~ブナ林と高山植物、展望の稜線漫歩~ かむろさん(1365m) 2003年5月30日(金)晴れ
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●パノラマコースを下山 秋田県側山麓の「新五郎湯」という宿に携帯で電話してみる。通じてしまった。この時点で、今日のうちに下りる決心をした。 どうも自分は、ある程度満足してしまうと、それ以上無理をしない性分のようだ。 下りはパノラマコースで秋田県の西ノ又登山口を目指す。1人重装備で登って来た。避難小屋に泊まると言う。 台風の影響を恐れ下山するのは自分の判断、それでも山頂で一夜を明かそうとするのもその人の判断、どちらも正しいと思いたい。しかしやはり、ちょっとくやしい。
スリル感ある爽快なやせ尾根を、前神室山目指して進む。パノラマコースと言うだけあって終始展望がすばらしい。 ヒメイチゲ、ノウゴウイチゴ(花)、ツルキンバイなどが現れる。そしてシラネアオイはさらに密度を増す。シャクナゲの木やハイマツも時々見られ、高山の雰囲気を味わう。 いくつかのアップダウンを経て、有屋口への下りを分けて前神室山山頂(1345m)へ。神室山への稜線を撮影する絶好のポイントだ。残雪のある山の景観がこれほど素晴らしいとは、北アルプスを歩いた時も気づかなかった。 前神室山から先もしばらくは展望のよい花の道が続く。ミネザクラ、ニリンソウ、イワカガミ、ショウジョウバカマもまだ咲き残っている。 第三、第二ピークとやや高度を下げると、次第にブナ林に移行する。この付近のブナは、幹は太いが樹高はほどほどで、大きく枝を広げた様が間近に見られる。密集度も相当なもので、写真を撮るための品定めを何度もしてしまう。樹林帯は主に左(西)側で、右側は開け高松岳や隣の西ノ又コースの稜線が眺められる。 林床はキクザキイチゲの紫・白の混生群落となる。 パノラマコースにも残雪はあるが、倒木やヤブは無く快適に下れて助かる。このコースや西ノ又コースは秋田県側からの道だが、土内口と比べ整備が行き届いている印象だ。 県や行政機関ではなく、地元の役内集落の方々が登山道整備に当たっているらしい。地元の方の労力に感謝せねばならない。 麓の街並みが見られるピーク付近はタムシバの回廊となっている。ブナ林はかなり下まで続き、いっぷく平を過ぎてようやく杉林に引き継がれる。 気の抜けない急坂が最後に待っていた。8時間・20km以上の歩行をこなし、もうかなり足に来ていると思ったがそうでもない。今日は最初から体調もよく、急登にへこたれもしたが大方順調に来れた。
●湯宿に泊まり翌朝帰京 沢をまたぎ駐車場のある西ノ又登山口へ。バス停まではさらに一時間余り歩く必要があるが、今日は宿の送迎車を頼んでいる。ほどなくして若旦那の運転する車がやってきた。天気もよく大満足の山であった。
新五郎湯温泉まで車で20分ほど。若旦那によると周辺は紅葉の時期も格別とのこと。特に虎毛山がおすすめと言う。 秋の宮温泉郷は、虎毛山や高松岳のよい登山ベースとなっている。宿から登山口へ送迎もしてくれるので、ここに泊まればなかなかいい山行プランが立てられそうだ。 新五郎湯温泉はもともと素泊まり用の湯治宿だったが、今は食事付きで宿泊でき、しかも安い。6月~11月まで登山者向けサービスとして1泊2500円(食事別)だ。自分が泊まったのは5月30日だったが、特別に登山者料金にしてくれた。 旅館のように気の利いた設備こそないけれども、のんびりと疲れを癒せる、登山者には最適の宿と思う。 翌朝、空はどんよりした曇り。薄日も射したが果たして山頂はどうだったであろうか、知る由もない。 宿を朝9時半に出て、上湯ノ岱でバスに乗り込む頃ようやく雨が落ちて来た。横掘駅から奥羽本線(快速)に乗り新庄駅に戻る。 新幹線で東京に着いた時は大雨だった。 |