~鉱泉宿から雷鳴とどろく稜線へ~ 古寺鉱泉-小朝日岳-大朝日岳- 中ツル尾根-朝日鉱泉 |
今さらであるが、果たして自分は山登りを十分に楽しめているのか疑問に思うことがある。 出かける前はあれほど歩きたくてしょうがなかった尾根も、いざそこに足を踏み入れると急ぎ足になってしまったりする。後々まで印象に残っている山行も、帰って来て写真を見たりしてああ良かったなあと思うのであって、実際に行動している時はけっこうつらい思いをしていることが多い。 日常では味わえない体験が出来るのだから、ゆとりを持ってそれを楽しまなければ、と言われるが実際には余裕心を持ちながら山に留まっているのは難しい。山に身を完全に委ね、心の底から山を楽しめる人は、相当の山の達人なのでは、と思う。 それにしても、今回の大朝日岳山行はつらかった。一刻も早く山を下りたかったし、とにかくその地から離れたかった。
10日(土)、ちょっと小さめの山形新幹線「つばさ」で山形へ、その後左沢(あてらざわ)線に乗り換え終点の左沢駅に着く。 駅を出ると道路の向こうに大沼タクシーの営業所があり、その前の発着所に古寺(こでら)鉱泉行きの会員制タクシーが待っている。会員制と言っても、誰でも乗れる。 しかし運行時期はここ夏のひと月のみで、今日が今年最後の運行である。 乗客は自分と、釣り客の1人のみ。運転手さんは道中、回りの名所や史跡などの説明を詳しくしてくれる。 天気はまずまずだが北東北にかかっている前線の影響が心配だ。タクシーからは小朝日岳のピラミダルな山容が眺められたが、その背後の稜線は雲で隠されているようだ。 1時間ほど古寺口、そこから砂利道を走って古寺鉱泉前の駐車場に着く。以前はタクシーは古寺口までしか入らなかったようであるが、現在は駐車場まで来てくれる。そのため今日の行動は、古寺鉱泉までの歩行5分のみであった。
古寺鉱泉は昔懐かしい雰囲気の一軒宿。屋根はたわみ、窓枠はかたむいている。もちろん中は清潔で静かである。部屋どころか食堂にもテレビはなく、ラジオのみである。 食事は山菜と岩魚、茸の味噌汁がどれも大変おいしい。山菜はウド、ネマガリダケ、キクラゲの辛子和え、夏しか採れない○○マイタケなど8品がずらっと並ぶ。山菜ってこんなにおいしいものだったのか。 宿から少し歩いたところにイケスがあり、岩魚はそこで育てているものだろう。 隣りには、今日まで3泊で朝日連峰を縦走して来たグループがいた。いい天気と素晴らしい稜線で大満足とのこと。竜門あたりまで行けば、マツムシソウなど花が一面に咲いているらしい。 今回は縦走や花などにはこだわらず、大朝日岳を登って下りるだけのゆったり計画のつもりだった。しかし、そういう話を聞くと気移りしてしまう。 明後日は朝日鉱泉に下る予定であるけれども竜門のほうに下ろうかとも考えた。天気への不安はいつのまにか消えてしまっていた。 |