~岩からヤブ、賑わいの展望台へ~ たついわ(1265m)からあらふねやま(1423m) 2003年5月3日(土) 晴れ 7:20JR高崎駅-[上信電鉄]-8:21下仁田駅8:35-[南牧バス]-8:55雨沢バス停-[タクシー]-9:15線ガ滝9:25-9:35分岐点-10:20稜線-10:40西立岩10:55-11:25分岐-11:55縦走路12:00-12:30経塚山(荒船山)12:45-13:10トモ岩13:25-14:25相沢登山口-15:00荒船の湯15:51-[下仁田町営バス]-16:15下仁田駅16:26-17:27高崎駅(パークイン高崎泊) 歩行時間:4時間50分 |
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今年のゴールデンウィークは、新型肺炎の影響などで海外より国内のほうが混みそうだ。当初は榛名山周辺から伊香保温泉コースを計画したが、静けさを求めて西上州へ再び足を運んだ。 この日は高崎に泊まり、翌日も群馬の山を歩いた。翌日の小野子山・十二ガ岳へ 立岩から荒船山に向かう場合、威怒牟畿(いぬむた)不動から星尾峠を経由するのが一般的のようだ。だが長丁場になり、三ツ瀬へ下山した後のバスが1便しかない。 ここは不動を経由せず、尾根伝いに少々のヤブ漕ぎをして直接荒船山に登る道を取る。さらに途中までタクシーで入ることにする。
●線ガ滝から立岩へ 雨沢バス停までは先月の黒滝山と同じ。今回はバス停前の雨沢ハイヤーでタクシーに乗り、立岩登山口のある線ガ滝まで上がる。 1ヶ月経って、付近もずいぶんと新緑が進んでいる。爽やかな5月の風、と行きたいが今日は無風で暑くなりそう。 タクシーを下り、すぐ下にある線ガ滝を見学する。滝壷までは、かなり急な螺旋階段を下る必要があるが、今日歩く予定の岩場の準備運動も兼ねて下ってみる。細く流れる一筋の水の流れ、付近の緑によくマッチしている。 車道に戻り、50mほど進むと登山口となる。杉林を10分ほど進み、立岩に向かう分岐に入る。指導標には「中級向き」とある。なお、登山口にある案内図にはこの分岐は描かれていない。 森閑とした山道を緩く登って行く。暑くも寒くもない、登山にちょうどいい気候になった。やがて雑木林となりあたりがパッと明るくなる。標高の低い割に、まだこのへんは芽吹きが少し進んだ程度の森だ。いくつもの種類のスミレが咲き競っている。
枯れ状の沢に沿う頃から傾斜が強まり、長い鎖が現れる。最初のうちは頼ることもないが、だんだんと手をつくほどの斜度になるにつて、思わず鎖につかまるようになる。浮き石も多く、下方に登山者がいるため落石をしないように慎重に上がって行く。 道は右の岩壁の縁を、鎖を使って登るようになる。右下は切れ落ちスリルがある。横幅の広いザックを背負っていると少々苦労するかもしれない。
アカヤシオ咲く中、岩の間をすり抜けるようにして急登をこなし、稜線に上がる。右に東立岩の方向にも踏み跡があるが、今日は先を急ぐ。西立岩に向かう。 細いながらも水の流れを時々見る。巨大なおわんの中を這い上がるように、再び稜線に達する。左側に広大な展望が広がる。 短い梯子を上って少し行くと西立岩頂上となる。多少樹木にさえぎられるが、大きな展望と爽やかな風の中休憩する。 正面にイルカの頭のような荒船山(経塚山)、その左奥に浅間山。噴煙を上げているのが意外なほどリアルに見える。さらにその左には蓼科山、八ヶ岳などの高山群。八ヶ岳はまだ残雪をしたためている。 右方には荒船山から続くイデミ、毛無岩などの岩峰群。毛無岩の斜面はアカヤシオのピンク色が目立つ。 眼下の潅木類にはアカヤシオの他に白いツツジ、おそらくヒカゲツツジと思うが、先週三ツ森(中央線沿線)で見たものよりかなり小粒な花だ。この付近はまだ芽吹いていない。
