今年初めてテントを背負い、向かうのは八ヶ岳だ。日、月とも天気は良さそうである。
南八ヶ岳の赤岳から硫黄岳までのルートは、奥多摩の石尾根と同様に、自分の体力レベル確認のバロメーターになっている。ここをスイスイと歩ければ、向こう一年はどこでも、体力に不安なく歩けそうな気がする。
中山展望台より、横岳の大同心・小同心を見上げる
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美濃戸口に着いたのは6時過ぎ。早朝発日帰り予定の人もすでに出ているようで、あたりは閑散としていた。駐車料金節約のため美濃戸までは車で入らず、いつものようにここから出発である。
カラマツ林の中の林道を緩く上がっていく。山中にショートカットの道もあるが、朝早いので笹が朝露に濡れており、今日のところは素直に林道を行く。
時々車が横を通り過ぎていく。この奥の美濃戸まで車で入ってしまえば楽なのだが、1日の駐車料金が1000円では、一泊二日の山行は少し考えてしまう。今日の行程は赤岳鉱泉までなので、時間には余裕がある。
山荘の立ち並ぶ美濃戸を過ぎ、少し先の美濃戸山荘で南沢ルートと分かれ、さらに林道を行く。今までは南沢ルートを歩くことが多く、ここを歩くのは13年ぶりなので、道の様子はあまり覚えていない。
林道は大きく迂回していく。山の中に近道があるようにも見えるが、変なところに出てはまずいのでここも林道歩きに徹する。
作業小屋の先で林道は終わって、北沢を橋で渡ると登山道となった。見通しのきかない林間をしばらく行くと前方が開け、明るい沢沿いの道となった。遠くに見えるのは硫黄岳の稜線だろうか。
標高はまだ2000mを越えたくらいで、残りは200m以上ある。まあ焦らず行きたい。
右手から支沢が合流してくる。こちらの水は赤く、おろらく温泉成分が含まれているのだろう。赤岳鉱泉への道はその方角に向かっていた。
木の橋で沢を何度も渡っていく。やがて大同心、小同心の岩峰も見えてきて、八ツに来た実感が湧いてくる。峰の松目が見上げられる場所で少し休憩、少し登って赤岳鉱泉に到着した。
団体さんがいたが、思ったほど混雑してない。一昨年の土曜に行者小屋でテント泊したときは、午前中からすでにテント場は満杯近くて張る場所探しに苦労した。きょうは日曜なのでテントは少ない。また、標高が100m高い行者小屋のほうが、テント設営地としては人気があるのだろう。
設営後、中山展望台まで行ってみる。赤岳鉱泉と行者小屋との間にあるのだが、行者小屋からだと目と鼻の先なのに、赤岳鉱泉からはかなり登らされる。鉱泉の標高が2230m、中山展望台は2400mである。ちなみに行者小屋は2340mくらいある。
分岐の中山乗越から中山展望台へは数分で着く。周囲には樹林が伸びているが、阿弥陀岳を始め赤岳、横岳の大・小同心がよく見えた。
鉱泉に戻り、ビールとおでんを買う。登山者はあまり増えてはいない。テラスのベンチは北沢からの風がよく通り涼しい。気持ちよさとビールの酔いで眠気が襲ってくる。
明日は長丁場になるので、ラジオで大相撲中継と6時のニュースを聞いて就寝する。
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朝、お湯を沸かそうとしたら、コンロのガスが完全に切れており、火がつかない。うかつにも栓を開けたままにしていた。
しかも今日に限って、コンロを一晩テントの外に置いておいたので、ガスが出ていることに気づかなかった。朝はおにぎりと軽食でしのいだ。
あたりがようやく白んできた4時半に出発する。テント裏の樹林帯に入り、大同心への踏み跡を分け、小さな沢を越えると緩やかな山腹の道となる。眺めは乏しく変化のない状態が続くので、しばらくは我慢が必要だ。
シラビソの森はやがて尾根通しの道に変わり、傾斜がきつくなってくる。ジグザグに登っても登っても、まだその先がある。赤岩ノ頭下までの標高差400mは小さくない。
南八ヶ岳に初訪した1999年は赤岳鉱泉にテント2泊しており、2日目にここを登って稜線を一周、3日目はテントを背負って再びここを登り、稲子湯へ下った。まだ30代で若かったとは言え、ここを2日連続登ったとは相当な元気者だったようだ。
空の面積が少しずつ広くなって、ダケカンバが見られるようになった。ハイマツの中のひと登りで一気に展望が開け、硫黄岳への稜線が目の前となる。赤岩ノ頭下に到着である。
四方に眺めよく、北八ツや蓼科山、遠くは北アルプスまで一望だ。振り返ればもちろん赤岳、阿弥陀岳、横岳の主役も控えている。そして朝の斜陽を受けてシャクナゲが明るく輝く。
白砂の上を歩いて硫黄岳へ。甲府側は一面の雲海だ。硫黄岳山荘の立つ大ダルミまでの緩やかな稜線が形いい。
ケルンの立つ登山道を下り、その硫黄岳山荘へ。道の両側にコマクサが咲いていた。時期的にまだこれからかと思ったが、もうすでに、かなりたくさん花をつけている。山荘の横の植物観察園に入ってみると、シロバナコマクサが一株あった。