~越後を代表する利根川水源の山~
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2008年10月12日(日)~14日(火)

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●下山も長丁場。バスで温泉へ
10/13(月・祝)丹後山~大水上山~兎岳~中ノ岳~日向山~十字峡~野中  晴れ後時々曇り


十字峡への下山路は艶やかな紅葉の尾根 [拡大]

池の段まで戻る。水の量も気になるところで、この時点で1リットルを切っている。10月とはいえかなり汗をかいており、これから自炊用に400mlを使うとかなりぎりぎりの量になる。

再び重いザックを担いで下山に入る。七合目の小天上ノ峰(1704m)までは急坂が続くが、見事な錦色に彩られた山肌に慰められる。
さらに下って振り返れば中ノ岳が重量感をもった姿で迫っている。左右に長い翼を広げ、日本百名山の越後駒を露払いのように従えている。新潟中越の数ある山岳の中で、中ノ岳はやはり主役の座を譲らないだろう。

進む先にアンテナ塔のような小屋が見える。その日向山までは低潅木や池塘などがあり、アップダウンのきつくない尾根歩きが楽しめる部分だ。
小さな池塘が点在するあたりは生姜畑と言われ、以前この付近で金鉱の採掘が行われていたそうである。生姜の根っこのような大きな金が採れたため、そういう名で呼ばれたらしい。

やや登り返して日向山(1561m)に着く。アンテナ設備のある場所まで上がって休憩する。迷ったがやはり自炊をすることにした。腹が満たされたかわりに、水の量はペットボトル1本を切った。

日向山からはブナの樹林帯となる。急坂が続き、足にもかなりの負担がくる。大きな雲が空を覆い、暑さがいくぶんやわらいだのが救いだ。
日向山が5合目で、それ以降合目標の数字が小さくなっていくのを励みにする。
優しいオレンジ色のブナ林も、高度を下げるに従い緑色が復活してくる。キタゴヨウマツの千本松原が2合目、十字峡はまだはるか下。このあたりから傾斜は増し、1合目を過ぎると落っこちるような急降下となる。飯豊連峰の梶川尾根を思い出させる。

紅葉の尾根
中ノ岳を見上げる
越後駒への稜線
十字峡登山口へ

鎖のついた岩場の下りは、疲れがピークに達しているので慎重に慎重に、と自分に言い聞かせる。
十字峡から中ノ岳への登りはつらいと言われるが、それはこの最初の1・2合目あたりまでの急登の印象が強いのだろう。それ以降もきついことには変わりはないのだが、展望も楽しめて苦しいだけの登りでもないように思う。まあ実際登りにとってみなければわからないが。

岩がちの急坂を、走るように下っていく人に抜かれる。あとから来た人の話によれば、枝折峠から越後駒~中ノ岳を日帰りで歩いてきた人らしい。
中ノ岳頂上では、自分の歩いた逆のコースを日帰りで歩いている人がいた。この山域にはそういう人がザラにいる。東京周辺の山に足が慣れてしまった登山者には到底及びがつかない。

水の流れる音が大きくなり、ダムが近くなったことを思わせる。緑の優勢な樹林帯をジグザグに下ると、ようやく道路のコンクリート色が見えた。

山仕事のおじさんに声をかけられる。「熊はいたかね?」先日、地元(南魚沼市)で熊騒ぎがあったので、もしかしたらこれが最近の挨拶代わりなのかもしれない。会わなかったというと、「それは残念。」と返された。

十字峡登山センターの前に下り立つ。昨日の今日なのに、随分久しぶりのような気がする。売店の自動販売機はカメムシが入り込んで使用不能になっていたため、店の中でサイダーを買う。水不足からやっと解放され、生き返った感じだ。
ビールでなくサイダーが欲しかったのは、何か甘いものを体が欲していたからだろう。

さて、今日の歩きはこれで終わりではなかった。これから野中まで車道を歩く行程が残っている。店の人に聞いたらしゃくなげ湖の北側の道のほうが短いと言う。ちなみに北側は4km、タクシーで来た南側の車道は6kmだそうだ。
土砂崩れで車の通らない北側の道をのんびり進む。しゃくなげ湖の三国川(さぐりがわ)ダム付近は観光客で賑わっていた。
4時台のバスまで1時間あまりだが間に合うだろう、と思っていたら甘かった。やはり疲労がたまっていたらしい。野中バス停まで1時間半かかってしまった。
下山が夕方になろうとは思いもよらなかった。日の傾く中、5時5分のバスを待つ。

バス利用の登山者は自分一人だけ。フリー乗降区間のため、五十沢(いかざわ)温泉の看板のあるところで下ろしてもらう。5分弱の歩きで五十沢温泉ゆもとかんに着く。

2泊するのなら越後駒まで縦走してしまいたいところだが、麓の温泉で新米のコシヒカリを食することが、この季節の越後訪問の大きな楽しみである。柔らかくてほんのり甘みのあるご飯は、宝石のように一粒一粒が光り輝いている。
もう1ヶ月もすれば、今日歩いてきた山道もこのお米の白さと同じ色に包まれることだろう。

翌朝、電車に乗って帰るだけだ。越後湯沢駅の新幹線ホームに上がると、ときは通勤客で大混雑。各駅停車のたにがわ号で帰京する。


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