雪がいっぱいの高水三山から1ヶ月あまり、奥多摩もそろそろ春を迎えつつある。積雪に伴う御岳山の登山自粛も解かれた。
この時期の定番コースである、鉄五郎新道から大塚山、御岳山に登ることにした。
青空が覗く大岳山山頂
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青梅線古里駅で下車。線路向こうの民家の庭には、ミツバツツジが鮮やかだ。ソメイヨシノも花をつけ、木によっては満開近いのもある。
青梅街道を少し歩き、大多摩ウォーキングトレイルの導標に従い小道に入る。寸庭橋を渡ってすぐに右折、山道へ。今日は少し空気が冷たい。植林伝いに歩いていくと足元にスミレを見る。
簡単な小さな橋を渡り、その先のパイプの橋の手前が鉄五郎新道の入口である。もう何度も歩いているが、バリエーションルートであることには変わりなく、取り付きがわかるまでは少し緊張する。
尾根伝いに緩く登っていく。ウグイスの鳴くのを聞いた。小さな沢をまたぎ、右手が切れ落ちた場所からは、越沢の深い谷を挟んで城山の形よい三角錐が見られるようになる。
その越沢からの登山道を合わせ、しばらく行くと金比羅神社に着く。小屋は完全に解体していた。反対側は切れ落ちており、はるか下の越沢バットレスを見下ろすとムズムズする。
祠の後ろ、ヒカゲツツジは咲き始めていた。密集地というほどのものではないが、急坂を少し下ったところではけっこう見られる。ただし足元の悪いヤセ尾根なので注意が必要。あたりを見渡すと、ミツバツツジも蕾から花開いているのがあった。
戻って、尾根を登っていく。すぐにイワウチワの自生地。期待したほど花芽が多くない。年を経るにつれてこの自生地も面積が小さくなっているように思える。それでもこの場所でヒカゲツツジとイワウチワを見ることができれば、今年の山の春が始まったことを実感できる。
急坂を詰める。鉄五郎新道の登りは遊びのない直登道が多く、気が抜けない。少し傾斜が緩くなり、岩をまたぐようになるとまた、イワウチワの群生地がある。こちらも花をつけている。下と上、いつも花期が少しずれるので、両方の場所で見られるとは運がいい。
さらに登っていく。谷深いところに残雪がベタッと張りついていた。登り着いた広沢山の山頂は南北に長く、植林の平凡な場所だ。けれどここまで登って来れば、後はきついところはない。
白っぽい眺めが前方に見えてきて、雪かと思ったらアンテナ施設の建物だった。その裏を回り込んで大塚山に達する。
朝から快晴だった空も雲が覆いはじめる。遠く見える山並みは石尾根か、白い筋が何本も引かれていた。4月としてはちょっと冷たすぎる風が、山頂をサッと通り過ぎていった。
平坦な道を進む。歩く人が思った以上に少ないのは、つい最近まで敷かれていた、積雪による登山自粛の報知がまだ影響しているのかもしれない。
富士峰園地の階段を登っていくと、早くもカタクリがあちこちに花を咲かせていた。さらに、かなりの数の花芽が咲く準備をしている。このあたりでようやく、ケーブルで上がってきた観光客やハイカーの声も聞かれるようになってきた。
御岳集落は先日の大雪で一時、孤立状態になったのだが今は道に雪もほとんどなく(日陰にごくわずかの雪があった)、宿も普通に営業している。ただし、大楢峠へ抜ける裏参道は道が崩落しているとのことで、通行禁止になっていた。
一方、御岳神社の階段に雪は残っていない。でもやはり歩く人がいつもより少なく、どことなく寂しい雰囲気である。
御岳山で引き返すことも考えたが、それではやはりあっけないので、頑張って大岳山まで足を伸ばすことにした。
長尾平分岐では、ロックガーデン(岩石園)へ下りるコースが積雪のため通行禁止になっていた。メインの道は歩く人もそこそこいて、挨拶の回数が増える。この時間だと、大岳山に向かう人、下りてくる人、数は同じくらいだ。
斜面にはエイザンスミレなど数種類のスミレ、キケマンやユリワサビなどが咲いている。ただ、御岳山付近ではほとんど見なかった残雪が、高度を上げていくにつれ目につくようになった。
綾広ノ滝分岐。指導標に張り紙がつけられている。それによれば滝までは行けるが、その先は通行禁止とのこと。張り紙には日付が書かれているので、いつ時点の情報かがよくわかってありがたい。こういうちょっとした工夫が、山ではあまりお目にかからない。
芥場峠までの登りでは、残雪を踏む箇所もいくつかある。大岳山荘までは意外と長く感じたが、梯子のついた岩場を登り下りしているうちに、ようやく建物が見えてきた。
大岳山荘は閉鎖されてすでに数年経っているが、遠めにはまだ立派な建物に見える。テラスは崩落の危険があるとのことで近づくことはしなかった。こういう建造物を、このまま誰も処分しなくていいのだろうか。疑問に思ったりもする。
山頂目指して登る。薄く雪の積もった道を歩き、ロープのかかった岩場に取り付く。今日は何故かお父さんと子どもの2人連れハイカーをよく見かける。
大岳山山頂に到着。雲が厚くなり遠望は利かないが、奥多摩や丹沢の山の眺めが得られた。富士山も8合目から下だけ見えている。
休憩しているうちに日差しが戻り、少し暖かささえ感じるようになった。大岳山は登頂してホッとする山である。
大岳山荘まで戻り、馬頭刈尾根をしばらく行く。こちらを歩く人は少ない。指導標に「東京都」と書かれている。周囲はスズタケが伸び、落葉樹が豊富な尾根道で気分がいい。木には木の名前が書かれたプレートがかけられている。よく見たら清涼飲料の会社によるものだった。
ベンチのある場所からは富士山がよく見えるが、大岳山から見たのと同じく、今日は下半分の眺めだ。白倉分岐から下山となる。最初は急なジグザグの下りだが、昔の表参道らしく、歩きやすい道ではある。丁目石がいい雰囲気を醸し出している。
どんどん下っていくと日が降り注ぎ、急に暖かくなってきた。林道に下り立つ手前でシュンランを見る。鳥居を見てさらに下り、まだ梅の咲く白倉登山口に着いた。民家の庭には春の花がたくさん咲いていた。少しの歩きで白倉バス停。
久しぶりに6時間を越える歩きとなった。春の花もたくさん見ることができ、充実した1日になった。