山の写真集 > 東北 > 田代山、帝釈山
  • -展望,花,温泉と3拍子揃った名峰-
  • 猿倉登山口-小田代-田代山-帝釈山
  • 会津
  • 福島県
  • 田代山(1971m),帝釈山(2060m)
  • 2012年6月24日(日)
  • 8.8km
  • 5時間5分
  • 631m(猿倉登山口-帝釈山)
  • -
  • 湯ノ花温泉、木賊温泉
  • マイカー
天気1

 

地図
2012年6月24日(日) 前夜発
富ヶ谷ランプ 18:15
  首都高速
東北自動車道
矢板北PA泊
西那須野塩原IC 4:30
  国道400,352号、県道350号
6:35   猿倉登山口 6:50
7:45   小田代
8:10 田代山 8:20
8:35 田代山避難小屋
9:40 帝釈山 10:15
11:20 田代山避難小屋
11:45   田代山 12:05
12:20   小田代
13:00 猿倉登山口
  県道350号、国道352,400号
湯ノ花温泉、木賊温泉立寄り
18:25   西那須野塩原IC
    東北自動車道
首都高速
20:45   富ヶ谷ランプ

 

6月も下旬となり、北の山も雪が溶けて登りやすくなった。天気はよさそうなので1年ぶりに南会津に出かける。福島・栃木県境にはこの時期が適期の山がいくつかあるが、その中の2座、山頂の高層湿原で知られる田代山(たしろやま)と、尾根続きの帝釈山(たいしゃくさん)である。
南会津に行くには、高速を下りてからぐるっと回り込むように国道を走り継ぐことになり、距離以上に時間がかかる。そのため前夜発とした。


広大な田代山湿原。登山者のいる場所に山頂標識がある

猿倉登山口


猿倉登山口

中腹はシラビソなどの針葉樹林の登りとなる


針葉樹林の登り

チングルマ(小田代)


チングルマ

小田代からの登りにて、女峰山(左)、男体山(中央)など奥日光の山を望む


奥日光の山々

田代山湿原に出て、木道を歩いていくと正面に会津駒ヶ岳の稜線がせり上がってくる


広々とした湿原へ

ヒメシャクナゲ(田代山)


ヒメシャクナゲ

タテヤマリンドウ(田代山)


タテヤマリンドウ

田代山湿原には様々な高山植物が咲いていた


豊富な高山植物

矢板北PAで車中泊し、朝4時過ぎに出発。インター西那須野塩原ICから国道400号を西進、塩原温泉街を通り抜けていくアプローチは、昨年の七ヶ岳と同じだ。
会津高原尾瀬口駅から荒海山付近ではすっきりとした青空となっていたが、のどかな山村に分け入っていくうちに回りは霧で真っ白になる。
途中で左折して湯ノ花温泉を通過、しばらくいくと未舗装の砂利道となった。猿倉登山口まで11kmとある。こんなでこぼこ道をそんなに長い距離走るとは、思わなかった。いつぞや、北東北の和賀岳に行ったときも大変な林道だったが、今回は自分の車である。四駆ならまだしも、非力な軽自動車は悲鳴を上げているようだ。登山口まで4km、3km、・・・と数字が小さくなっていくのを励みに、我慢を重ねてようやく駐車スペースに出た。人気のある山と思ったら、停まっている車も少なく、ガランとしている。
支度をして歩き出す。と、200mほど歩いたところにまた、車がたくさん停まっていた。登山口を示す大きな看板もある。こちらが本当の猿倉登山口だったようだ。駐車スペースも満車状態で、やはりこの時期は混みあう山のようである。

