山の写真集 > 奥多摩 > 沼沢尾根から成木尾根
  • -都県境尾根の末端を行く-
  • 川井駅-岩茸石山-黒山-小沢峠-大仁田山
  • 奥多摩/青梅
  • 東京都/埼玉県
  • 馬仏山(723m), 岩茸石山(793m), 逆川ノ丸(849m), 黒山(842m), 雲ノ峰(497m), 大仁田山(506m)
  • 2016年3月20日(日)
  • 13.6km
  • 6時間40分
  • 591m(川井駅-逆川ノ丸)
  • -
  • -
  • 中央線, 青梅線, 国際興業バス
天気1

 

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2016年3月20日(日)
新宿駅 5:18
  中央線
5:55 立川駅 6:04
  青梅線
青梅駅乗換
7:00   川井駅
7:30   34号鉄塔
8:25 馬仏山 8:33
8:55 岩茸石山 9:05
9:10 名坂峠
10:10 逆川ノ丸
10:37 黒山 11:07
11:50 大クラ尾根ノ頭
12:30 小沢峠 12:35
13:15 久方峠
13:27 雲ノ峰 13:32
13:55 成木尾根分岐
14:05 大仁田山 14:20
15:00 間野黒指 15:20
  国際興業バス
15:45 飯能駅 15:55
  西武線
16:52 池袋駅

 

ずいぶん暖かくなってきたが、花や新緑はまだ少し先。
今日は奥多摩から青梅にかけての、まだ歩いたことのない尾根や山、峠を巡る。


黒山山頂の山名板。麓の集落ごとに違う名前で呼ばれている山は多い

川井駅の東端にある階段が沼沢尾根の取り付き点となる

沼沢尾根取り付き

馬仏山山頂。惣岳山~岩茸石山間の尾根道はこのピークを通らないので、意外と存在を知られていない山

馬仏山

岩茸石山からは、北から北西面の眺めがいい

開けた山頂

尾根筋はアシビが花の盛りになっていた

アシビが盛り

自然林に囲まれた黒山山頂

黒山山頂

マンサク(黒山付近)

マンサクは終期

小沢(こさわ)峠は植林下の静かな場所

小沢峠

成木尾根は静かで落ち着いた雰囲気の踏み跡が伸びている

落ち着いた道


川井駅で下車。改札を出て、いつもとは反対の右へ行く。駅のホーム沿いに歩き、突き当たった階段が、今日登る沼沢尾根の始まりである。
青梅街道への道を見送って、左の階段を登る。最初から急登で、どんどん高度を稼ぐ。上り方面の青梅線の音がずいぶん下のほうで聞こえた。
檜林は一部ヤブっぽいところもあるが、踏み跡は明瞭。右手が開け、雲だかもやで白っぽい朝の空を見上げる。34号鉄塔の先で人工林は杉に変わり、やがて左側が自然林となる。木の枝越しに川苔山、本仁田山などが見られた。

アップダウンが繰り返され、岩っぽい登りもある中、目指す稜線は確実に近づいてくる。左に緩くカーブするあたりで、惣岳山からくる尾根筋ににいつの間にか乗っていたようだ。登山道は下の方に見える。そのまま尾根伝いに数分歩くと馬仏山に到達した。初登頂の奥多摩の山は久しぶりである。
通常高水三山を縦走する場合、この馬仏山山頂は巻いてしまうので、あまり人に知られていない。樹林に囲まれてはいるが、いかにも奥多摩の山らしい落ち着いた山頂である。

今日は長丁場なので、早めに出発する。岩茸石山までは穏やかな登山道だ。一昨年の大雪の際は、こんなところに雪庇のようなものができていてびっくりした。今日は全く雪はない。ただ、数日前にこのあたりは雪が降ったようで、今は溶けてはいるがすこしぬかるみはある。今日はそのぬかるみを想定して、出だしからスパッツ着用である。
岩茸石山からは、いつも通りの広い展望が得られた。ここから見る限りは雲取山や川苔山に残雪は認められないが、ある程度は積もっているはずだ。まだ朝早いとあって、登山者は5人くらい。これから目指す黒山までの稜線が見下ろせる。

名坂峠を過ぎ、尾根歩きとなる。ここは前に棒ノ折山まで歩いたとはあるが、小さなアップダウンを何度も繰り返しながら地道に高度を上げていく。登ったと思ったらすぐに下ってしまい、がっかりする場所が多い。ただ、高度が上がるにつれて自然林の清々しい部分が増えてくる。
ふと指導標を見ると手書きで「常盤尾根」と書かれている。ここにそんな名前がついているとは知らなかった。宮内敏雄著「奥多摩」によると、平安時代、源頼朝の側室である常盤御前がこの麓の成木に住んでいて、高水山の常福院には常盤御前愛用の鐘が安置されているということである。

柵のついた小さな展望台に着く。大岳山や御前山がよく見える。このあたりアシビが花の盛りのようで、木によっては鈴なり状態だ。マンサクはどうだろう。さっきから注意して見ているがなかなかない。
本日の最高点である逆川ノ丸に着く。山名板に「常盤の前山」と手書きされている。雨沢山との名前もある。同じ山でも、麓の集落によって呼ばれ方が様々ということはよくある。
マンサクはどうも見当たらない。そのうち、背の高い木でわずかに花をつけているのがあったが、以前は目線の位置に結構な数のマンサクが見れたと思う。あとで聞くと、このあたりは数年前になされた伐採で、マンサクの木もかなり切られてしまったらしい。

