-笹薮が消えた奥多摩最奥の寂境-
タイトル
一石山-タワ尾根-酉谷山-ヨコスズ尾根
山域奥多摩
地域東京都
標高篶坂ノ丸(1456m)、ウトウノ頭(1587m)、滝谷ノ峰(1710m)、酉谷山(1718m)、三ツドッケ(1576m)
山行日2010年10月23日(土)~24日(日) 天気1天気2
沿面距離1日目:10km、2日目:11.9km
歩行時間1日目:6時間、2日目:3時間25分
標高差1098m(東日原~酉谷山)
宿泊酉谷山避難小屋
温泉もえぎの湯
交通中央線、青梅線、西東京バスHome



2010年10月23日(土)

代々木駅5:16
 中央線
5:55立川駅6:04
 青梅線
青梅駅乗換
7:17奥多摩駅7:25
 西東京バス
7:45東日原7:55
8:20一石神社
9:15一石山
10:00金袋山10:10
10:35篶坂ノ丸
11:20ウトウノ頭11:35
12:45長沢背稜縦走路
13:00滝谷ノ峰13:25
13:45長沢背稜縦走路
14:45酉谷山避難小屋
避難小屋泊

2010年10月24日(日)

5:55酉谷山避難小屋
6:10酉谷山6:35
7:00避難小屋7:30
8:20七跳尾根分岐
8:55ハナド岩9:10
9:35三ツドッケ9:50
10:05一杯水避難小屋
11:25東日原11:35
 西東京バス
もえぎの湯立寄り
11:50奥多摩駅14:20
 青梅線
青梅駅乗換(特快)
15:27新宿駅


関連リンク
[記録] 10年前のタワ尾根縦走
[記録] 酉谷山から川苔山
日原観光案内
西東京バス


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タワ尾根を最後まで登りきるのは、10年前に一度あったきりで、それ以後は途中までしか行っていない。酉谷山避難小屋が使用可能となったので、久しぶりに避難小屋泊で秋の似合う長沢背稜の寂峰を訪ねることにした。

奥多摩駅で出遅れ、バスは座ることが出来なかった。東日原で下り、鍾乳洞まで車道を歩く。
ちょっと冷え冷えした朝。少し前までの猛暑はどこへやら、あっという間に季節は進んだ。不思議なものである。見上げる石尾根や稲村岩尾根の紅葉ラインも、少しずつ確実に下りてきている。


長沢背稜はカエデの赤で敷き詰められていた

鍾乳洞のすぐ手前、一石神社の階段を登る。10年前もここから取り付いた。
境内まで上がり裏手の細道をたどる。回りには鉄柵が出来ているが、どうも10年前にはこんなのはなかったように思う。すぐに「金袋山 ミズナラ」という導標があったので安心する。

グズグズした急斜面を登る。踏み跡は薄い。前回はこんなに登りにくい斜面ではなかったように思う。さっきの鉄柵も、その後崩落防止のために取り付けられたものだろう。
尾根に上がった所にベンチがあり、一人休憩していた。立っている指導標には、左は展望台とある。これから右の尾根を登っていくつもりなのだが、そちら側には「鍾乳洞」と書かれているので混乱する。でもその方向に進むしかない。

取り付き口から1時間弱で一石山に登り着く。前回とそれほど時間差はなかった。その後、しばらくは平坦もしくは緩やかな登りとなる。紅葉には早いが、自然林の尾根で清々しい。
人形山付近では巨樹周回コースの方向には行かず、尾根筋を行く。そのままミズナラ巨樹を見ることなしに金袋山の平頂に着いた。


一石神社から取り付く
タワ尾根
ウトウの頭
紅葉
富士山が見える

数年前にオロセ尾根から上がったときには、もう少し笹(スズタケ)が枯れながらも残っていた気がするのだが、それさえも残っていない。それどころか下草もあまり茂っておらず、稜線を彩るのはもっぱら落ち葉ばかりである。
色づいた葉はきれいだがどこか物足りなさも感じる。そんな道を緩く登って、篶坂ノ丸(すずさかのまる)に至る。

今日は天祖山の砕石工事が稼働中で、時折り大きな音が響く。あげくはサイレンが鳴り発破音も轟く。また、反対側の小川谷方面はさっきからヘリコプターがバラバラと音を立てて低空飛行を繰り返しており、かなり騒々しい。
天気も予報ほどよくなく、上部ではガスが舞っている。
稜線では風もけっこうあり、木がゆさゆさと揺られたあと、ボトッと大きな音がする。そこいらじゅうでドングリが落ちてくるのだ。ただのドングリと思うなかれ、体に当たるとけっこう痛い。この季節の落葉樹林帯は、日差しが強くなくても、頭上からの落下物に備えて帽子は必要である。

