-みちのくの山と山の湯巡り-
タイトル
浄土平-一切経山-鎌沼-東吾妻山
山域吾妻
地域福島県
標高東吾妻山(1975m)、一切経山(1949m)
山行日2010年10月10日(日)  天気
沿面距離10.7km
歩行時間4時間40分
標高差399m(浄土平~東吾妻山)
宿泊沼尻温泉田村屋旅館(後日泊)
温泉沼尻温泉田村屋旅館
交通Home



2010年10月10日(日) 

土湯温泉8:40
国道、県道
磐梯吾妻スカイライン

10:00浄土平10:20
11:00酸ヶ平
11:35一切経山11:42
12:10酸ヶ平
12:25鎌沼12:55
13:10姥ヶ原
14:35東吾妻山14:40
15:37浄土平15:50
磐梯吾妻スカイライン
国道115号

16:20沼尻温泉


関連リンク
浄土平・吾妻山 自然公園財団
沼尻温泉田村屋旅館
福島県の観光有料道路


Home



朝起きると、雨は降っていなかった。東の空には青いものも覗いている。雨雲は予想より早く去っていった。昨日の降り出しが早かった分、帳尻を合わせてくれたようだ。


車で浄土平を目指す。高湯温泉を過ぎて磐梯吾妻スカイラインをどんどん上がる。
下界は標高1000m以下の雲海になっていた。ところどころある展望台にはどこでも多くの車が停まっている。眺めのいいのはもちろん、周辺の紅葉の色づきもすばらしい。これでは車を停めてもみたくなるだろう。


浄土平から稜線へ上がる道。黄葉が鮮やか

やがて吾妻小富士が見えてくるようになると、硫黄のにおいがかなり強くなった。安達太良・吾妻・磐梯山系は火山帯でもある。浄土平の広い駐車場に着くと、山の斜面から噴煙がもうもうと上がっていた。
天気予報は依然として雨になっている。そのせいか、紅葉が見頃を迎えた休日であっても、それほど混雑していない。それでも噴煙の反対側に高くそびえる吾妻小富士には、登る人の行列が伸びつつあった。

磐梯吾妻スカイライン
艶やかさ一番
噴煙を上げる
酸ヶ平は草紅葉
噴煙と小富士

ビジターセンターの裏側から登山道が始まる。このへんになると硫黄のにおいはしない。周囲はダケカンバの黄色、ツツジやナナカマドの赤が、それぞれ密集している場所があり、色づきが際立っている。
頭上には青空の面積もどんどん大きくなった。足元も色鮮やかで、白い実はシラタマノキ、青い実をつけ真っ赤に紅葉した潅木はクロマメノキだ。姥ヶ原に行く道を分けて、一切経山を目指す。

沢沿いの緩い登りとなる。振り返るとダケカンバの黄葉が広がっており、その先に吾妻小富士のお鉢がぽっかりと口を開けていた。お鉢はかなり傾斜があり、浄土平からお鉢に上がった地点が一番低く、そこから一周するにはまだかなりの高度を登らなければならない。
登る方に目を向ければ、左が笹の緑に潅木の紅葉が彩りをなす風景、右手は火山特有の岩肌をむき出しにしており、登山道を境に対照的な眺めが広がる。
また南のほうの山稜は東吾妻山を中心とした針葉樹の黒木の森となっている。すなわち、噴気口に近いところには一草一木生えず、距離が遠くなるにつれて植生が豊かになっていくのがわかる。

吾妻連峰は標高1900mから2000mの峰が連なる広大な山塊であり、特に高度がすば抜けて高い主峰のようなものはない。日本百名山の深田久弥氏も、「これほど茫漠としてつかみどころのない山もあるまい」と記している。
乱暴に大きく2つに分類すれば、西吾妻と東吾妻ということになる。西吾妻山のほうが標高2000mを越えており、代表格と考えるケースが多い。しかし、東吾妻側にある「家形山」の家が「あずまや」の意であり、それが吾妻山の名の由来とも書いている。

稜線に上がると、広い草原地となる。クロマメノキの赤が地面を敷き詰めた中を、木道が伸びている。
分岐を右に折れ、酸ヶ平避難小屋に着く。休憩によいきれいな小屋だが板張りではない。

噴煙を上げていた塊目指して高度を上げていく。一切経山のピークはどれだろうか。振り返ると、さっき通り過ぎた酸ヶ平あたりが草紅葉で真っ赤だ。そこをハイカーの長い列がやってくる。
今日山を歩いている人は、雨降りの中の歩きを覚悟していたはずだが、望外の青空ということになって皆うれしそうに見える。

