2009年8月15日(土)~16日(日)
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小屋の前まで戻る。オジカ沢ノ頭から万太郎山へ続く主脈は、稜線を挟んで左(南)半分が大きな雲で覆われていた。肩の小屋に入り、2食+翌昼弁当付きで宿泊を申し込む。 ここの小屋には初めて泊まることになる。今まで宿泊をしての縦走では、この先の茂倉岳避難小屋や大障子避難小屋に泊まっていて、谷川岳頂上は通過点になっていた。 一般的にも、谷川岳は日帰りの山として登られることが多いので、この肩の小屋は宿泊場所としては意外と空いているのである。それでも紅葉の時期はそれなりに混雑するようだが。 この日の宿泊者は10名にも満たなかった。早い時間に着いたので、食堂で飲んだくれの半日を送ることとなった。 小屋のスタッフは管理人の馬場さんを含め2人だけ。食事もこの2人が作る。でもカレーとかの簡単なものではなくちゃんとした食事で、ご飯もおかずも美味しく戴けた。 夜7時頃には(自分だけ)就寝。どうもいびきをかいていたらしく、同行者を寝不足にさせてしまったようで申し訳なかった。しかし山小屋の宿泊には耳栓が必需品であることを知ってもらった。 最近は睡眠導入剤というものもあるので、場合によっては携行してもよいだろう。そして何よりも、自分が一番先に寝てしまうことが、快適な小屋泊のコツなのである。
朝、あまり冷えなかった。空の雲が厚く放射冷却がなかったためだろう。 朝食を済ませ出発。オキの耳(1977m)に上がると、雲が多く群馬県側の眺めがあまりよくない。しかし時間の経過と共に雲は取れてきた。 昨日あまり見えなかった馬蹄型の稜線が、ここからはよく見える。 岩尾根の稜線を進む。ツリガネニンジンやハクサンシャジン、シモツケソウなど色の鮮やかな花が多くなってきた。いつしか空は快晴になり、高度感と展望、高山植物とこの上ない稜線歩きである。 進む方向から馬場さんがやってきた。尾根の様子を見てきたのだろう。昨晩何度か話をし、また他の登山者との会話を聞いて、登山者への世話や心配りがすごく細やかな方だという印象を持った。 一見ちょっと近寄りがたい雰囲気もあるが、優しくて頼りになる管理人さんである。
絶壁でムズムズするような「ノゾキ」を経て最低鞍部に下っていく。 ウメバチソウ、ウスユキソウ、オミナエシ、ミヤマコゴメグサ、ハクサンフウロ、キンコウカが目につく。初秋の花ばかりでなく、このあたりは季節がごっちゃになっている感じだ。 低い樹林帯の鞍部から見上げる一ノ倉岳は高い。一気の登り返しが始まる。しかしそれほど長い登りではない。 背後にオキの耳の存在を感じながら一ノ倉岳頂上(1974m)に登り上がる。 正面に茂倉岳に続く緩やかな稜線、そして右手に蓬ヒュッテや清水峠の小屋も望める。 雲は湧き立つのだが稜線を隠すことはない。気温は高いがカラッとしている。盛夏で、これほど天気のいい上越稜線も珍しい。 この先、7月頃には大きな雪田が残っているのだが今回は全く無かった、イワイチョウの咲き残りを見る。 茂倉岳は1978mと、谷川岳より1メートル弱高い。今回の最高点はここである。 うねる馬蹄型稜線の先に鋭い大源太山、大きな朝日岳。最奥に巻機山が控える。北側には湯沢方面のスキー場。尾根待末端には関越自動車道・土樽ドライブインの駐車場が見下ろせる。 新潟側の斜面には、関越トンネルの通気搭が立っているのも見えた。 西方に目を転じれば苗場山の傾いた台形状の姿もよく見える。振り返って来た方向を見ると一ノ倉岳と谷川岳の、いでたちの全く異なった峰が並んでいる。 自分の著書の表紙の写真は、まさにこの場所から両峰を撮ったものである。 |