~晩秋の避難小屋泊まり歩き、奥秩父の核心部へ~
タイトル
白泰尾根から十文字峠、入川谷 2000.11.3.~5.
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栃本集落
栃本集落

●雨とガスの白泰尾根(栃本関所跡~一里観音~二里観音~三里観音~四里観音避難小屋)

秩父鉄道の終点、三峰口に着く。朝にしては何やら人の動きがあわただしい。タクシーが何台か駐車している。
駅の掲示板を見たら、今日はこの付近(両神村)で鳥羽一郎のコンサートがあるとのことであった。

駅からタクシーで栃本関所跡に向かう。バスもあるが本数が少なく、歩き始めが11時近くになってしまうのでタクシーにした。
タクシーの運転手さんは釣りが趣味で、建て替え前・後の柳小屋に泊まったことがあるとのこと。とてもいい場所だと言う。

栃本関所跡
栃本関所跡

栃本関所は、秩父往還の雁坂峠路と十文字峠路の分岐点として、300年ほど前に設けられた史跡である。タクシーを下りると無情の雨。予報では昼までには上がるとのこと。関所前には、小型のバスでやって来た観光の団体さんがいた。

傘をさし、しばらく車道を上る。山道となる前でレインウェアにする。
両面神社の前を通り、ふたたび車道に出会う。植林帯が続くがだんだんと雑木となり、木々の色づきが雨のうっとおしさを慰めてくれる。

白泰尾根は昔、十文字峠越えをする旅人の安全を願い、石仏が一里(約4km)ごとに置かれている。笹と落ち葉の道にひっそりと佇む観音様の姿は、登山者にとっても心のやすらぎとなる。


栃本尾根コースを合わせたあとしばらくして、一里観音に着く。ここまで2時間近くかかってしまった。雨のせいもあるのだろうが、広くて歩きやすい尾根道の割には時間がかかる。急坂はほとんどなく、なだらかな登り道が続く。
ここ一里観音には、水場へ通じる道が分岐している。

ガスと霧雨で展望の利かない道を黙々と進む。道幅は広いが、道の落ち葉が雨に濡れて滑るので足を踏ん張れない。そのため軽快に歩くわけにはいかない。
白泰山山頂への分岐を見る。雨が降っていたので山頂はパスした。白泰山は少し前まで山頂への道が無かったが、今年地元の学校の学生さんが作ってくれたそうだ。

三里観音の石仏
三里観音の石仏

ほどなくして白泰山避難小屋のある二里観音に着く。雨は止まず、少し強くなってきた。ここで泊まることも考えたが頑張って先に進むことにした。のぞき岩からの展望はガスで全く得られず。
いつのまにか標高を上げ、回りの木々には落葉したものも目立つ。切り開きも何箇所か有り、晴れていれば意外と展望が楽しめる道かもしれない。

二里観音から先は道がいくぶん細くなり、アップダウンが激しくなる。赤沢山を巻くあたりは方向感覚が狂いやすくなる。スイッチバックする地点では、まるで来た方向に戻っているような感じがする。
三里観音前後は、道が悪くわかりにくい。濡れた路面で足の踏ん張りが利かず、滑り落ちそうになる。


三里観音に着いたのはもう午後3時近く。こんなに時間がかかるとは思わなかった。四里観音避難小屋を目指すが、ここからは登りがきつく、一番の頑張りどころだ。峠道なのでピークを全部巻くとは言っても、ピーク直下ではいくぶん登りになっている。
小屋には4時半頃着いた。結局最後までレインウェアを着続けることとなった。

四里観音避難小屋
四里観音避難小屋

四里観音避難小屋にはきれいな板張りの小屋である。土間のところににわか作りの薪ストーブがある。

久々の1人泊まり、かと思いきや、5時過ぎに1組の夫婦が到着。同じ道を歩いて来たそうだ。やはり時間が思ったよりかかったようだ。歩いている人が少ないから、コースタイムもいまひとつ信頼性が薄いのかもしれない。
小屋のすぐ近くに水場があるが、崖のようなところを通る必要があるため、夜は危険。夫婦は真っ暗になってからの到着だったので、その日は水汲みに行かなかった。自分の汲んであった水を、よかったらどうぞと言ったが、どうやらその日は手持ちの水で間に合った。

陽の明るみが完全に無くなると、あたりは急に静まり返る。小屋の中だけ、時間の歩みが遅くなっているような錯覚に陥る。


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