2014年6月1日(日)前日発 |
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富ヶ谷IC |
17:35 |
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首都高 東北自動車道 |
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西那須野塩原IC |
20:35 |
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道の駅しおばら泊 国道400,121,352号 |
5:40 |
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八総鉱山跡 |
5:50 |
6:05 |
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登山計画書ポスト |
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6:20 |
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登山口(渡渉点) |
◇ |
6:55 |
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尾根 |
7:00 |
8:45 |
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荒海山
三角点往復10分 |
9:35 |
11:05 |
尾根(下降点) |
11:15 |
11:45 |
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登山口(渡渉点) |
◇ |
12:15 |
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八総鉱山跡 |
12:30 |
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夢の湯立寄り 国道352,121,400号 |
15:43 |
西那須野塩原IC |
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東北自動車道 首都高 |
19:15 |
目黒IC |
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福島県と栃木県境の荒海山(あらかいさん)に登る。
標高1581mと、周囲の山々と比べてそう抜きん出ているものではないが、奥深く下界から見えにくい位置にあり、登りづらい山のひとつである。
田代山のような花咲く高層湿原もなく、七ヶ岳みたいにいくつもの峰を連ねた尾根もない。どこか特徴を見い出すのが難しいのだが、この地域の山に毎年登っている手前、気になる存在ではある。
登るならシャクナゲの咲く季節、今だろう。
山頂近く、シャクナゲ咲く稜線に上がると一気に展望が開ける
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前日のうちに西那須野塩原インターを下りて、近くの道の駅まで入っておく。夜半でも気温20度前後、この週末は北日本から東日本にかけて猛暑級の熱波がやってきていた。
朝4時過ぎに道の駅を出発。寒くはないものの、車で塩原温泉街を抜け福島県境のトンネル近くまで上がると、道路の気温計はさすがに10度を切っていた。
会津の街道を少し走って、荒海山登山口を示す案内板に従い林道に入る。キャンプ場の入口を見てからは未舗装となる。そこから10分程で道幅が広くなり、ここが登山者が利用する駐車スペースとなっている。すでに1台の車があった。
この一帯は八総鉱山跡であり、明治時代に採掘が行われたと言うが、今はそれらしき建物もなく、眺めのいい整備された林道が1本通っているのみである。
支度をして歩き出す。頭上は抜けるような青空で、日差しもすでに強い。日中の気温上昇を警戒し早めに出発したかったので、6時前に歩き出せてよかった。
すぐに林道と分かれて登山道へ。ここにも車が1台停まっていた。沢沿いに歩いていくと、日陰には残雪がまだあり、登山道を覆っている。今日は雪の上を歩くとは思わなかった。
やがて登山計画書の投函ポストを見て、その先で沢を渡る(渡渉点)。ここが荒海山の登山口となろうか。渡渉は靴底を濡らす程度だったが、雨後などは少し苦労するのかもしれない。
谷間の山腹道を登っていく。ところどころにラショウモンカズラが咲いている。下には細い沢筋があり、登山道はやがてその沢の上に下りて、少しだけ沢歩きのようになる。ロープが設置された沢筋は倒木や石が散乱していて、かなりきつく危険度のある登りである。
