~日本最高所の野天風呂を訪ねる~
2007年8月25日(土)~26日(日)
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夏山シーズンも終盤、一泊だけだがテントを背負って八ヶ岳に出かけた。 今まで素通りしてばかりだった本沢温泉の幕営地を拠点として、天狗岳への周回コースをとる。8月はかなり歩いたので、今回は縦走はせずにゆっくりすることにする。 本沢温泉は日本最高所の野天風呂がある。テント設営地のすぐそばに温泉があるという、いい場所である。
●硫黄香るいで湯の地へ 新幹線の佐久平駅から小海線に乗り換える。小海駅で1時間近く待ち、バスで稲子湯へ。 日差しは強いがやはり涼しい。稲子湯からの歩き出しは、林道を絡みながらの緩い登り。かすかに香る硫黄の臭いに後ろ髪を引かれながら、高度を上げていく。10時過ぎの歩き出しで暑さが気がかりだったが、沢沿いの道はひんやりするくらいだ。 足元に軌道跡が現れ、その傍らにホタルブクロやアキノキリンソウが咲く。緑濃い林の中は暑くもなく寒くもなく、快適な道だ。 さっきまで耳についていたセミの鳴き声が突然やむと、途端にあたりが静寂に包まれる。少し前まで夏一色だった山も、次の季節への移ろいを耳で感じ取る。 駒鳥沢の水場で一休み。みどり池まで「はっても30分」なる標識がかかっている。稲子湯の方向には「何となく1時間」とある。 標識の通りここから若干斜度が増すが、20分余りで尾根に乗る。数分でしらびそ小屋の建つみどり池に到着する。 ここではいつも何人かの人が休んでいる。みどり池の向こう岸には稲子岳、左手には天狗岳がそびえる。青空が爽やかだ。今日の行程は展望の楽しめる場所がほとんどないのが惜しい。
ここでのテントも考えていたが、歩き始めてからまだ1時間20分しか経っていない。やはりもう少し先に進む。もっとも本沢温泉へもここから1時間余りで着いてしまう。 木道の湿原帯から、道は緩やかな登りに転じる。本沢温泉まではこのこんもりしたピークを越えていかねばならない。周囲はしらびそを中心とした、鬱蒼とした針葉樹の森だ。 木々の間を割って日が差し込み、そこだけ苔が明るく照らされ輝く。周りの音を吸い取ってしまうような針葉樹林の静寂。 道が下り気味になるとシラカバやナナカマドも混ざり出し、雰囲気が少し変わってくる。正面に硫黄岳の大きな山体が時々覗く。 下りきったところで林道と出合う。このへんですでに硫黄の臭いがぷんぷんしている。林道を10分ほど行けばもう本沢温泉の幕営地である。林の中の静かな場所だ。 本沢温泉はそこから3分ほど登ったところにある。テントの申し込みをしに行く。ついでに温泉の入浴料も一緒に払う。 本沢温泉には内湯と野天があり、料金は別々だ。今日と明日、分けて入ろうと思う。内湯は宿泊者が多いと入れないこともあるという。今の時間は大丈夫なようなので、今日のうちに内湯に入っておく。 まだ時間が早いから土曜の温泉宿も閑散としている。独り占めでじっくり入る。やや白濁した、硫黄の香りのするお湯だ。湯の花が浮いている。 硫黄岳や天狗岳の登下山口となっている本沢温泉は、午後になると続々と登山者がやってくる。下山するなり、小屋前の売店で野天風呂の申し込みをしてすぐ入りに行く人も多い。タオルを首にかけて歩く人がいるのを見ると、ここが標高2100mの山の中とは不思議な気がする。 ふわふわした気分でテントに戻る。幕営地には10張りほどのテントが張られ、けっこうな盛況ぶりとなった。幕営地の中央に細い沢が流れ、その近くにテントを張る。 山は8月下旬ともなるとさすがに夜は冷える。靴下を2枚重ねで履く。日の落ちるのも早くなって来た。 夜は瀬音を聞きながら眠りにつく。 |