らしの湯こまみ (小出)
  • マイカー
天気1

 

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2018年10月21日(日) 前日発
練馬IC 13:50
  関越自動車道
小出IC 16:40
  国道17,252号
18:30 只見駅前(泊) 5:55
  国道289号
6:05 入叶津登山口 6:10
6:40   叶津川眺め
6:52   栃の木清水
7:00 山神の杉
7:53   平石山
8:32   沼の平上分岐
9:40   避難小屋跡
10:10 浅草岳 10:40
11:05 避難小屋跡
12:20   沼の平上分岐 12:30
13:30   山神の杉 15:10
13:35   ブナ太郎・ブナ次郎 13:45
13:50   山神の杉
14:37 入叶津登山口 14:45
  国道289, 252, 17号
見晴らしの湯こまみ立寄り
17:45 小出IC
  関越自動車道
21:25 練馬IC

 

8月に途中撤退した入叶津(いりかのうづ)ルートで浅草岳に登る。夏真っ盛りの草ぼうぼうの登山道も、10月ともなれば随分落ち着いただろう。過去のネットでの山行報告も10月に多く歩かれている。
しかし、たった2ヶ月足らずで様変わりしてしまうというのも何となく信じにくく、本当に歩けるのかどうかは実際行ってみないと分からなかった。

日本ブナ百名山・浅草岳


浅草岳山頂から田子倉湖と深い山並みを見下ろす

今回もガスの中の入叶津登山口

入叶津登山口

前回草ぼうぼうで引き返した地点は、踏み跡上の草がおとなしくなって容易に通過

夏と比べて

沼の平への分岐点である山神の杉。周囲を見渡しても、杉の木はここにしかない

山神の杉

紅葉の落ち葉道が続く

落ち葉道

会津側には深い雲海ができていた

雲海

平石山からは斜度のない豊かなブナ林が続く

平坦なブナの道

ブナは枝いっぱいに黄葉を展開させていた

枝いっぱいの黄葉

雲海を抜けて青空の下のブナの道

ようやく青空

ブナの黄葉

黄葉続く

ヤマウルシの赤も鮮やか

赤も競演

鳥がブナの枝上に止まり、殻とともに実を落としていった

ブナの実

沼の平上分岐から先は左手が開け展望が楽しめる

稜線は好展望

ミネカエデの赤とマンサクの黄

赤と黄

蔦を一面に絡ませたブナ

蔦絡まる


とにかく遠いので、前日の昼間に出発する。この日、北陸側は雨予報となっていたが、実際は群馬県中部の赤城あたりですでに雨模様となり、関越トンネルをくぐるとかなりの降りになっていた。
夏と違い日が短くなっているので、前日のうちに福島県側に入ってしまいたい。小出から国道で山に入ると日も暮れ、険しい六十里越えの道は真っ暗の中の雨で運転も難儀した。只見駅前の駐車場で車中泊させてもらう。

翌朝、雨は上がったがあたりは一面の濃霧だった。会津地方ではよくあることで、山の上は晴れているだろう。
只見駅から10分ほどの運転で入叶津登山口に着く。駐車場はあっとびっくり、朝6時ですでに10台近く停まっていた。ヒメサユリで全国的に有名化した浅草岳も、紅葉なら入叶津ルートが穴場であることはまだあまり知られていないと思っていた。それでもこれだけの人が来ている。今日の浅草岳は各ルートからの登山者で賑わいそうだ。
自分としては、入叶津道を歩けば浅草岳の一般ルートは一通り歩くことになるし、何と言ってもブナ林の素晴らしさには定評のあるルートである。

前回の苦労に基づき、スパッツの上にレインウェアの下を履いていく。濃霧なので昨日の雨は乾いていないだろう。登山口から登り始めると、草の丈はそれなりにあるが、前回のような膝上までずぶ濡れになってしまうようなことはなかった。
叶津川眺めから下部のブナ林を抜け高度を上げていくと霧も薄くなってきた。大きなトチノキが立つ栃の木清水の先、前回ジャングル状の藪で引き返した地点も難なく通過、すぐに山神の杉に到達した。
前回の引き返し地点からもう目と鼻の先であり、この先はもう藪もなさそう。あの時もうほんの少しだけ頑張っていれば通過できていたことがわかった。でもその時はそうとは知らなかったので、致し方ない。レインウェアの下は脱ぐことにする。

山神の杉から先、やや滑りやすいところがあって補助ロープがついている。巨大なブナが立っていた。直径はおそよそ120cmくらいか。急斜面を背にし、会津の山々を見下ろしていた。この巨樹はここから始まる重厚で壮大なブナの森の入り口だった。
尾根に上がったところには平石山の表示があった。ここから緩やかな、というよりほとんど高低差のない樹林の道がしばらく続く。ブナ林は紅葉がかなり進んでおり、緑と黄葉のミックスした状態から次第に黄金色の森に移行していく真っ最中である。
高木層は見渡す限りのブナで、地面に落ちているのも全部ブナの葉である。少し進むと日本海側の山の特徴である照葉樹が腰の位置を覆うようになる。
鳥が集団で一本のブナの林冠にやってきた。するとポトポトと音を立てて殻と実が一斉に落ちてきた。

やがて少し登りとなり、沼の平上分岐に着く。ここからは左手が大きく開けた灌木帯となった。
すだれ岩の上部で、会津や只見の山々が一望となる。雲海がすごい。
ブナやナナカマド、ミネカエデ、オオカメノキ、マルバマンサクなど紅黄葉の競演である。黄色というか、白っぽくなった大きな葉はコシアブラか。青空いっぱいになったが時折覗く浅草岳山頂あたりはまだ雲がかかっている。