ひと汗書いて何とか登り切ったが、下山の時にも注意が必要だ。
尾根に上がると、周囲はブナなどの自然林だった。今までのムシムシした空気から一変し、風が通って気持ちがいい。少し休憩する。
尾根伝いに歩き出すと、これがまた、緩やかで散歩気分で歩ける道である。険しいと言われていた荒海山で、こんなプロムナードなところがあるとは思わなかった。
周囲はブナが優勢で、ミズナラ、トチノキ、ダケカンバが混ざる、カエデ類はあまり見ない。器用にS字形に幹を伸ばしたブナがあった。
少しずつ斜度がきつくなってくると、アスナロが見られるようになる。広葉樹と針葉樹との混成林で山の雰囲気は変わり、景色の陰影が強くなってきた感じがする。小さなピークを越えていくと木の枝越しに荒海山の大きな山体が見えたが、すぐに見えなくなる。
アスナロの割合が多くなってくると尾根は痩せてきて、歩きにくさが増す。ロープのかかった急坂、というか崖のようなところを登る。頭上にシャクナゲが現れた。木の根をステップにした登りもある。
道はヤセ尾根を登ったり下ったり、どんどん山深く分け入っていく感じだ。時々、樹林の向こうに山の稜線が見え隠れするが、大方は見通しの聞かない静かな登山道である。
そのうち正面に大きな岩が現れ、ここは右から巻く。再びロープのかかった急登。下山時に注意が必要なポイントが、またひとつ増えた。
シャクナゲはところどころで花を付けているが、木はそれほど多くなく、ポツポツと咲いている程度だ。ただ花はどれもきれいで、開いたばかりのものが多い。高度を上げていくうち、日当たりがよい場所ではまとまって咲いているものも見られるようになった。
だんだんと樹林の背が低くなり、ついに稜線に出る。今までずっと樹林の中だったのが360度変わって、あっとびっくりの360度の大展望である。
背後に見える大きな雪山は何だろう。何しろ南会津には年に1度か2度くらいしか来ないので、どの方向を向いても新鮮な眺めである。山頂に着いてから同定することにする。
稜線にはシャクナゲが多く咲いていた。標高の高い所のほうがよく咲いているのは、日当たりがよく気温が高いせいだろうか。奥秩父のシャクナゲ群落に比べれば規模は小さいのだが、全山が深い緑とアスナロの黒木に包まれた山に咲く深紅色はとても目立ち、鮮やかさが際立っている。
そのまま展望の尾根を登って、小屋を左に見たらすぐに荒海山山頂である。若干木が邪魔をするがここも360度の眺めだ。
地図と見比べたら、北西に一番大きく見える雪山は三ツ岩岳から会津駒の稜線だった。これほど暑い日が続いていても、まだあんなに雪が残っているのかと驚く。また、その左に見える雪の独立峰は尾瀬の燧ヶ岳であった。てっきり越後駒かと思っていたので、これも意外である。
北には七ヶ岳の7つのコブがよく見える。その後ろに見える雪の稜線は飯豊連峰のようだ。さらに東に那須連山、南に高原山、日光連山と続く。その右に、尾根からひとつ突き出た丸いピークは皇海山かと思ったが、家に帰って調べたら日光白根山だった。
北関東の名だたる名山がぐるっと見渡せるので、眺めていると時が経つのも忘れてしまいそうである。
この山頂の東側にもうひとつ、ピークがある。尾根伝いに100mも離れてなさそうなので行ってみるが、深いヤブで残雪も一部あり、行くのに10分近くかかった。三角点があったが、眺めは先ほどのピークのほうがよさそうだ。上三依への下山路はヤブでよくわからなかった。
最初のピークに戻る。ここから南西側にも次郎岳というピークが控え、やはり尾根伝いに到達できるとのことだが、さらにヤブが深そうなので行くのはやめた。
なお荒海山は別名「太郎岳」という呼び方もある。
去りがたい山頂ではあるが、日も高くなり灼熱の山頂に変わりつつある。来た道を下山することにする。
ストックは邪魔になりそうなのでしまい、ロープ場に備えて手袋をはめる。何人かの登山者とすれ違う。地味な山であっても、やはり今がこの山の一番の登りやすい時期なのだろう。
行きで注意が必要なポイントを把握しておいたので、それほど苦労もなく下っていくことが出来た。登り始めの沢伝いの急坂も無事通過。しかし、そこで気が緩んだのか、倒木に足を引っ掛けて前のめりに転んでしまった。腕に擦り傷を負う。
どうも今日は、歩くときに足が上がりきっていないところがあったので気にしていたが、最後にやってしまった。やはり、緊張が緩んだ時が一番危ないと、身にしみて理解した。
その場所からすぐに登山口に戻る。夏のような日差しが容赦なく照りつける。小虫がわずらわしいので虫除けスプレーを使いながら林道を歩く。
やがて八総鉱山跡の駐車スペースに到着した。かなり苦労したが、奥深くいい山だった。晩秋もよさそうだが、雪が積もるとやっかいだろう。
車で10分程度の夢の湯でひと風呂浴びていく。建物の前からは、2両編成の会津鉄道が緑いっぱいの高原を走っていくのが見えた。
梅雨入り前の真夏の風景は、どこか幻がかった夢のような眺めであった。