天気はよさそう。予定にはなかった鷲羽岳を往復する。登頂は今回で3度目。山頂は近くに見えるが着きそうでなかなか着かない。 特に危険なところはないが、途中から傾斜が増して浮石の多い道となる。
鷲羽岳頂上からは素晴らしい展望。槍・穂高から常念、大天井、水晶岳、黒部五郎岳、薬師岳、鹿島槍、雲ノ平などぐるりと見渡す。乗鞍や木曽御嶽も。そして明日の行き先の水晶岳、そして赤牛岳が遠くに。
どこを向いて腰を下ろすか迷う。朝の澄み切った空気が爽やかだ。
鷲羽岳から望む槍・穂高
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三俣のテント場に戻る。フレームが折れているのに気づく。とりあえずテープで補修する。
食事をしてから雲ノ平に向けて出発。黒部源流点へ下ってから、祖父庭園への登り返し。日が高くなって背中炙りの登りになってしまったのが計算外。汗は不思議とかかないが体力を消耗する。
急登がついえ、ハイマツを越えるとようやく雪田のある緩斜面に出る。チングルマが咲きホッとできる場所。祖父岳の頂上部を右に仰ぎながら緩く登る。
祖父庭園の分岐になかなか着かない。雲ノ平山荘とテント場が見えてきた。登山者も現れやっと祖父庭園分岐に着く。ここからテント場へは目と鼻の先、と思ったらその道が植生復元ということで通行止めとなっていた。
スイス庭園を経由していく以前の道が復活しており、テント場へもその道を行かなければならずかなりの遠回りになる。数年前からこうなっていたようだ。
この遠回りの道はハイマツの尾根からガレ場、残雪の上を歩く場所もあって慎重を要する。スイス庭園から、雲ノ平山荘とテント場を結ぶ木道に出る。テントの申し込みに20分かけて山荘に寄り、ビールを調達して雲ノ平テント場に下りる。
フレームが折れたテントはテープで補修がきかず、設営できなかった。折れた部分を保護するエマージェンシースリーブを持っていなかったので万事休す。困り果てた挙句、周りの人にペンチとエマージェンシースリーブを借り、なんとか設営にこぎつけた(ペンチは折れた部分にできた凹凸を平面化するために使用)。
黒部五郎岳は雲がかかってしまったが夏色の青空が気持ちいい。夕方、スイス庭園に行き、大きな水晶岳を真正面から見る。雲ノ平から見る水晶岳は実に立派。赤牛岳や薬師岳、高天原もここから見ることができ、スイス庭園は雲ノ平でも屈指の展望のよい場所である。
7月31日(4日目)雲ノ平~水晶岳~赤牛岳~奥黒部ヒュッテ |
昨日以上に晴れ上がった。一転の雲もない快晴の空を、北アルプスでは久しぶりに見た。
想定外の迂回路による遠回りもあり、今日はおそらく歩行だけで10時間は越えそうな長丁場。暗いうちにテントを撤収し出発する。
迂回路からは水晶岳が目の前。谷を隔てたすぐ近くに並走する尾根をこれから何時間もかけて歩こうとするのは、何か不思議な気がする。祖父岳へは1時間以上かかってしまった。昨日の鷲羽岳に負けない360度の眺め。今日のほうが空気の透明感があってさらに遠くまで見える。黒部五郎岳や薬師岳など、朝日を浴び明るい山稜。深く切れ込んだ谷間に、まだ日の差さない黒部川源流。早朝の祖父岳から望む陰と陽の山岳展望。水晶小屋から水晶岳への孤高の稜線はまだ夜明け前だ。
岩苔乗越からワリモ岳北分岐まで登り返し、目指す方向に望む山は水晶岳、赤牛岳に絞られてきた。
普通、山小屋は下りついたところにあることが多いが、水晶小屋は標高2900m付近の裏銀座縦走路の接点に位置していて、山に登っていく感じになる。ハクサンイチゲ、チングルマのお花畑越しに薬師岳が大きい。高度を上げていくと槍ヶ岳の左方に富士山が姿を現した。
水晶小屋に着き、水分補給のためジュースを買う。ザックには1.5リットルの水が入っている。今日のコースは基本的に水は得られなさそうで、ただあまり多量に携行すると重くなって行動にさしつかえる。気温が高いので1.5リットルもかなりギリギリの線だ。
水晶岳に向けて出発。出だしはここも、植生回復のために登山道が付け替わっている。イワオウギやイワツメクサ、チシマギキョウを見る。ほぼ平坦な道を進み、だんだんと岩場の厳しい登りとなる。水晶岳は山頂に近づくにつれ岩山の様相を強め、人が近づくのを拒んでいるようななりをしている。左側は奈落の底。女性にはきつそうな大きなギャップを登り、大岩を縫うように高みを目指す。
着いた水晶岳へは2回目の登頂。ここからの眺めは、「四周全て山である」と深田久弥氏が日本百名山で記しているように、本当にほとんど山しか見えない。前回来た時もそういう印象を持っていたが、今回よく目を凝らすと黒部湖が見え、反対側には遠く富山の町並みが見えている。黒部湖は人造湖なので、「何か人気臭いもの」が全く見えない山と言うわけではなかった。山頂部も岩ゴツゴツで、眺めは素晴らしいもののあまり居心地はよくない。でも北アルプスの中心部にある重要な峰である。