沢を渡ってさっそく、山腹の急な登りに取り付く。ラショウモンカズラが多く咲く。前後に登山者がすでに列をなしている。樹林の中の登りで、最初はブナなどの広葉樹、高度を少し上げるとダケカンバが現れたがすぐに、シラビソなどの針葉樹林帯となった。眺めの利く場所は少なく、ときたま木の間から奥日光方面が覗くぐらいだ。
オオカメノキの白い花やムラサキヤシオの鮮やかな紫色を見ながら高度を上げていくと、頭上が開けてきた。樹林が切れ、小広い草地の小田代に出た。木道沿いにワタスゲ果穂、ミツバオウレン、コイワカガミ、タテヤマリンドウ。そしてチングルマが咲き始めていた。
突然開ける初夏の高原の景色に、気分も高揚する。日光方面の眺望がきき、進む先には田代山の山頂部が望めた。

オサバグサ(田代山~帝釈山間の樹林帯)


オサバグサ

オサバグサ(田代山~帝釈山間の樹林帯)


オサバグサ

田代山~帝釈山間は眺めはないが明るい雰囲気の樹林帯


明るい樹林帯

サンカヨウ(田代山~帝釈山間の樹林帯)


サンカヨウ

コミヤマカタバミ(田代山~帝釈山間の樹林帯)


コミヤマカタバミ

ムラサキヤシオ(帝釈山直下)


ムラサキヤシオ

帝釈山頂上


帝釈山頂上

帝釈山からも会津駒の眺めが素晴らしい


会津駒の眺め

イワナシ(帝釈山直下)


イワナシ

小田代を後に、急斜面を登ると背後が開け、日光や塩原の高原山などが望めてくる。再び木道が現れると、広大な湿原地に出た。
田代山湿原は、一帯がそのまま田代山山頂となっている。木道を歩いていくと目の前に会津駒ヶ岳がパノラマで眺められた。残雪をたっぷりしたためた長い稜線は、とても絵になる山岳展望である。
涼しい風が通りワタスゲが風になびき、さまざまな色合いの花々が草原を彩っている。池塘のどこからか響き渡るカエルの鳴き声。時が止まったような感覚は、いつ以来だろう。こういう山に最近はめぐり合っていないような気がした。

木道はこの広い湿原を一周するようにつくられている。左回りの一方通行となっているため、木道は一本のみである。尾瀬などで見る、登山者がすれ違う時の退避場所のようなものもない。人工物の設置を必要最低限に押さえているようである。
広々とした中を進んで、木道と分かれて樹林帯に入る。水芭蕉とショウジョウバカマが咲いている。すぐに田代山避難小屋があった。トイレの工事中で、資材が置かれている。登山道はこの先、ひとしきりの下りから樹林帯を経て帝釈山に続いている。
下り始めてすぐ、オサバグサの群落に出会う。八ヶ岳や東北の山で見たことがあるが、群落と言えるほどのものはこれが初めてだ。近づいて見ると、とてもかわいい楚々とした花をつけている。

道は斜度を失い、樹林の間から時折り覗く帝釈山に向かって進む。尾根の少し右下に登山道は続いている。オサバグサの群落はその後も続き、場所によっては斜面全体に広がっているところもあった。猿倉口から田代山への登りでは全く見なかったのに、こちら側の道に入るとに大群落である。
山を歩いていると尾根を越えたり反対側の登山道に入ったとたんに植生が全く変わってしまうことがよくある。オサバグサが猿倉側でなく、こちらの尾根を住み易い環境として選んだことに自然の不思議さを感じずにはいられない。

沢をまたぎ、針葉樹林の道が続く。急登、急降はないが単調で眺めのない道が続き、思いのほか長く感じる。オサバグサのほか、サンカヨウの葉も全域で見られるが、花をつけていたのは1株だけだった。まだ時期が早いようである。
やがて、長い登りに入る。色鮮やかなムラサキヤシオを見ると、上部に見える山頂部への直登となる。露岩を乗り越えるところもあってかなりきつい登りだが、だんだんと眺めがきいてくることを励みに頑張る。
登りきると、道は南側の斜面へと続き、大きな岩を縫うようにして最後の登りとなる。そこを抜けると帝釈山山頂となった。