●ヤブをくぐり抜け荒船山へ 頂上を後にし、展望よい岩尾根を進む。もう1箇所眺めのよい休憩地を過ぎると、急な下りがしばらく続く。 やせ尾根の楽しい稜線歩きに混じって、長い鎖の登りがあるが、足場は豊富にあり下りでもそう難しくはなさそうだ。 以降はやや拍子抜けの感もあるほどのおだやかな稜線となる。ただしやせ尾根で両側が切れ落ちている箇所も多い。 笹が現れ、目の前にさらに大きな岩峰を見る。そのすぐ先で道は左に曲がって行く。それを進むと威怒牟畿不動に向かうが、ここで正面の、笹の中に伸びている踏み跡に入って行く。コースタイム通り、立岩からほぼ30分ほどの距離だ。 見えていた大きな岩は左から巻く。足元に、今年初めてのフデリンドウを見る。このへんは笹はそう深くないが高度はどんどん上がっていく。 時々右側の視界が開け、まだ登山道のないと言われる「北立岩」の岩塔が盛り上がっている。これもアカヤシオにかなり彩られている。
やがて黒滝山~毛無岩からの縦走路に合流する。自分の来た方向を指して、「立岩(ヤブ)」と書かれた導標が立っているが、ここまではそう大したヤブではなかった。むしろここから経塚山への間が、背丈を越す笹もあってヤブ深き道であった。ただし道形はここからずっとはっきりする。 経塚山はまだ遠く見上げる位置にある。ここでいったん休息を取る。 笹深くなり高度もどんどん上がって行く。星尾峠への道を分け、急登を踏ん張る。やがて人の声が聞こえてきて、頂上近いことがわかる。 祠のある経塚山は荒船山の最高点。10名ほどの登山者がお昼を取っている。木に囲まれて展望は乏しい。 山頂を辞し、しばらくの急な下りのあと、平坦な林の中の道がずっと続く。これがあの、航空母艦と呼ばれる部分にあたるのだろう。 はた目から見ても平らでユニークだが、実際歩いてみたほうがその平らさを実感出来る。「あそこは平坦な道」と言われても実は小さなアップダウンがあったりするものだが、ここは本当に何のデコボコもない、園地のような場所だ。 周囲はミズナラの木々で、新緑・紅葉の頃は格別だろう。今は芽吹き直前の森で頭上が明るいのみである。 その上、驚いたことにこんな山上に沢が流れている。許可されているのかどうかわからないが、テントサイトとしてもいいかもしれない。 林を抜け、相沢登山口への分岐を分けると避難小屋、トイレがありそのすぐ先がトモ岩と呼ばれる展望台だ。 春霞みの中で、くっきりした眺めが得られないのが残念だが浅間山、手前の物見山などの展望が得られる。切れ立った足元のはるか下方には、新緑の森の中に車道がうねうねと伸びている。 周囲は家族連れが多く、ザックを持たない軽装の人もけっこう見かける。地元の人に多く愛されている山だと感じられる。 ●荒船の湯へ下山 体力を要した縦走もようやく下山となる。下り始めに、鎖や手すりの代わりに白いガードレールが取りつけられており奇妙だ。 傍らにネコノメソウを見る。沢が近いと感じる。杉林と新緑瑞々しい森を抜けて、相沢登山口へ。近くの園芸地ではアズマシャクナゲが満開だ。山の中で見られる季節も、もうすぐやって来る。 さて、ここまで順調に来れたので、どうやらバスに乗る前に温泉に入れそうである。 車道を30分ほど下り、荒船の湯への近道に入る。農地を歩き、川を挟んで三ツ瀬集落に上がる。 朝見た雨沢集落の様子とは違った、「町」的な雰囲気の農村だ。 山域で言えば立岩も荒船山も西上州、しかも荒船山はこの山域の代表格と言われるが、自分の印象では、荒船山はいい意味で都会的な感じを抱かせる。広い山上平原、山頂での賑わい、トモ岩からの展望と、どこか垢抜けたところがある。 指導標に従い、国道手前の舗装道路を少し歩く。川の見下ろせる場所にバス停があり、そのすぐ上が荒船の湯だった。 今日はまさに山越えをした。標高や歩行時間だけ見るとそう大したことはないが、密度の濃い充実した山登りとなった。 |