朝から雨予報だったので今日は出かけないつもりでいたが、山の方は降ってなさそうだったのでやはり行くことにした。もう8時を回っている。いつもの各停ではなく特別快速に乗れた。
金比羅神社のイワウチワ |
古里駅から青梅街道を歩く。ソメイヨシノが満開だ。寸庭橋を渡り大多摩ウォーキングトレイルの標識と分かれ入山する。スミレはナガバノスミレサイシンばかり見る。低木はけっこう芽吹きが始まっていた。
民家の手前で尾根道となる。どんよりした空模様で周囲は薄暗い。ネコノメソウ、ヒトリシズカを見る。ナガバノスミレサイシンはここでも多い。植林下を足早に歩いて小尾根を越え、鳩ノ巣からの登山道を合わせた先で金比羅神社に到着した。
沢沿いの小屋は倒壊して久しいが、もうずっと朽ち果てることなく木切れのまま残っているのがかえって不思議である。一段上がったところの社は健在だ。ヒカゲツツジは少し花期は過ぎたがまだ十分見れる。ただ例年と比べ花数が少なめか。代わりにミツバツツジがよく咲いていた。
登りに入ってすぐのイワウチワは多くが下を向いているか、花を落としてしまっていた。朝方の雨にやられてしまったのだろうか。
広沢山、大塚山への登りは、岩っぽいヤセ尾根を交えてのかなりきつい行程となる。2箇所でイワウチワが群生していて、こちらも多くが下を向いていたのだが、まだ見られる。低潅木はこのあたりでも芽吹きが始まっているものが多く、ミツバツツジも明日にでも開花しそうだ。
ヤブっぽい急登をひとまず越えると、さらにまた傾斜の急な斜面が待ち構えている。鉄五郎新道は一般登山道といってもいいほどはっきりした道があるのに、登山ガイドに掲載されていないのは、岩場があることも理由のひとつだろうが、このきつい登りが原因として大きいのではないか。登りならまだしも、下りは一層の慎重さが要求される。
標高848mの広沢山は霧の中だった。今日の天気は致し方ない。雨が降らないだけいい。
広沢山の山名板は、山名と標高の数字がくり抜かれて作られており、北アルプス栂海新道の犬ヶ岳を思い出す。
大塚山までは緩い下り登りとなる。アンテナ施設を右から回り込んで大塚山山頂へ。時間が遅いので誰もいないと思ったら、二人連れがベンチに座っていて、さらにもう一人鉄五郎新道を登ってきた。
上空が明るくなり、西のほうを見たら雲が切れ青空が見えていた。雲海を従えた御前山や石尾根の山の黒いシルエットが姿を現し始めている。今日こんな景色を見れるとは思わなかった。
雨の心配はなさそうなので、丹三郎尾根で下山するのはやめてさらに歩くことにする。前方に御岳山奥ノ院の三角形を見ながら気分のいい雑木の道を歩く。
富士峰園地のピークには登らず巻く。カタクリはさすがにこの天気では花開いていなかったが、昔に比べてずいぶん花の数が増えた気がする。あと1週間もすればかなりの花園になるのではないか。
御岳山の宿場街は人通りも少なく、しんとしていた。裏参道の道に入る。このあたり木々の芽吹きにはまだ早いが、エイザンスミレ、ヒナスミレ、カタクリ、ハシリドコロ、ヨゴレネコノメなど早春の花が次々に出てくる。
登山道自体は平坦で変化が乏しいものの、自然度が高く季節ごとに瑞々しい風景が楽しめる道である。
大楢峠はナラの巨木が倒れる危険があるということで、登山道脇に迂回して歩くようにトラロープが張られていた。城山方面へ歩いていくと左側が少し開け、奥多摩の町並みが見下ろせる。日も差してきて少し暖かさを感じる。
上坂への下山路ではイカリソウを見ることができた。
奥多摩霊園の脇に出て、登山道は終わりとなる。今日は出発が遅かったため、もう日が傾き始めていた。上坂集落の坂を下り海沢の里道を歩く。
白丸駅へは数馬峡への道を選ぶ。多摩川に沿った道は遊歩道化されてはいるがアップダウンが多く、短いトンネルをくぐるところもある。
そういえば、川を隔てた白丸駅の近くにも同じように「数馬の切り通し」と呼ばれる通り道がある。あちらはトンネルではなく、単に岩をくり抜いて作られた道だった。
このあたりは岩盤が非常に固く、江戸・元禄時代に貫通させた時はそれこそ大工事になったそうだ。それまで青梅・御岳地区と氷川(現在の奥多摩)との行き来は山越えをするしかなく、この工事によってようやく往来が盛んになったという。
以前はうどん店だったカフェの前を通り橋を渡って、一段高い所にある白丸駅に上がる。歩き出しの古里駅と同じく、白丸駅周辺もソメイヨシノが見事だった。
今日は遅い時間から歩き始めた割にはよく歩けた。奥多摩の春山歩きはやはり、このコース抜きには語れない。