2007年8月11日(土)~8月13日(月) |
翌朝5時に起きる。空は雲ひとつない。こういう好天時はテントがよく結露するのだが、不思議と全く結露していない。気温がそう低くないせいか。 槍沢の谷の方向に、南アルプスそして富士山がくっきりと朝焼けのシルエットを形作っている。八ヶ岳も雲海に浮かんでいる。 振り返れば右半分から赤くなり始めた槍ヶ岳が、泰然とそこにある。 30分の急な登りを経て槍の肩へ。この朝早くから、槍の穂先へ登り道はもう人また人である。自分もその中に入り、軽身で槍ヶ岳頂上を往復する。 25分の岩登りはなかなか骨っぽい。しかし先週の五竜岳の上り下りと比べれば、落石しやすい場所がなくて安心して登れる。
親子2人で登っているのが多く見受けられる。一生懸命息子に登り方を教える様は、「登山家」お父さんの威厳の見せ所だが、息子を頂上に立たせたいという純粋な気持ちもよく伝わってくる。 梯子を2つ上って槍ヶ岳頂上(3180m)。素晴らしい展望である。 先週登った鹿島槍から白馬、立山。眼下の西鎌尾根に続く双六岳、三俣蓮華岳、鷲羽岳、その向こうに黒部五郎岳も。このあたりの山稜はハイマツの緑が美しい。 槍ヶ岳山荘を前景に奥丸山。笠ヶ岳のはるか後ろには白山が雲海に浮かんでいる。南岳に穂高、乗鞍岳。すぐ近くの南岳や穂高は岩だらけの茶色の峰々。 そして雲海の向こうに富士山、南アルプス、八ヶ岳。新潟から静岡まで見えてしまう頂である。北鎌、東鎌、西鎌尾根など眼下の眺めも素晴らしいことから360度展望というだけでは足りなくて、540度展望とでも言いたいくらいだ。 登りとほぼ同じ時間をかけて、槍の肩へ下る。改めて富士山の眺めを目に焼き付けてから、指導標の示す西鎌尾根へ足を踏み入れる。 初めはガラガラの下り、ここは逆コースだとつらい登りになる。やがて緩やかになり、ヨツバシオガマを見る。白花のものも混じっている。 今の時間からすれ違う人が多いが、朝早く槍平を出発した人たちであろう。 西鎌尾根は適度のスリルと、それに何と言っても四囲の展望。笠ヶ岳を中心とした飛騨の山々はハイマツの緑鮮やかだ。 そしてその後ろに一面に広がっている雲海。右手に伸びる白砂の裏銀座縦走路。左には焼岳と乗鞍岳。空の上を歩くような感覚で稜線を歩く。 振り返れば、朝日を背に受けた槍が意外なほど高いところにそびえている。もうかなり高度を落としてしまった。
岩稜を越えていくと尾根が広がって、残雪とお花畑が多く現れる。クルマユリやハクサンフウロ、ミヤマコゴメグサ、そして昨年は北アでほとんど見られなかったコバイケイソウが群落をなしている。 樅沢岳を目指して目の前の高みを登るがまたその先にピークがある。槍方面から歩くと樅沢岳かと思って登るピークが4つもあった。 やっと登りついた樅沢岳(2755m)頂上からはまとまりのある槍、穂高の姿が印象的だ。槍の肩で富士山の見納めをしたが、ここ樅沢岳を下れば槍・穂高の姿も次の日までしばらくお別れとなる。 |