~錦秋の北アルプスを心ゆくまで~
タイトル
あきのからさわ、きたほたかだけ 2002.10.4.~6.
上高地-横尾-涸沢-北穂高岳-パノラマ新道-上高地
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モルゲンロート
モルゲンロートに染まる穂高連峰
朝の涸沢テント場
朝の涸沢テント場

●屏風の耳を経て上高地へ (10/6、涸沢~屏風の耳~徳沢~上高地)
3日目の朝。テントに夜露はついていない。快晴の空だが、今日は午後から天気は下り坂の予報だ。

テントをしまい出発する。ヒュッテの横を下り、横尾方面の下りに入らず、正面の山道をゆるく登って行く。
すぐに、20名ほどの団体の後ろを歩くことになる。ザックに某旅行会社のプレートを付けている。この屏風のコルを越えて行く登山路はパノラマ新道といって、けっこう歩かれているものの、冬季の雪害で荒れてしまうのか、道自体は決してよくない。山腹を巻く道は外傾が強くザレている場所も多い。
その上、設置面がもろいためだろうか、ロープを取り外してしまった所もある。

こんな道を、旅行会社はツアートレッキングコースとして選定してしまうのか。いささかびっくりである。

山道に慣れていないツアーの人を時折り抜きながら、山腹を緩く登って行く。開けた方向を見ると、北穂高岳の向こうに槍ケ岳の先っぽが見える。
目の前にダケカンバが日の光を受けて輝いている。登り切って稜線に出る。反対側に梓川が見下ろせる、眺めのいい場所だ。
右のかすかな踏み跡は、奥又白池~前穂へ向かうベテラン向けコース。屏風のコルへは左折して緩く下る。艶やかな紅葉の稜線だ。コルにザックを置き、屏風の耳へ続く急登を詰める。

コルから20分あまり、ハイマツの中の展望のいい稜線になると、ひと登りで屏風の耳(2565m)に出る。ピークは2つあり、人の少ない奥側のほうに行く。
ここは穂高連峰と涸沢の展望台として知られているが、それだけでなく大キレットから槍ケ岳、本谷と横尾尾根、槍沢方面と実に横に長い展望が得られる。さらに背後には蝶ガ岳、常念、大天井、遠くは八ヶ岳とそれに加えてうっすらと富士山まで眺められる、ここは実は北アルプスでも屈指の展望台だとわかった。
特にひとつあげるとするなら槍ケ岳だ。ここから捉えられる槍の姿は素晴らしい。

北穂、槍ケ岳
屏風のコルから北穂、槍ケ岳
前穂北尾根へ続く稜線
前穂北尾根へ続く稜線

山頂に思わず長居してしまった。尾根続きに屏風の頭があるが、曇ってきたこともあり、今回はここで引き返すことにする。
それにしても人が多い。下ってきた屏風のコルは超満員になっている。
屏風のコル
屏風のコルを見下ろす

コルから徳沢までは、緩いながらも長い下りとなる。紅葉を眺め、河原を何度か横切りながら高度を落として行く。

視界に入る木々の葉は再び、緑色を取り戻して行く。堰堤を過ぎ林道に下り立つ。ほどなくして新村橋を渡り、徳沢へ。振りって仰ぎ見た穂高連峰は、大きな雲がかかり始めている。

上高地まで淡々と歩く。バスターミナルはいもを洗うような混雑ぶり。人も車(バスとタクシー)もてんやわんや状態だ。
入ってくる車両があまりにも多すぎて、路線バスがなかなか入って来れないと言う。やっと乗れた帰りのバスから見たら、ターミナルへの入車を待っている車の列は、裕に100台以上になっていた。

いつもならこのへんで、混雑ぶりに疲れ切ってしまうのだが、今回はあの紅葉の素晴らしさがいつまでも目に焼き付いて、一種の興奮状態を覚えながらの帰路であった。

再びこの紅葉を見に来ることになるだろうか。今の時点では、どうもそんな気になれない。今年と同程度、あるいはそれ以上に色付きのよい年は今後やってくるのだろうか、再訪しても、今年との比較で幻滅することはないだろうか。
2002年秋、この地で見た紅葉そして山を、しばらくは記憶の底に留めておきたいと思う。

屏風の耳
屏風のコルからナナカマド越しに屏風の耳

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