2日連続の日帰り山行。GW前半は昨日と今日が好天の予報だ。
昨日、期待していた奥多摩のアカヤシオがいまひとつだったこともあり、身体的にはきついところもあるが、後半2日にゆっくりすることにして、今日は西上州に出かける。再びアカヤシオである。
アカヤシオ咲く三ツ岩岳山頂から、荒船山など西上州の山々を望む
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朝3時過ぎ起床、4時台には車で家を出発した。奇跡である。
GW2日目の早朝は、一般道も高速もそれほど混雑もなく、スイスイと走れた。関越から上信越自動車道に入る。昨日世界文化遺産登録への推薦が決まった富岡製糸工場は、この高速道のすぐ近くにある。
下仁田インターで下り、素朴な町並みから新緑の始まった山間に車を走らせる。南牧村の里道を上がり、大仁田ダムの駐車場に到着。このダムは以前、天狗岩から烏帽子岳へ縦走した際、下山地としていた。その頃は車がなく、ここから麓の雨沢まで歩いて下った。
まだ7時前なので、駐車場には3、4台しか停まっていなかった。今日登る三ツ岩岳はアカヤシオの時期に登山者が多数押し寄せ、駐車場は朝早くから満車になるそうなので警戒していた。一般にはあまり知られていないかもしれないが、地元の人々にとっては、アカヤシオが多く咲く「とっておきの山」である。
「竜王の里宮」登山口から出発。まだ7時前、朝のひんやりした空気が気持ちいい。
堰堤沿いの急坂を登ると、すぐに分岐となる。右の竜王大権現コースに入る。植林下の薄暗い登山道はしだいに急峻になって、何かにつかまり続けてないと落っこちてしまいそうだ。初めから大汗をかいてしまった。
やがて右手に尾根が見えてくる。登山道はその尾根に上がるまでの、数十メートルの踏み跡が分岐していた。尾根に上がってしまっても山頂には行けそうなので、どうしようか迷う。しかし初めての山は一般ルートで行くのが鉄則なので、このまま登山道を進むことにした。
大きな岩の基部に着く。ここが竜王大権現であり、小さな祠が作られていた。休憩して汗を拭く。
道はようやくなだらかになり、最後のひと登りで尾根に合流した。景色は一変し、青空眩しい自然林の登山道である。そしてアカヤシオ。このあたりですでに、頭上は満開状態だ。ヤセ尾根を進み、ところどころで小さなコブを通過する。左手に烏帽子岳方面の山稜が眺められた。
尾根上のアカヤシオはますます増え、しばらくして正面に大きな岩峰が見えてきた。三ツ岩岳山頂部はアカヤシオが波打ち、まるでピンク色の衣がゆらゆら揺れるようだ。
尾根道には花びらもたくさん落ちている。ネットの報告では、先週がアカヤシオの開花ピークだったようであるが、これだけ花数が多いと最盛期を外した残念感が全くない。それほどよく咲いている。
大岩を越え、やせた岩場を慎重に下るようなところもある。ミツバツツジやヒカゲツツジも色を添えるようになった。尾根コースが合流し、両脇がアカヤシオの回廊のようになった先に、三ツ岩岳山頂があった。
ここもアカヤシオが満開。展望もすばらしく、西上州の山々をぐるっと見渡せる。四ツ又山、鹿岳、妙義、荒船山の経塚山、立岩などの特徴ある岩峰がよくわかる。荒船山はここから見ると軍艦の形をしておらず、イルカの頭のような経塚山がただ尖がって見えている。
反対側には烏帽子岳、それに少し低いところに大津というピークがあって、三ツ岩岳から縦走が可能らしい。このピークもアカヤシオで埋め尽くされているように見えた。
山頂にはどんどん人がやって来る。皆が笑顔で、アカヤシオのすばらしさを口にしている。居合わせた人で、自分の家(東京都品川区五反田)のすぐ近くに住んでいるグループがいた。また、東北から来た人もいた。アカヤシオと言えばこの山は全国区のようである。
狭いピークなので、登山者があふれかえる前に山頂を辞することとする。
下山は尾根コースにする。地図を見ると、登路の大権現コースよりは傾斜がおだやかなようだ。アカヤシオの花付きは相変わらずいいが、ヒカゲツツジの花の多さにも驚く。アカヤシオのピンクをバックにクリーム色のヒカゲツツジを見られるとは贅沢である。
ロープのつけられた急坂を下る。そういえば大権現コースはあれほど急でありながら、ロープはなかったように思う。どんどん登山者が登ってくるので、通過待ちが多くなる。朝は空いていた駐車場は、その後どうなっているだろうか。
