赤岳から北へ、稜線を下り始める。ところどころでガレ場になり、落石しやすい場所もある。自分は何度も歩いた道なので難儀はしないが、すごくつらそうに下っている人もいる。
オヤマノエンドウ、チョウノスケソウなど夏の高山植物がどんどん現れる。ハクサンシャクナゲも咲き始めている。そしてハクサンイチゲで敷き詰められている斜面もあった。
日ノ岳付近の岩場から見下ろす二十三夜峰は異彩を放つ
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赤岳天望荘の建物の間を抜け、地蔵様の立つ地蔵ノ頭に到達する。地蔵尾根の下り道が分かれている。右頭上の雲の塊が大きいせいか、日光が反射して稜線上はかなり暑い。
地蔵ノ頭からさらに稜線を進むと、岩場を登るようになる。日ノ岳を東側から巻くところで一枚岩の鎖場に出る。先に下ってくるグループの通過待ちをしてから登る。この岩場は久しぶりでさすがにちょっと緊張する。ただ、昨年登った八海山や、信越の山の岩場と比べれば易しく、高度感にさらされるような場所は少ない。
更地状の場所に出るとヤツガタケスミレやコマクサそしてミヤマオダマキ、ウルップソウと花のオンパレードだ。ただ植生保護のためなのか、ところどころでロープで柵がしてあり、眺めのいい岩角に立つことが出来ない。以前はこのような柵はなかった。やはり歩く人が多くなってきたので仕方のないことなのか。
鉾岳で西側に回り込む。ここも花が多くウルップソウやハクサンイチゲを多く見る。今まで八ヶ岳に登った中で、今日は一番花が多い日かもしれない。
周囲の山の眺めはよく、天狗岳や蓼科山もよく見えている。また左手下には広大な樹林の中に、テントの花咲く行者小屋が常に見え続けている。行者小屋からは赤岳や横岳の眺めがいいのだが、その山側からも、行者小屋はどこからもよく見える。
鎖場や梯子のかかった岩場はさらに続く。石尊峰のピークで横岳の頂上部が見えてくる。ここからはいくぶん穏やかな岩尾根となり、さらにもうひとつ先のピーク、三叉峰まで行く。杣添尾根を登ってくるグループがあった。ここからは雲海に浮かぶ富士山がきれいなはずだが、今日は雲で見えない。
横岳までもう一息だが、今日は登山口からかなりの距離を歩いてきたので、今回はこの三叉峰で引き返すことにする。
来た道を戻る。岩場にもずいぶん慣れ、快調に歩を進める。山梨県側の雲もいつしか取れて、麓の野辺山方面が見下ろせた。赤岳は再び全貌を現している。
登山道には若い女性のグループが多い。少し前までは、小さな子供を連れた若い家族連れが増えてきたなと感じる時もあったが、山を行き交う人々の顔ぶれもまたずいぶんと変わった。
地蔵ノ頭で、行者小屋に下る道(地蔵尾根)に入る。眺めのいい下りから、もう一体の地蔵様を見ると階段道の急坂に転じる。途中で大きな鹿が2頭、目の前で登山道を横切ってびっくり。八ヶ岳で鹿を見たのは初めてかもしれない。
行者小屋に下り立つと、朝とは比べものにならないほど人、人また人で賑わっていた。テントは小屋の裏手にまで張られている。以前も張る場所がなくて、小屋のさらに奥まで行き、登山道脇の林の中に幕営したことがある。ここにテントで来るときは、午前中に着かないといい場所が取れないようだ。
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鎖につかまって |
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どんどん登ってくる |
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こんな所で |
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賑わうテント場 |
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しっとりとした緑 |
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自分のテントに戻り、一息つく。すぐ横の狭いエリアに、2つのテントが張られてしまっていた。まあ今日は仕方がないだろう。
小屋でおでんを売っていたのでつまみにする。赤岳や横岳を見ながらのおでんとビールは最高である。夕方近くになって空模様はさらに好転し、青空が広がってきた。
これだけテントが多いと、そのうち人のいびきで寝られなくなりそう。まだ明るいうちに夕食を済ませ、早めに寝るとする。
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9時間寝た。朝5時頃までは青空も見られたのだが、しだいに雲厚くなる。天気予報通りである。今日はもう下るのみである。テントをたたんで行者小屋を後にする。
早朝からの下山。鳥のさえずりがこだまするだけの静かな山である。こういう雰囲気も独特でいいものだ。昨日は気づかなかったが、オサバグサもひそやかに白い上品な花をつけていた。
同じく下る人はあまりいないが、登ってくる人は多い。おそらくほとんどが日帰りだろう。自分も昨日は1日で赤岳・横岳(三叉峰)を登り、行者小屋には15時過ぎに下って来れたので、そのまま下山することも不可能ではなかった。でもこの山を日帰りで終わらせてしまうのはやはりもったいない。
美濃戸に戻り、林道に出ると急に霧深くなり、雨がパラパラと落ちた。梅雨明けはまだ少し先になりそうだ。
やっぱり八ヶ岳は景観、展望、高山植物どれをとっても最高クラスで楽しい山である。こんなに魅力のつまった山域が日帰りまたは一泊圏内にあるのは、東京の登山者にとっては幸運であろう。今回それを改めて実感した。
美濃戸口の八ヶ岳山荘で入浴し、帰途に着く。時間が早いので中央道も渋滞なしだった。