指導標の立つ場所に上がる。草も生えない荒涼とした地となる。
はるか下、雲海を割って福島市街地が見えてきた。そして右手の斜面からだんだんと、吾妻小富士がせり上がってくる。噴煙がお鉢と重なるように見え、まるで小富士が噴火しているようだ。風もだんだんと強まり、帽子が飛ばされそうになる。
一切経山はもうひとつ先の台地のようだ。近そうでまだ距離はある。そうこうしているうちに、背後からガスが迫ってきた。

登山者10名ほどが憩っている一切経山頂上に到着。と同時にガスも到着し、周囲は真っ白になってしまった。
それでもガスが切れると、眼下に青い五色沼が見えた。浄土平の紅葉も色とりどりだったが、このコバルトブルーの水も鮮やかである。東吾妻は狭い範囲の中でも、見所がいろいろあって飽きさせない。

五色沼
お鉢が大きい
草原を行く
東吾妻山頂上
再び浄土平へ
鮮やかな色つき

今日はここで来た道を戻るが、ここから先の東大嶺から西吾妻山に至る縦走路も魅力的だ。回りの山から俯瞰する吾妻連峰は、その東西に長い稜線を横たわらせている姿が印象的である。
「茫漠としてつかみどころのない」山も、ひとたび山中に入れば様々な自然の魅力を見せてくれる。いずれはぜひ縦走してみたいものである。

次第にガスが濃くなり、薄暗くもなってきた。東北の10月の山ともなると、日が遮られればいっぺんに肌寒くなる。
酸ヶ平まで戻り、姥ヶ原経由までの広い草原を歩いていく。ガスで眺めは限られるが、このへんは木道が整備され、登山の格好でなくても普通に歩けるくらいで、軽装、というかザックを背負っていない人も多く見かける。

標高の高いところは、斜面が笹の緑で覆われているが、裏側はコメツガなどの黒木になっていて、大菩薩嶺に似ている。
鎌沼のほとりで休憩ののち、姥ヶ原から東吾妻山への道を行く。相変わらず木道の上を歩くが、ガスが濃くなり視界もどんどん狭まってくる。
そんな中で、東吾妻山の登り口への分岐点に着く。何組かのグループが山頂から下りてきた。登り始めると木道ではなくなり、針葉樹林の中、ぬかるみの多いえぐれた道となった。沢のように水が流れ落ちてくる。
下りてくる人が目の前で滑って転ぶ。今までの歩きから一転した難路であり、東北や会越の山でよく歩くような道だ。初めのうちはぬかるみや水の流れを避けながら登っていたが、そのうち足場をいちいち探すのが面倒になり、水溜りの中をバシャバシャと行く。

同じような登りがかなりの時間続く。標高を上げると、頭上でビュービューと風の音が強い。少しポツポツと降ってきたようだが、おそらくガスが雨となって落ちているのだろう。
樹林が少なくなり、ふいに開けた場所に躍り出た。風とガスの強いハイマツの稜線を少し登ると、東吾妻山頂上であった。

昨日の安達太良山に引き続き、何も見えない山頂である。標柱を確認して早々と頂上を辞すこととする。
反対側の景場平方面を下ることも考えていたが、時間も遅くなっているので、来た道を引き返すことにした。

ぬかるみ道を慎重に下って行くと、なんとなく周囲が明るくなってくるのを感じる。向かい側の一切経山方面の視界が利いてきた。登り口に下り立つと、雲の間に日差しも見え出す。

すっかり明るくなった草原の中を、浄土平まで下る。再び小富士が見えてきて、浄土平の紅葉もさらに輝きを増していた。
噴煙を見上げながら浄土平に下りる。車の数は朝から少し増えたようだが、それでも駐車場はまだ余裕がある。
明日はよい天気になりそうなので、今日とは比較にならないくらい大賑わいかもしれない。東北のすばらしい紅葉を満喫した、いい半日コースとなった。

浄土平を下り、麓の国道に出る。今日の宿泊地は沼尻温泉である。安達太良山の西側の登山口になっている。
田村屋旅館に泊まったが、昨日の不動湯とはうって変わって、鉄骨建ての大きな旅館だった。
沼尻温泉は「東北の草津」と言われるほど熱く、酸性度の強い源泉を持つ。この日は他に宿泊客も多く、それほど熱さは感じなかった(翌朝の露天は熱くては入れなかった)。口に含むと強いレモンの味がする。

明日は3連休のうちで一番いい天気になりそう。天気予報でそう言っていたが、北陸や会津地方は朝、時雨れるという。低気圧が三陸沖に抜けるころ、日本海側は北西の風が日本海の湿った空気を山地に運び、雨を降らせる。いわゆる冬型の気圧配置となる。
天気の崩れは朝早いうちだけだろう、と思ったが、その反面どこか不安な部分があった。