焼山-姫次-蛭ガ岳-丹沢山-塔ノ岳-大倉 |
●8時間以上かけ待望の蛭ガ岳へ 積雪は足首がもぐるくらいになる。トレースはあるといっても足跡は1つのみなので半分ラッセル状態だ。しかも水分の多い雪で重く足がなかなか前に出ない。山頂直下の急登で何度も立ち止まり、息を整える。 指導標を見て焼山山頂(1059m)に上がる。なお巻き道にトレースはなかった。山頂付近はシラカバの木が少し見られるが、植林にぐるっと囲まれており、展望台の一番高い所も林の上からやっと頭を出している。 しかし展望台に上がると、北面の眺めが素晴らしい。眼下の津久井湖が青く、周囲の山村はみな雪化粧。遠くは新宿の高層ビル群、正月から煙が立ちなびいているのは秩父のセメント工場か。
さらに遠くに筑波山、日光の山なども望める。そして右手には大山、丹沢三峰山の向こうに東京湾が光っている。丹沢の山は海が見えるのがポイントだが、今まで何回か来ている割に海を見たことはなかった。 ここまでかなり疲労困憊している上に、これほどの展望を得られたので今日はもう引き返そうかなどと思った。 しかしこの青空がまぶしいほどの天気。まだ富士山も見ていないし、年初からそれでは締まりがない。とりあえず避難小屋のある黍殻(きびから)山まで行こうと奮い立つ。 雪は深くなり、場所によっては30cm近くある。トレースも足跡ひとつのみだ。鳥屋からの道を合わせるがこちらはトレースなし。平丸分岐も同じだ。 何度も集中が切れそうになるが、木の切れ間から丹沢主脈の稜線が覗くのを励みにする。一番高く見えるのが蛭ガ岳だろう、まだまだ遠い。 黍殻山(1273m)への道はトレースなしなので割愛し、少し先の黍殻山避難小屋への道に入る。 広い台地の高台にある小屋はけっこう広く大きなストーブがある。少しだけ寒さから解放され昼食にする。シュラフがあればここに泊まるのもいいと思う。 距離的には半分あたりまで来た。しかしびっくりするくらい時間がかかっている。引き返すとすれば3時台のバスに間に合うだろうか。いろいろ計算しながらも、足は蛭ガ岳のほうに向かっている。 焼山からは幾分平坦な道が続いていたが小屋より上は長いダラダラ登りとなり、苦しいところだ。何度も立ち止まってさらに前進。 八丁坂の頭分岐で青根からの道が合わさる。とたんにトレースが太くなりこれに救われる。東野までバスで来て、青根コースを登ればよかった。このコースは焼山道より短く、これほど歩かれている道と今日まで知らなかった。 やはりあまり入っていない山域に対して、調査不足を痛感した。
はっきりしたトレースのもと、歩行スピードも上がった。緩やかになり頭上が開けると待望の姫次(1433m)に到着する。大きな大きな富士山がはじめて眼前に現れ感動。すでに午後1時を回ったが、富士山は今日はまだ雲もかからず見え続けている。 進む方向には蛭ガ岳の堂々とした山体。かなり近づいてきた印象だがまだ高い。姫次から100mほど高度を下げてしまうのが何とももったいない。しかし原小屋平のカラマツ林から望む蛭ガ岳は、まだ高度差300mを残しているものの、山頂部の小屋も見えてきて勇気付けられる。 目の前に次々と現れる支尾根をひとつひとつこなしていく。積雪は吹き溜まりですでに50cmくらいある。山頂直下 の急登となる。姫次より高度が高くなったか、何度も振り返って確かめる。
周囲は、雪化粧した山々がみるみる湧き上がる。檜洞丸や大室山、富士山の右に真っ白な南アルプスが勢揃いしている。所々ある木の階段がありがたくなる。 「蛭ガ岳まで0.4km」の場所で一休み、もう少しだ。しかしこの400mが何kmにも感じられるほど長い。氷点下近い寒さなのに持っていた1.5リットルの水はついに底をついた。 主稜線にガスが湧き立ち、富士山や檜洞丸方面の視界を閉ざす。小屋前50mで最後の小休止。そしてついに蛭ガ岳山頂(1673m)に到着する。再び目にする大都市の建物群。丹沢山や塔ノ岳に続く山並みも雪深そうだ。 丹沢も久しぶりだが、営業小屋に泊まるのも何と、一昨年(2003年)の南アルプス鳳凰小屋以来となる。小屋には10名ほどの宿泊者。みな男性だ。それでも、丹沢山に宿泊予定でここ蛭ガ岳までピストンしてきたご夫婦に会った。 その夜は夕刻にガスが出て夕焼けは望めず。しかし東側にバーンと広がる夜景は素晴らしかった。小屋はストーブがたかれているがかなり寒い。ジャンパーなど濡れてしまったのでストーブの上で乾かす。 なお自炊の部屋は喫煙室兼用だが、それほど広くない中同じサイズのストーブがたかれているので暖かい。テーブルの下に、管理人さんの愛犬パルがいた。 その夜は7枚重ね着して寝床についたがそれでも寒さがこたえた。 |