山の写真集 > 北関東(群馬) > 御荷鉾山
  • -関東の山々の展望台-
  • 西登山口-西御荷鉾山-東御荷鉾山-オドケ山
  • 西上州
  • 群馬県
  • 西御荷鉾山(1286m)、東御荷鉾山(1246m)、オドケ山(1191m)
  • 2012年1月8日(日)
  • 10.4km
  • 3時間45分
  • 231m(西登山口-西御荷鉾山)
  • -
  • 桜山温泉センター
  • マイカー
天気1

 

2012年1月8日(日)

練馬IC

5:26
  関越自動車道
本庄児玉IC 6:18
  国道462号、県道71号
7:30   西登山口 7:45
8:15   西御荷鉾山 8:45
9:05   投石峠
9:50   東御荷鉾山 10:25
11:05   投石峠 11:10
11:25   尾崎喜八記念碑 11:35
11:40   南登山口 11:45
11:55   西登山口
12:05   秋葉峠
12:30   オドケ山 12:45
13:10 西登山口 13:15
  県道71号、国道462号
道の駅上州おにし、桜山温泉センター立寄り
17:01 本庄児玉IC
  関越自動車道
18:18 練馬IC

 

群馬県の南縁、埼玉県と境を接する神流(かんな)町の万場(まんば)地区に御荷鉾(みかぼ)山はそびえている。奥武蔵や秩父、奥多摩の山で、北側が開ける場所から望む御荷鉾山は、どこから見てもわかるような端正で親しみのある三角形をしている。

昭和初期、詩人で科学者でもある尾崎喜八が詠んだ「父不見御荷鉾も見えず神流川 星ばかりなり万場の泊まり」という叙情豊かな一首は、多くの人の心に残った。秩父や上州の峠越えの山として古くから登られていた。しかし昭和58年、山頂のすぐ下に御荷鉾スーパー林道が開通してから、昔日の登山道は廃道化が進み、マイカーによる軽登山が一般的になった。


西御荷鉾山山頂

自分は、この山は万場から歩いて登ろうと思っていた。車を持ってからもそのつもりでいたが、結局マイカー登山してしまった。膝の状態はかなり回復したが、まだ無理はしたくないので、このくらいの短い距離がちょうどいい。

御荷鉾山は主峰の西御荷鉾山と東御荷鉾山があるが、もうひとつオドケ山を含め三株山と呼ばれていた。どれも車道からすぐに登頂できるので、この3座を全て登ることにする。

西御荷鉾山への登りは、上部で自然林の尾根となる


自然林の尾根

西御荷鉾山には不動明王と刀剣が奉られている


不動明王と刀剣

草付の西御荷鉾山山頂


明るい山頂

西御荷鉾山山頂から北面に、榛名山塊が大きく眺められる


榛名山

西御荷鉾山山頂から浅間山を望む


浅間山

西御荷鉾山からの眺め。稲含山の後ろに荒船山の平頂、そして北アルプスの白い稜線が横たわる


北アルプスも

本庄児玉インターから、国道462号を西進する。神流川に沿った静かな道は、新町駅から走る上野村行きのバスの運行区間だ。電光板の温度計は氷点下2度を指している。
鬼石から万場へ。10年前の笠丸山・諏訪山で初訪して以来、この西上州の山域は大体毎年来ているが、観光地とは無縁の、素朴な山間の地という印象は変わっていない。ここは昨今のデジタル化やIT化の波はやってきたのだろうか。今回、携帯の電波は麓ではさすがに通じていた。

民家脇の、山へ向かう坂道に入る。かなり急な細道で、凍結しているとやっかいだ。今日は幸い、道脇に少しばかりの雪が残るのみだった。みかぼ高原荘を見てからさらに上り、御荷鉾スーパー林道に出合ったところで車を停める。西御荷鉾山の登山口になっていて、ここから歩き出す。
御荷鉾スーパー林道は冬季通行止めだが、御荷鉾山は車利用で登れる様に、ここから投石峠の間は車で行き来できるようだ(ただし雪や凍結があった場合も、通れるのかわからない)。

ひと登りで尾根に上がる。右は杉林、左は自然林で、北西側に富士山のような真っ白い峰が見える。一瞬何の山かと不思議に思ったが、もちろん浅間山である。頭上では強い季節風がピューピューと音を立てて尾根を乗っ越している。雪は日陰にわずかに見られるのみ。
快晴の空。日がさしてほしいのだが、杉林の背が高くてなかなか尾根を明るくしてくれない。高度を上げるとミズナラやリョウブの自然林が多くなり、南登山口からの道を合わせるとすぐに、西御荷鉾山の山頂に着く。歩き始めてからほんの30分かそこらである。

