タイトル
上高地-槍沢-槍ヶ岳-双六-新穂高
2007年8月11日(土)~8月13日(月)
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●大きな槍を正面に見ながら
8/11(土) 新宿~上高地~徳沢~横尾~槍沢~大曲り~殺生平  晴れ、夕方霧

ババ平
ババ平キャンプ場から正面に東鎌尾根を望む

登りが多い道となる。センジュガンピがこのあたりには多く咲く。やがてババ平のキャンプ場に着く。
ここは昔の槍沢小屋で、度重なる雪崩に会い、今の場所に移動したとの事。現在は小屋跡の石積みが残っている。
正面には東鎌尾根の稜線が見上げられ、展望がよく開放的だ。ここでも水を補給する。槍沢コースは水を随所で得られるので、それほど多くの水を携帯しなくてもすむ。
澄み渡った夏空を割って、四方から雲がはびこり出している。

槍沢コースの見所、歩きどころはここからだ。水俣乗越の分岐を経て大曲り、ここで道はそれまでの北西から西に向きを変える。しかし槍ヶ岳は姿を現さない。
槍沢の支流をまたぐ。かがんで水をすくおうとしたら、ボールペンを流れの中に落としてしまった。以後筆記用具なしの生活となる。書くものは予備を持って来るべきだった。
しょうがないので、時間などは携帯のメモ帳に記録する。

前方の大きな塊の後ろ側にあるはずの槍を目指して、開けた谷を一歩一歩登る。
傾斜が増し、重荷をこらえながら高度を上げていくが、一向に槍が見える気配がない。おそらく、正面の一段上ところに見えるハイマツ帯(グリーンバンドと呼ばれる)ところまで上がらないと、話にならないのであろう。
グリーンバンドはまだまだ遠く、高いのである。

槍ヶ岳が見え出す
槍ヶ岳が見え出す
チングルマ
チングルマ
殺生平テント場
殺生平テント場

大きな残雪、そして天狗原への分岐にたどりつく。少し先で雪解け水にありつける。口に含むと生き返るようだ。
右斜面に咲くニッコウキスゲを見ながら黙々と高度を上げる。残雪上をトラバースしてようやくグリーンバンドの上に出る。
石ガラガラの道をさらに左にトラバースしていくと、ついに槍が姿を現す。行き交う登山者も皆「おーい、槍が見えたぞー」と興奮気味だ。手前の高台に殺生ヒュッテ、そして槍ヶ岳山荘もよく見える。

ここから見上げる槍の姿は本当にりりしく、かっこいい。なぜこの槍沢コースがいいかというと、このかっこいい槍を見上げることが出来るからだ。
槍の一番いい姿が見られる山小屋といえば、殺生ヒュッテである(ヒュッテ大槍も場所がいい)。そのために上高地から延々、1日で登ってきたのである。
槍沢コースは、長い行程の末に最初に登頂するピークが槍ヶ岳で、それまでに他の山頂を踏むことがないのも特徴である。

ハイマツの緑と3000mの岩の稜線、青い空と白い雲。視界に入るものは至ってシンプルである。大きなものに見守られながら、一歩一歩高みを目指す。
幡隆上人が槍ヶ岳開山の折に寝泊りしたといわれる坊主の岩屋、登山道の傍らにはいくつものチングルマの群落。そして左斜面にハクサンイチゲとシナノキンバイの大きなお花畑が広がる。山が人の心を魅了するというのは、おそらくこの槍沢のような山岳景観を指して言うのだと思う。
感動しながら岩の斜面を登り、ヒュッテへの分岐に入る。殺生ヒュッテ到着は14時25分、上高地から8時間だった。

テント設営地はヘリポートを避けるようにある。どこからも槍真正面によく見えるが、少し下のほうにテントを張る。
殺生ヒュッテは天水で、1リットル200円。小屋内はことのほか静かである。槍ヶ岳山荘へは一投足の位置にあり、ここまで来れば槍ヶ岳山荘へ上がってしまう人が多いのだろう。それほど混雑する小屋でもないようだ。

夕方近くになってガスが出て、槍は見えなくなる。常念岳の向こう側、安曇野のほうから雷鳴が聞こえてくる。こっちに来ないことを祈りつつ眠りに入る。


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