皆さんやはり、アカヤシオが気になっているようで「上はどうですか?」と聞いてくる。5、6回聞かれただろうか。そのたびに「満開、トンネルですよ」と答える。
小さなコブを越えていく。カタクリが咲いていたがもう終期である。やがて道は左に折れる。木の枝で通せんぼしていた直進方向は、おそらく大津への縦走路であろう。大津へは少し難路もあるようなので、今日のところは三ツ岩岳だけにしている。
いったん林道に下り、ほどなく登山道に戻る。登山者はひっきりなしに登ってくる。地元風の、普段あまり登らないような人も多い。「もう半分くらい来ましたか?」と聞かれるが、この道を下るのはこれが初めてなのではっきりとした答えは言えない。
急とも言えない単調な下りをしばらく行くと、朝見た分岐に着いた。すぐに登山口に到着。朝の光景とは打って変わって、車、車・・・・駐車場はもちろんいっぱいで、さらに道脇に長い路上駐車の列ができていた。
日当たりのよい路面にヒキガエルがのんびり日光浴をしている。
朝が早かったのでまだ9時過ぎ。もう1つ、登れそうである。笠丸山も考えたが、アカヤシオは十分満足したので、まだ未踏の名峰、赤久縄山(あかぐなやま)に登ることにする。ここからだと御荷鉾(みかぼ)スーパー林道を使って、割と早く移動できそうだと考えていた。
御荷鉾スーパー林道は一昨年、神流町の御荷鉾山に登ったときに初めて走った道である。赤久縄山はこの林道に登山口がある。というか、ほとんど山頂直下まで林道が上がって来ているのだ。林道は上野村の湯ノ沢トンネルを経てここ南牧村まで通じているので、これを登っていく。
御荷鉾山の付近は舗装されていたので、全面舗装の道かと思ったら、八倉峠というところから先は未舗装の砂利道になった。こういう道は今まで、ほとほと懲りてきたので大丈夫かな・・・と不安がよぎる。しかし、ここまで来てもったいないので、頑張ってでこぼこ道を進む。一昨年の田代山(南会津)で上った猿倉の林道を思い出した。一瞬舗装道路になるが、99%は未舗装である。
道脇に残雪が出てきたが、車の通行には問題ない。しかし、この未舗装区間は長過ぎた。車もずいぶん傷つけてしまったようだ。やっとの思いで赤久縄山西登山口へ到着。三ツ岩岳登山口から2時間もかかってしまった。
さらに5分ほど先の赤久縄山東登山口に車を置いて、ようやく歩き始められた。
標高はすでに1400mを大きく越えており、最初から眺めがいい。春霞の中、両神山などがよく見える。ただこの標高では、周囲の樹林はさすがに芽吹いていない。
ダケカンバやミズナラなど、冬木立の緩い坂を登る。三ツ岩岳の新緑と花の回廊から、一気にタイムスリップしたようだ。しかし空気はすっかり春めき、明るさと暖かさに満ちている。花は咲いていないが、斜面にバイケイソウの芽がたくさん出ていた。
ゆっくり歩いても、登山口から20分と少しで赤久縄山の山頂に着いてしまった。これでは山登りとも言えないかもしれないが、小広い草地の山頂は雰囲気がよく、静かでゆっくり出来る場所だ。初冬にやって来てもいいかもしれない。
樹林に囲まれ眺めは得にくいものの、一等三角点がある。林道が出来る以前は、下からじっくり登って展望を楽しんだ山なのだろう。御荷鉾山と同様、赤久縄山もこの上州の一角をしっかり締めた、存在感のある名峰ということができそうだ。
花が満開のもっと低い山に登山者は集中し、こんなところには誰も来ないだろうと思っていたら、一組の夫婦が登ってきた。東側の塩沢峠から歩いてきたとのこと。
どうも塩沢峠からここまでは、積雪のため車の通行が禁止されているそうだ。そのため、登山口に自分の車が停まっていて驚いたと言う。西側には通行止めの表示はなかった。未舗装の林道を延々走ってくる車などないのだろう。
下山は西に伸びる道を辿る。こちらの登山道は眺めがいい。さっき車で通過した西登山口まで20分足らずだった。
車のあるところまで林道歩きとなる。やや下り気味の林道は、ところどころで雪が残り殺風景ではあるが、斜面にアズマイチゲの群落をいくつも見ることができた。もう半月もすれば、春の息吹が一気に芽を出してくるだろう。
東登山口から車で塩沢峠に下りていく。管理棟や休憩所のある塩沢峠にはたしかに「積雪により通行止め」のゲートが設置されていた。管理人がたまたまその場を離れていたので、自分でゲートを脇へよけて車を通す。結局林道は、八倉峠以降ずっと未舗装だった。
最後はいろいろあったが、春めく西上州の山を巡ることができた。藤岡市まで道なりに下り、帰路に着く。