西御荷鉾山から投石峠への下り始めは薄い雪が積もっていた


薄く積雪

東御荷鉾山から、城峯山の電波塔兼展望台が見える。その右手前に光っているのは城峯神社の屋根か


電波塔が見える

東御荷鉾山にかけられていたプレート。「三株山」がみかぼ山に転化したようだ


みかぶ山

登山家で科学者でもある詩人、尾崎喜八の記念碑


「万場の泊まり」

尾崎喜八記念碑付近から見る東御荷鉾山


東御荷鉾山

南登山口は展望がいい。両神山(左)と甲武信岳(右端)が並んで見えるのは珍しい


奥秩父の主峰が並ぶ

不動明王像が立ち、たくさんの刀剣が奉られている。そのすぐ先は芝原になっており、南北の展望が広がっていた。ここからの四囲の山々の眺めはすばらしい。北側には浅間山や北アルプスなど、白き峰々が目を惹くのと対照的に、南側は黒々とした南関東の山がずらりと並んでいる。東は奥武蔵の武甲山から始まって奥多摩の山、雲取山とコブコブの飛竜山を挟んで奥秩父山塊。和名倉山、唐松尾山から甲武信岳、金峰山、遠く小川山までまさに一直線だ。
その手前には一段低い外秩父の稜線がある。城峯山、父不見山、破風山。奇怪な岩稜の二子山の後ろには両神山がこれまたユニークな山容を見せている。奥秩父の主峰である両神山と甲武信岳が重なって見えるのは珍しい。

西御荷鉾山からの眺望は、奥多摩や秩父をよく歩く人は時が経つのも忘れるくらい、山座同定に熱中するだろう。山頂に展望盤はないが、そのほうがいい。外秩父の山がこれだけたくさん見れるところも貴重である。さすが、関東地方の要所にそびえる、どこからもよく見える山のことだけはある。
この草地の少し下に、「大」の字の刈り払いがあるとのことだが、よくわからなかった。

山頂から、東側の登山道を下る。「藤岡市日野小柏」への分岐の標識の立つあたりは、少し雪が残っている。そこから先は植林帯となり、投石峠まで淡々と下っていく。山頂の明るい展望がうそのように山道は暗く寒々としている。
スーパー林道の切り通しに出合ったところが投石峠である。投石とは「ナゲシ」から当て字的に転化したのであろうか。この投石峠の北側の裏手に小さな崩壊地があるが、そのような崩れた場所を表すのに「なぎ」(崩)の字を当てることがある。

峠から東御荷鉾山を目指す。登り口の始めがグズグズの急坂で気が抜けない以外は、ここも穏やかな登りが続く。比較的大きなコブを南側から2つ巻き、再び自然林の登りになる。振り返ると木々の向こうに白い峰が覗いていた。八ヶ岳だった。高度を上げればもっとくっきり見えるかと思ったが、樹林の背が高く、結局樹林越しの眺めのまま東御荷鉾山の山頂に着いた。西御荷鉾山と同じく不動明王が奉られているが、展望は乏しい。ただ、南面はわずかに眺めが広がり、奥武蔵の東の端である笠山まで望むことが出来た。
軽く食事をとって投石峠へ引き返す。植林地の往復は単調なので、踏み跡を外して途中のピークに登ってみたが、さしたる展望もなく下りはヤブこぎとなってしまった。

御荷鉾スーパー林道は昭和58年に開通。時の総理大臣の筆による記念碑が立っていた


スーパー林道記念碑

オドケ山へ向かう登山道から見る西御荷鉾山。乳房のよう


形のいい山

オドケ山は静かな山頂


静かな山頂

神流川にかかる橋から、万場の町並みを眺める


万場の町

車のあるところまで、車道を歩くことになる。途中で尾崎喜八の記念碑があり、先の「父不見御荷鉾も見えず~」の歌が収められている名著「神流川紀行」の説明が書かれていた。尾崎氏が専門の鉱物の研究のために万場を訪れたのがやはり1月、今の自分と同じような風景を眺めていたのかもしれない。この記念碑がある場所の近くに、東御荷鉾山がよく見える展望地があった。

記念碑からすぐのところに、南登山口があった。広い駐車場からは、両神山を中心に奥秩父の山々、そして八ヶ岳がよく見える。朝ここに車を置いてもよかったかもしれない。車のある西登山口へはさらに、10分ほどの歩きだった。

車の前で立ち止まらず、さらに西の車道を進む。ここから先は冬季の車両通行は禁止なのだが、ゲートで閉鎖されているわけではないので車は入れてしまう。現に、2台ほど走っているのを見かけた。
スーパー林道開通記念碑がある。昭和58年に開通したとのことで、時の総理大臣の筆による石碑である。このような標高の高いところに、これほど立派な道が敷かれたというのは、当時としては大きな出来事だったのだろう。

やがて右手に、丸くてかわいい山が見えてくる。オドケ山は小さい山だが、東・西御荷鉾山と違って全山が広葉樹林で覆われていた。秋葉峠から車道に沿った山道に入る。右に見上げる二つの御荷鉾山が乳房のようだ。山頂へは周回コースになっているはずの登山道を、左回りで登りたかったのだが、その入口がわからないので結局は右回りで行く。登り口からまたしても30分弱でオドケ山山頂に着く。

祠が2基ある山頂は樹林の中だが、明るい雰囲気で居心地がいい。西に赤久縄(あかぐな)山が大きい。山頂から左回りで下っていくが、踏み跡がかなりわかりづらい。変なところに下ってしまっては大変なのでコンパスを取り出して、方向を確かめながら下る。やがて行きに通った道と合流したが、小さなシールみたいな目印が貼ってあるだけだった。気づかなかったはずだ。

車の停めてある西登山口に戻ったのは1時過ぎ。時間的には短かったが、静かな山を満喫した。
ゆっくり運転して、万場や鬼石の町を眺めながら帰ることにする。途中の道の駅に寄って、三波石(さんばせき)に代表される当地産出の岩石の展示場や、石器時代の住居跡など見学していく。