~梅雨の晴れ間、強風と青空の高山漫歩~ 甲子温泉から那須連峰縦走 2003年6月20日(金)~21日(土)
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●流れる雲と青空の稜線漫歩 4時頃目が覚める。窓を開け手をかざすと、霧状の雨がまだ降っていた。しかし天気はこれからよくなるはず。風が止むかガスが晴れるまで出発の時間を遅らせることにした。 ラジオをつけると地元福島の放送が入り、「今日はいい天気ですねえ」と言っている。山の天気は平地と比べてこれほど回復が遅く、また悪化するのが早いことを身をもって知らされた。 9時を過ぎ、ようやく空が明るくなってきた。ガスがどんどん後退し、坊主沼が初めて全貌を現す。一株だけ水芭蕉が咲き残っている。 小屋の雑記帳に一言書き込み、那須岳に向けて出発する。サンカヨウの咲き残る沼の縁を回り込む。 しばらくは、昨日の続きで歩きにくい笹藪の道である。尾根に上がるとようやく歩きやすくなるが、道の両側は背丈ほどの笹が伸びている。雨露が滴り落ちているが、今日は最初から上下ともレインウェアを着込んでいるので何ともない。 高度を上げ、展望の効く稜線上に乗るとやはり、ものすごい風。南東方向に大きくカーブする那須連山の山並みが、視界に捕らえられる。雲が猛スピードで西から東の空へ移動している。目線には、笹に混じってシャクナゲが現れ高山の雰囲気が漂ってくる。 いくつかの小ピークを越え、笠ガ松(1638m)のピークを踏むと眼前に須立山のピラミダルな山容、その後ろに三本槍岳のでかい図体が控えている。雲の切れ間から青空が見え始め、ようやく明るい初夏の日差しも復活する。
いったん下って、須立山への急登となる。開けた草地の斜面はまさに風の通り道で、何度も持って行かれそうになる。斜面にロープがついていて、これにしがみつくように慎重に高度を稼ぐ。 ザックとザックカバーとの間に挟んでおいたフリースが、いつの間にか無くなっている。風に飛ばされてしまったようだ。 須立山頂上(1720m)も360度の展望。目の前に三本槍がいよいよ大きい。しかし風をよけ、ハイマツの陰で休憩する。 青空の占める割合がどんどん広がる。三本槍岳までは強い風の中、爽快な稜線漫歩となる。右下に鏡ガ沼が見え、そこに通じる道を分ける。三本槍岳までまだ高度差が200m近くあるが、道は山のやや東斜面側につけられているため、それほど風に悩まされることはない。 大峠分岐を経て、緩やかな低潅木とハイマツの道を進む。ゴゼンタチバナ、ウラジロヨウラク、シャクナゲが咲くが花は全体的にあまり多くない。時期的に少ない時なのかもしれない。頂上近くで一輪、ハクサンチドリを見る。 ついに三本槍岳頂上(1917m)だ。ここまであまりにも静かな登路だった(風の音は大きかった)せいか、一転、人であふれ返っている頂上にいささかびっくりである。百名山に登ったのは昨年の8月の大朝日岳、今年1月の雲取山以来であるが、やっぱり人が多い。 頂上からの眺めは素晴らしい。南面に朝日岳、茶臼岳の那須主峰。西側に大峠を経て流石山、三倉山と続くダイナミックな稜線が会津方面に通じている。 来た方向を振り返れば須立山の向こうに旭岳が意外なほど高い。旭岳の右下に見える残雪あたりが、昨晩泊まった避難小屋のある位置のようだ。その奥には大白森山、二岐山、磐梯山も遠望される。初夏の高山漫歩とパノラマ展望にようやくありつくことが出来た。 朝日岳への縦走路に入ると、これまでとはうって変わって、園地のような歩きやすい道となる。 木道を過ぎ、爽快な岩尾根を進む。熊見曽根(1900m)への登り返しあたりから強風が復活する。那須連峰は風の名所と聞いていたが、これほどすごいものとは。自分の頬がブルブルと音を立てて震える。 朝日岳分岐から朝日岳頂上への道は、天空を登り詰めるような気分だ。狭い朝日岳頂上(1896m)からの展望はさらに素晴らしい。ザックリと切れ落ちた東面には、眼下に那須町や白河町の風景が広く横たわっている。縁まで行って下を覗き込んでみたいのだが、風が強いためちょっと出来ない。 |