踏み跡はややはっきりしなくなり、いくぶんか険しさを増してきた。篶坂ノ丸の先でそろそろ、赤やオレンジなど、色づきのいいカエデを見るようになる。
さらに1500mくらいまで高度を上げると、ツガなどの針葉樹が混ざってくる。こういう植生分布は奥多摩では珍しい。前方に見えてきた大きなコブにやがて取り付く。急な登りをこなし、樹林帯のピークに出る。すぐに緩く下ってもうひと登りし、しばらく行くとウトウの頭に着いた。

先客が4名、休憩していた。掲示板で時々やり取りさせていただいている、yyggさんとそのグループだった。四軒小屋尾根から登ってきたと言う。山頂の東側にはっきりしたその踏み跡が上がってきていた。
10年ぶりのこの山頂、変わったのは木にかかっている木彫りの山名板である。ついこの間までこの山名板が持ち去られていたと聞いていたが、このたび新しいものが付けられた。山名にもなっている「ウトウ」という鳥を描いたこの絵を見ることが、奥多摩の山歩きのひとつのステータスになっている。
裏を見ると、ローマ字つづりの作者の名前と、設置(であろう)年月が記されていた。

ウトウの頭からは急斜面を下る。痩せた尾根を伝って、大岩の脇をぐっと下る。大京谷のクビレというところだ。陰湿な部分を抜け、高度を取り戻していくと再び広葉樹が優勢となる。
快適に歩いていくと、資材運搬用のモノレールが沿うようになった。最近奥多摩の尾根で増えてきた人工物である。雰囲気のいいところにこんな白いレールがあって興ざめではあるが、もともと登山道ではないところなので、登山者は文句を言えない。

笹が消えた
日に輝く
避難小屋へ
タワ尾根が浮かぶ

モノレールがついえると、緩いが長い登りとなる。この先、長沢背稜の縦走路に出会ったあとはそのまま最高点を目指し、タワ尾根の頭(滝谷ノ峰)まで登る。
10年前は、笹のトンネルをくぐって縦走路に出たのだがいっこうに笹が出てこない。そのうち、1本のはっきりした細道に出会った。どこからかの仕事道であろうか、と思いさらに目の前の斜面を登る。ヤブっぽい尾根になってきたら、いつの間にか稜線の最高点に出てしまった。
その先のもうひとつのコブに三角点標石。ここがタワ尾根ノ頭のようだ。さっき交差した細道が長沢背稜の登山道だったようである。天下の縦走路に気づかず通り過ぎてしまったとは間抜けだが、トンネルの出口を作っていた笹がすっかり消えてしまっていたので、全く気づかなかった。
笹薮がなくなったせいでかえって道に迷いやすくなる、という皮肉な結果に。
酉谷山から芋木ノドッケの間の部分はずいぶん来ていなかったので、この変わりようは知る由もない。さっきのモノレールといい、山の景観は10年やそこらでガラッと変わってしまうものである。

タワ尾根ノ頭に着いたとき一面ガスだったが、やがて青空が見え出し、雲海の先に富士山まで拝めるようになった。この先に展望のいいヘリポートができたというので行ってみたかったが、前もって調べてなかったので位置がわからなかった。

縦走路に戻り、今宵の宿、酉谷山避難小屋まで歩く。稜線は紅葉が見頃を迎えているが、もう2,3日後がよかったかもしれない。それでも落ち葉が登山道を赤く染め、雲間から届く日差しを受けて、カエデの葉がきらっとオレンジ色に輝く。奥多摩らしい柔らかな秋の色をそこかしこで見ることができる。

また曇ってしまったので、酉谷山登頂は明日の朝にする。縦走路を外れてすぐ下の酉谷山避難小屋に到着する。yyggさんと再びのご対面となった。これから三又へ下るとのこと。

避難小屋のほうはすでに満員で、板の間には自分のシュラフを伸ばすスペースはなかった。混雑に嫌気がさしたのか、「一杯水の避難小屋に泊まることにする」と言って、シュラフをたたんで荷物をまとめ、行ってしまった人もいた。
その結果少しスペースに余裕は出たが、それでも狭い。結局板の間は諦め、土間に寝ることにした。こちらのほうが、横に人もいないのでゆとりがある。紅葉シーズンの土曜日は、やはりもっと早く到着していなければならなかった。
自分の後も宿泊者は増え、板の間に7人、土間には3人、さらに外でテント2張りという大盛況の避難小屋となった。

夕方、ガスが切れて、避難小屋の前からは広大な雲海の眺めが広がった。起伏の多いタワ尾根が雲海からギザギザの頭をいくつも出し、小島のように浮かんでいる。
鷹ノ巣山など石尾根の山の奥には、わずかに冠雪した富士山もクリアに眺められる。