周囲の木々が低木化してきて、ぬかるんだ道を歩く部分も増えてきた。登山道は眺めの良い稜線沿いから、少し内側に入っていく。やがて笹原の斜面に出て、水の流れに出会う。そこには古い木道が敷かれていた。ここは天狗平というところか。
東面が大きく開けて会津の山々が一望される。この笹原に以前は避難小屋があったと思われるが、今はない。浅草岳に初登頂した15年くらい前は、山頂からこのあたりを見下ろして避難小屋が確認できた記憶がある。

避難小屋跡がある湿地帯が広がる。会津の山々が眼下に

草紅葉のスロープ

ミヤマナラの紅葉は赤褐色になる

ミヤマナラは赤

草紅葉に彩られた斜面を上る

木道を上る

浅草岳山頂から見る、会津・只見の重厚な山並み

重厚な山並み

さっき歩いてきた木道を登山者が上ってくる。入叶津ルートの登山者はそこそこいた

登山者の姿が

ブナの黄葉が青空に映える

黄葉と青空

オオカメノキは段階的に、様々な色に紅葉していくようだ

オオカメノキ

ブナの黄葉をバックにナナカマドの赤い実が鮮やか

ナナカマド

平石山付近はブナの杜と呼ばれているようだ

ブナの道を下る

ブナ太郎は2メートルほどの丈のところで折れ、太い幹が登山道に倒れていた

ブナ太郎


千島笹の脇に付けられた踏み跡をしばらく登っていく。ミヤマナラの葉は赤茶色に紅葉していた。ミズナラの低木化したのがミヤマナラということだが、ミズナラは一般には黄葉する木だ。
もっとも、ミズナラの中にも(見たことはないが)真っ赤に紅葉するのもあるようで、同じ樹種で紅化、黄化するのがあるのは何が要因になっているのか、興味のあるところだ。

再び木道歩きとなり、前方の眺めも一気に開ける。山頂はもう目の前だ。田子倉湖が見えてきた。
展望の道を登って頂稜部の一角に出た。数分歩いて山名板のある浅草岳山頂である。登山口から実に4時間もかかった。長い長い入叶津道であった。

他のルートからの登山者がどんどんやってきて、山頂は大賑わいである。入叶津ルートを歩いてくる登山者も少ないわけではなく、振り返るとさっき通った笹原の木道を歩いている人影が複数見える。
山頂からの眺望は折り紙つきだが、南面に大きな雲がかかり越後駒など周囲の山々は見えにくい。足元には3年前登った只見尾根、さらに鬼ヶ面山の稜線も紅葉に彩られていた。

山頂でのひとときを満喫し、下山に入る。同じ道を下るのだが、今日はまたあのブナ尾根を歩けると思うと楽しかった。
笹原から灌木帯を抜ける。すだれ岩付近で再び視界が開ける。あれだけ大きな雲海がひとかけらもなくなり、只見町と思われる街並みが見下ろせた。南の大きな雲も取れてきて、遠くの山が望めるようになる。
明るさが増すとブナの黄葉もナナカマドの赤い実も一際鮮やかな色合いとなる。紅葉の山はやっぱり晴れている方が何倍もいいのだが、予報がよくても得てして雲が日差しを遮る時間が長かったりする。10月の山は特にそういう傾向がある。

沼の平上分岐で少し休憩する。予定の時間を大幅にオーバーしている。今日は長くても7時間くらいの行程と見ていたので、朝6時過ぎに出発して13時から14時の間には下山できているかと思っていたが、そんなレベルではなかった。
でもこのブナの道を急ぎ下ってしまうのはもったいない。日没までに下山できればよし、と考えることにした。

平石山を後にすると、木々の葉の色は急速に緑の割合が増えていく。いやらしいガレ場を通過し、山神の杉に戻ってきた。ここから沼の平への道が下っているが、崩落のためトラロープが張ってある。しかし下り始める手前のブナ太郎まで行ってみることにする。
道はよく、ブナ平の場所を表す標柱も確認できた。そこから数分、巨大なブナの倒木があり登山道に横たわっている。これがブナ太郎だった。この直径130cmくらいはあろうかという巨樹は、地面から2mくらいのところで折れていた。しかし存在感は半端でなく、まさにこの一帯のあるじのように威光を放っていた。
そこからさらに奥、沼の平へ下り始める手前にはブナ次郎がいた。こちらは直径1mを超えたくらいで、まだ若さがある。登山道はここで念押しのトラロープがかかっていて、立ち入り禁止を示唆していた。沼の平に下るのは自己責任となる。自分は引き返す。
ブナ平はこの時期まだ緑の森だったが、ここが紅葉する頃は浅草岳山頂部にはすでに白いものが降り積もっているのかもしれない。

山神の杉に戻り、下っていく。朝は霧の立ち込めた下部のブナ林は、やや傾き始めた日を十分に浴びて光り輝いていた。
入叶津登山口には14時半に帰還。実に8時間を超えたロングピストン山行となった。駐車場の車ももうだいぶ出払っている。しかしそれだけブナなどの紅黄葉にどっぷりと浸かれた至福の8時間だった。

入叶津道はやはり、浅草岳の他のルートでは味わえない山の深さや景観を味わうことができる。山はルートの数だけその山がある、といういい例である。

日本ブナ百名山・浅草岳