3年続けて12月の雲取山に登る。
例年なら雲取や石尾根の山は月後半に積雪し、年納めの雪山ハイキングを提供してくれるのだが、どうも今年は様子が違う。中旬に少し積もった雪ももう溶けてしまい、石尾根は黒土のままのようである。
今年はまだ雲取山に登っていない。このまま雪を待っていると、15年続いている連続登頂が途切れてしまうので、登ることにした。
雲取山頂に至る道に雪はなかった
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留浦(とずら)バス停から青梅街道を10分弱歩く。昨年は路面が凍っていて滑りそうになったが今日はそんなことはない。鴨沢で民家横の坂を登っていく。いつもの樹林帯の登りに入り、小袖乗越に出ると駐車場はすでに満杯だった。
バスに登山客は少なかったが、最近はマイカーで早く来て日帰り登山をする人が増えてきたようである。以前はここが駐車場として利用されていたわけではなく、ただの私有地だった。車も鴨沢や留浦の駐車場や、小袖登山口付近に数台見るのみだったように思う。
廃屋の場所を過ぎ、上の方に石尾根の稜線が見えるようになる。白くなってはいない。足元も霜柱が溶けてぬかるんでいるのが常だが、今日はそんなこともなく乾いた土の上を歩いていける。
標高1100m付近の水場は、いまだに水が豊富に出ていた。今年の冬の異例さはいろんなところから目に、肌に感じられる。
樹林帯の登りを脱し、片倉谷側にせり出した登山道に入る。奥多摩エリアではことごとく枯れてしまったスズタケは、このあたりだとまだ元気に緑の葉をつけているところもあった。
上空は雲が多く風が強い。ビュービューと音を立てている。今日明日と寒気がやって来ていて、甲信地方あたりがちょうど暖気・寒気の境目になっている。2つの気団がぶつかり合うところは風が強くなるので、ここ奥多摩の高い山にもその余波がきていると思われる。
七ツ石山の巻き道を登る。ここにも雪はない。空の面積がぐんと増して、飛竜山など奥秩父山塊が見えるようになると、今年の冬も登ってきたという達成感を感じる。ブナ坂からは石尾根の稜線となる。積雪はなく、ややぬかるんでいる所も雪解けではなく、霜柱が気温の上昇で溶けたものだろう。
ブナ坂から奥多摩小屋までは、だいたい3段の小さな登りが断続する。展望はいいが、今日は富士山も南アルプスも雲に隠れているので、吹きさらしの稜線は避け、巻き道のあるところは風除けにそちらを通る。
しかしやはり、冬の石尾根は白くないとなんか拍子抜けと言うか、見慣れない風景である。五十人平ヘリポートから見る雲取山山頂も、白いところがなかった。
奥多摩小屋からヨモギノ頭へ、標高1900mを超えて来たあたりで、ようやく雪の溶け残りが見られる。小雲取山への長い登りはきつく、日頃の運動不足を痛感する。肩から雲取山山頂までもいやに長く感じた。
雲取山山頂へ到達する。富士山も逆光ながら、雲間から姿を現し始めていた。南アルプス方面は相変わらず見えづらいが、甲斐駒だけシルエットで見られた。風は冷たいいものの、じっとしていられないほど寒いかと言うと、それほどでもない。言葉では言い表しにくいが、やはりいつもの刺す様な寒さがないのである。
避難小屋裏の日陰や、山頂の周りには薄く雪が積もっていた。
雲取山荘への下りに入る。雪が少ないとかえって凍っていたりするものだが、思っていたほど凍結していなかったので、アイゼンなしで行けた。
この日の山荘は50名ほどの宿泊者だった。ロビーのストーブにあたり、ほかの登山者と団らんする時間は楽しい。酒もつい量が増えてしまった。
ひとつ失敗したのは、持ってきた水が少な過ぎたことだ。冬の雲取山荘は、朝食後しか水を分けてもらえない。朝はいつも自炊にして、小屋の朝食を待たずに早出するようにしていたのだが、水がなかったので食事が遅れてしまい、出発もほかの宿泊者より後になった。
それと、どうもこの小屋の従業員は、自炊小屋を使うと言うといい顔をしてくれない。ストーブも結局つけてくれなかった。自炊客は基本的に歓迎されないようである。と言うか、登山者に対して横柄な態度が目立ち、「泊めてやってる」と言わんばかりだ。登山者が多い山ゆえ、富士山の山小屋のように、放っておいても宿泊者がどんどんやって来るからリピーターを大事にしない小屋の典型である。冬もやっている数少ない山小屋だから、我慢するしかないのか。
近くには大菩薩や丹沢山、金峰山など、親しみを覚える山小屋がいくつもあるのに、ここだけはどうも肌が合わないのである。
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翌朝、雲取山に再び登頂したときはすでに、日の出の後だった。富士山はてっぺん部分が雲に隠れている。南アルプスは西回りの寒気の影響で、今日もほとんど見えない。
避難小屋の外にある寒暖計は氷点下2度。ただし日が当たりだしたらすぐに2度になった。今日も風は強いものの、気温は高めのようである。
奥多摩小屋からブナ坂へ。凍結はなく地面は乾いている。七ツ石山山頂から南側に張り出した尾根筋は、西風がもろに当たり樹林が大きな音を立てている。七ツ石山に登り返す。富士山が幾分見えるようになってきた。風が強いことを除けばまあまあ歩きやすい気候なのだが、腰が痛くて体調がいまひとつである。石尾根を縦走することは難しそうだ。
千本ツツジの稜線から、今日は久しく登っていない高丸山へ寄っていくことにする。気分のよい防火帯の登りから振り返ると、大菩薩嶺など南関東・甲信の山並みが連なり、その下方には奥多摩湖の湖面も光っていた。
山頂直下は急斜面で、土留めの板が設置されている。高丸山山頂は展望は乏しいが、落ち着ける地である。東面への下りはさらに急で、何度か尻餅をついてしまった。高丸山が鷹ノ巣山のように一般登山の対象とされていないのは、この急坂が原因かもしれない。
日陰名栗ノ峰は巻き、鷹ノ巣避難小屋に到着する。鷹ノ巣山には登らずにここで下山することにした。冬枯れの浅間尾根を下っていくと風もおさまり、暖かい空気だけが残った。最後は日差しで暑いくらいに感じながら、奥の登山口、そしてバスの待つ峰谷に到着した。
通算31回目の雲取山は雪がなくて物足りない面もあったが、何とか連続登頂を途切れさせないでよかった。
乾いた黒土のままの雲取山の姿が、この年の冬の暖かさを象徴していたように思う。