~梅雨の晴れ間、強風と青空の高山漫歩~
タイトル
甲子温泉から那須連峰縦走
2003年6月20日(金)~21日(土)

甲子温泉-甲子山-坊主沼
-三本槍岳-朝日岳-茶臼岳-山麓駅
マップ
1 2 3 4 Home


●笹藪、残雪とガレを越え避難小屋へ
ギンリョウソウ
ギンリョウソウ

猿ガ鼻へのジグザグの登り。温泉客もこのへんまで足を伸ばすのか、道はよく整備されている。足元にギンリョウソウを多く見る。
しかし背後に道路工事の音がうるさい。甲子温泉の先に続く林道が、さらに延伸中のようである。

時折目に入る稜線は相変わらず雲の中にある。猿ガ鼻のピークに着く。樹林に囲まれた地味な山頂。工事の音は聞こえなくなり、これから山深く入っていく雰囲気に満ちる。
甲子峠分岐までは、まだ道もよい緩やかな登り。ガスが出始め、気温もかなり下がって来た。頭上の方で風が吹き荒れている。台風は低気圧に変わって北日本に進み、下界は天候回復傾向だが、山の上になると話は別でまだ台風の影響が残っている。

ガスがかなり強くなって来たころ、一人の若い女性が下りて来た。上下レインウェアの完全防備態勢である。上のほうの状況を聞くと、言葉を選ぶように、「上はもう誰もいません。小雨が降っています」とのことだ。
すれ違う人に、ここまでの道の状態を聞かれることがよくあるが、ついつい事実と違うことを答えてしまいがちだ。「この先はもう楽ですよ」などと主観を交えてしまったり、自分は下りで30分かかったのに「あと30分くらいですよ」とか言ってしまう。登りだと30分で行けるはずはないのに。
悪気はないのだがつい、こういう答えをしてしまうのは何故だろう。気分が高揚しているせいだろうか。
今回すれ違った女性の言葉は簡素だが客観的、正確だった。山の中で人に尋ねられるときの心構えや用意がいつも出来ているのだろう。
坊主沼
坊主沼
坊主沼避難小屋
坊主沼避難小屋

甲子峠分岐に着く。峠の方向は、大白森山を経て二岐温泉に続いている。今日は甲子山への登りにかかる。
風はますます強くなる。頭上が開け、360度展望の甲子山頂上(1549m)に上がる。しかしあたりは一面の乳白色。風だけがビュービューと吹きすさぶ。

帽子が飛ばされそうなので早々に山頂を後にする。開けた草地の稜線が続くが何も見えない。いくつかの小ピークをこなし、ブナの林に入っていく。
風が吹くたびに、木の葉に溜まった雨水が落ちてきて、これでは雨が降っているのと同じだ。レインウェアを着る。しかし下は履いていかなかったのであとで後悔することとなった。
左に細い分岐道を分け、5分ほどで「水呑場」の標識を見る。ここで水を補給しに行く。地面が濡れて滑りやすく、往復15分くらいかかる。 3リットルの水を新たに背負い、避難小屋をひたすら目指す。水場から先は、旭岳(赤崩山)の東斜面を巻く道で、急斜面で非常に歩きにくくなる。崖のようなところをロープを頼りに這い上がる。濡れて滑るので、かなり危険だ。さっきの女性はやはり、ここを下ったのであろうか。登りはなんとかなるが、濡れていることもあって下りは相当厳しい。自分にはちょっと自信がない。 歩きにくい道はなおも続く。危険なガレ場をトラバースし、その後残雪の上を2度通過する。十分に刈り払いされていないネマガリダケの上を踏む所は、滑落を用心する。
強い雨が降っているわけでもないのに、上も下ももうずぶ濡れだ。まだかまだかと思っていたところ、ようやくガスの中に坊主沼避難小屋の赤い屋根が見えて来る。頑丈な造りで中もきれいだ(もちろん避難小屋としての話であるが)。毛布も数枚あり、シュラフの上と下にひいて寝床を作る。

さっきまで吹きまくっていた風は西風であり、旭岳の東斜面にあるこの小屋付近は意外なほど無風状態だ。しかしそれと引き換えに、、しとしとと降る雨の音がシュラフを通して耳に入ってくる。


前のページ Home 次のページ