うららかな日の光を浴びながら、自然林の尾根を登り詰めて黒山に到着。周囲は樹林に囲まれてはいるが、葉の落ちた時期は結構眺めがきき、越えてきた岩茸石山や高水山がよく見える。日差しが暖かく、ベンチも乾いているのでゆっくり休憩する。
山頂には標柱のほか、手書きの山名プレートが地面に落ちていた。それによれば、この黒山は名栗(村)では「常盤山」、大丹波地区では「コハカノズル」と呼ばれているそうだ。黒山は雲取山から伸びている東京・埼玉県境上の山のひとつで、これから歩く小沢峠から成木尾根もその県境にある。

その方向に進む。しばらくは自然林が続いて明るく、マンサクやアブラチャンが見られた。急坂を下ると薄暗い植林帯の中に潜り、平坦で歩きやすいものの、少しひんやりする。
馬乗馬場の先で林道と接し、さらに尾根を進むと北側が雑木の斜面となり、一帯にカタクリの葉がいっぱい出ていた。この県境尾根上には、棒ノ折山~日向沢ノ峰間にもカタクリの咲く場所があり、同じような植生が続いているのだろう。

植林帯の緩やかなピークに着く。前回来た時は長久保山と言う標識がかかっていたが、立ち木にかけられていた山名標識には「大クラ尾根の頭」と書かれていた。これは名栗側の呼び方のようである。
と言うことは今歩いている尾根は大クラ尾根という名前なのだろうか。今回は、山や尾根の名前に新発見が多い。

成木尾根はこういった白地の手書き指導標が多い(久方峠にて)

白プレート多い

雲ノ峰は成木尾根の1ピーク

雲ノ峰

大仁田山山頂

大仁田山山頂

黒指への下山路は民家や畑の間につけられた細道を下っていく

民家の間を抜けて

アオイスミレ(細田付近)

アオイスミレ

間野黒指バス停

間野黒指バス停


この先は小沢峠目指して、一気に高度を落としていく。下の方で聞こえるバイクの音やスピーカーから流れる町内放送の音が、だんだん大きくなってきた。
途中で展望が開け、網フェンス越しに高水山を望む。いつの間にか見上げるようになっていた。段差の大きな階段を苦労して下り、小沢峠へ下り立つ。
ここから上成木に下るのなら、もう20分もかからない。しかし今日はさらに歩く。
都県境尾根は成木尾根と名を変えて、さらに東に続いている。県境を少し埼玉側に入ったところの、大仁田山まで歩くことにする。

小沢峠から先は、急な斜面の踏み跡と林道が同じ方向に伸びていた。踏み跡には「久方峠・細田・安楽寺」を示す白いプレートがついているのでそちらに入る。
道は今までと違って若干ヤブっぽくなった。アップダウンを繰り返していると先ほどの林道が沿ってついてきているのに気づく。結果的には、急な登り下りをせずにしばらくの間は林道を歩いてもよかったことになる。林道はこの先で、尾根を乗っ越して埼玉側に下りていった。

493m点を過ぎ、山が深くなったと感じる。ずっと植林帯で薄暗い。まあ青梅の山の標高の低いところはこんな感じが多いのだろう。昨年の夕倉山付近の登山道を思い出した。
しかも尾根筋は地図で見るような直線状ではなく、意外と左右に曲がる箇所が多い。そしてかなり大きなアップダウンも繰り返され、距離以上に体力を使う。

大きく下ったところが久方峠。くがたとうげと読む。東京側・埼玉側にそれぞれ踏み跡が下りているが、あたりは閉鎖的な林の中であまり雰囲気はよくない。
峠からは、下った分そっくり登り返す。しかも急登だ。喘ぎながら何とか高度を取り戻す。登りついたピークには「雲ノ峰」の標識がついており、地面には青梅市の基準点標石が埋まっていた。雲ノ峰、誰がつけたのか、なかなかいい名前である。少し腰を下ろして休憩する。

雲ノ峰からもアップダウンの多い尾根道が続いた。今日は前半の岩茸石山~黒山にかけての伸びやかな尾根歩きから一変し、後半は思いがけずも我慢と根気が必要な山歩きになっている。先週の藤野の山巡り同様、今日も1日で2パターンの違った山行をすることになってしまった。標高が低いからすこしなめていたのかもしれない。

次なるピークである大峰山の先で踏み跡は分岐する。右は都県境尾根の続きで、水のもと~安楽寺へ。左の埼玉県側に入り、10分ほどでようやく大仁田山に到着した。
立派な山名標柱が立ち、落ち着いた雰囲気のあるいい山頂である。南東方向が開け、都心の平野部が見下ろせた。
成木から登るだけなら何てことのない行程かもしれないが、川井駅からはるばるやってきた大仁田山は、なかなかの感動の山頂であった。

大仁田山からは何本かの下山ルートがあり、北方向の県道に下りればバス便も多いのだが、今回は南の黒指への下山路をとる。
指導標に従い「細田」「黒指バス停」方面に下っていくと、送電鉄塔の立つ草地に出て、すぐ下に細田地区の舗装車道が見えた。ショートカット気味に畑の中につけられた小道を下り、車道に下り立つ。
黒指の山里の風景を楽しみながら下り、間野黒指バス停には3時ちょうどに着いた。

こんな山奥にしては、バスは土休日でも1~2時間に1本あるのでありがたい。飯能地区の路線バスを運行しているバス会社はは昨今、不採算を理由に飯能地区からの路線バス撤退の意向を表明していることを考えると、このバス便の多さは意外である。
間野黒指バス停には、都市で走っているような大きくて立派な車両がやってきた。

東京側から登り、埼玉側へ下山したのは久しぶりだった。飯能駅から西武線で東京に戻る。