ワタスゲ果穂(田代山)


再び田代山湿原へ

木道の回りはチングルマで敷き詰められている


チングルマ大群落

水引集落には茅葺き屋根の民家が点在する


茅葺き屋根

水引集落


村中安全

湯ノ花温泉には5軒の共同浴場がある。これは弘法の湯


5軒の共同浴場

川沿いにある木賊温泉の岩風呂


木賊温泉の岩風呂

狭い場所だが眺めは広い。再び会津駒の勇姿、その左に燧ヶ岳、至仏山など尾瀬の山。南側には奥日光の山が見渡せ、一番高い丸っこい山が白根山だろう。そして南東側には高原山。
ここはまさに東北と関東の境目であり、南と北の違った山岳景観を存分楽しめる。登山者も多く、反対側の馬越口から大挙登ってくるのが見える。狭い山頂はたちどころに満員になる。
湿原と花と展望、いろいろな魅力の詰まった山を放ってはおかないようである。

来た道を戻る。馬越口から登ってきた人にとっては往路コースとなる。雲が増えたがまだまだ青空が大きい。
田代山湿原の木道に再び出る。今度はまだ歩いていない半周分を歩く。広い湿原の中、あちこちで登山者が休憩しているが、木道上の休憩場所があまりないので、座る場所を見つけるのに苦労しているようだ。
チングルマの大群落を通り、木道の合流点に達する。もう一度会津駒を見に、北の方向へ行く。木賊(とくさ)温泉への下山路にも木道が伸びているが、歩く人が少なそうなので、そちらに入って腰を下ろせた。

猿倉へ下る。この時間でも登ってくる人が多い。田代山だけなら3時間くらいで往復できるので、午後からでも登れそうだ。
日が高くなって暑いくらいになった猿倉登山口に戻る。駐車スペースにはバスが数台停まっていた。11kmの砂利道は、下りではそれほど苦にならなかった。

時間はあるので、もちろん湯ノ花温泉に寄っていく。朝通ったときに気づいていたが、温泉地に入る手前に茅葺き屋根の古民家が建つ小さな集落がある。水引集落という場所で、昔の日本の山村風景が見られる。
山に囲まれた静かな佇まいの中を水が流れ、洗濯物も干されていて生活の臭いが感じられる。関東・南甲信地方の奥まった山村のような過疎の面影はないようだ。

湯ノ花温泉には旅館や民宿もあるが、5軒ほどある共同浴場に入る。民宿で200円の入浴券を買うと5軒全部に入れるという。温泉街から少し離れている(山を下りてからは一番近い)湯端の湯と、洗い場のある弘法の湯に入った。
源泉が熱くてうめないと入れないが、すでに誰かがうめていたようで、なんとか入れた。湯端の湯のほうは若干白濁しているように見えるが、基本的に無色透明で、温泉味の強いよく温まるお湯である。
弘法の湯のほうは他の登山者も入っていた。女湯のほうから声が聞こえてきて、地元の人と登山者とが親しく世間話などをしている。男湯のほうはあまりそんなことはなく、皆黙々とお湯に浸かっている。女性は土地の人と打ち解けやすく、うらやましい。

車で来ている利点を生かし、この山域のもうひとつの名湯、木賊温泉まで足を伸ばす。唐沢峠を越える車道を走ると、10分足らずで2つの温泉地巡りができるのだ。
一番奥地の岩風呂に入る。川沿いにある湯小屋は野趣溢れ、お湯は硫黄の香りがして最高である。混浴のため湯着の着用をすすめる看板があるものの、女性にはつらいかもしれない。

田代山・帝釈山は決して大きな山ではないが麓に2つの名湯が沸き、豊かな自然環境が保たれている。花、眺望、温泉と3拍子揃った名峰ということができるだろう。
アプローチが大変という不利はあるが、もっと人気の出てもいい山域である。